Fリテイリ:秋冬新作を発表、値上げで遠のいた客足回復狙う

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  • ボンバージャケットなど、新トレンド商品を渋谷で披露
  • ネット販売用商品に期待、4月完成の物流センター活用-アナリスト

ファーストリテイリングは25日、秋冬に投入するユニクロの新作を発表した。値ごろ感を追求し、値上げで遠のいた客足の回復を狙う。株価は発表日に一時4.2%高と約1カ月ぶりの上昇率となった。

  東京・渋谷で開かれたユニクロの秋冬新作発表会では、ワーク、スポーツ、ホームと生活場面ごとに分けて商品がお披露目された。世界のデザイナーとのコラボレーションも展示され、日本初上陸となるハナ・タジマ氏デザインの東南アジア風のコンフォートウェアなどが陳列された。定番アイテムには、トレンドを取り入れたボンバージャケットなどが加わった。

Tadashi Yanai in Tokyo on May 25.

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  同社は今期(2016年8月期)、円安による原料高を商品の値上げで補おうと試みたが、客離れが進み、値上げを断念せざるを得なかった。同純利益予想はこれまでに2度下方修正し、当初計画の1150億円から半減の600億円まで目標を下げている。暖冬も影響し、今期の既存店の客数は1月を除き前年割れが続いている。秋冬商品ラインアップには来期の業績回復が懸かる。

  柳井正会長兼社長はこの日の発表会で、「低価格ということじゃない。われわれは付加価値がある商品をできるだけ低いプライスで売る」と述べ、「ファッションじゃなくてお客さんにとっての付加価値」が重要と強調した。 先月の記者会見では価格リーダーシップを取り戻すと宣言し、「いつでも、どこでも、誰もがお買い得価格で手に入るユニクロを実現したい」と述べていた。

お買い得価格

  Fリテイリの価格戦略見直しの背景には、政府・日本銀行の政策で物価上昇が思うに任せない状況もある。現在の安倍晋三政権が発足してから、生鮮食品を除く消費者物価の上昇率(コアCPI)は14年に一時3.4%上昇したが、主に消費税率引き上げによるもの。日銀のマイナス金利政策にもかかわらず、コアCPIは再びマイナスに落ち込んでいる。

Models at Uniqlo’s 2016 Fall-Winter lineup in Tokyo.

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  野村証券の正田雅史アナリストは、ユニクロの値上げ断念について「価値があれば高い値段で売れる、そうでなければ売れない。商品の価値が出せているかが一番重要」と指摘する。値上げのためには「商品の再設計が必要」だと発表前の取材で述べた。

  正田氏は、秋冬の新作ではネット販売に適した商品に注目しているという。ビジネス向けシャツやジャケットなどはサイズを豊富に取りそろえることが必要で、店頭スペースに全ては並べきれない。そうした製品は4月に完成した物流センターを活用してネット販売することになるという。

  Fリテイリは、開店から1年以上の国内既存店の売上高が昨年9月から累計8カ月で前年同期比1.4%の減少となった。

  JPモルガン証券の村田大郎アナリストは、ユニクロの商品戦略について「14年ごろまではベーシックなものが売れたが、今はワイドパンツとかトレンド商品が売れるようになった」と話す。中心となっているベーシック商品の機能を改良しながら、トレンドをより取り入れるべきだという。

  Fリテイリでは4月に東京・有明の物流センターが完成。店舗での商品補充やネット販売の配送がより機動的に行えるようになるとしている。秋には「デジタルフラッグシップストア」を開店する予定で、そこにデジタル開発本部を移転する。4月の会社資料によると、電子商取引事業の売上高構成比を5%から将来は30%に引き上げる計画だ。

  柳井社長は発表会で、セミオーダーやネット販売を強化すると語った上、「今から成長します。今までの成長は成長じゃない」と述べ、「新しい産業を作り始めたばかりです 」との考えを示した。

  Fリテイリ株は25日の取引で一時、前日比4.2%高まで買われた。4月22日以来の日中上昇率となった後、同3.9%高の2万8740円で取引を終えた。