「債務王」トランプ氏と「橋建設」のクリントン氏、どちらでも赤字は拡大

  • トランプ氏は紙幣印刷、クリントン氏はインフラ強化を示唆
  • 財政政策のシフトでFOMCは景気への自信深め、利上げ確率上昇へ

11月の米大統領選挙で誰が勝とうと、今後数年間の財政赤字は拡大する見通しだ。

  「債務の王様」を自称するドナルド・トランプ氏、「明日の経済を築く」と約束するヒラリー・クリントン氏。どちらが大統領になっても次の政権は清廉潔癖な財政運営より、ばらまき政策に力を入れる可能性が高そうだ。

  「せき止めていた扉が一気に開けられるわけではないが、恐らく財政政策はやや緩くなるだろう」とコーナーストーン・マクロ(ワシントン)のパートナー、アンディ・ラペリエール氏は話す。

  ゴールドマン・サックス・グループの米政治エコノミスト、アレック・フィリップス氏(ワシントン在勤)の分析によれば、こうしたシフトが財政赤字に与え得る影響は国内総生産(GDP)の1%弱に相当し、影響は2017年から18年にかけて分散される。米政府によると2015年度(9月30日終了)の財政赤字は4384億ドル(約47兆9000億円)で、対GDP比で2.5%だった。

  フィリップス氏によれば、こうした赤字拡大は2017年と18年の年間経済成長率を0.2ー0.3ポイント前後押し上げる可能性がある。09年6月にリセッション(景気後退)を抜け出して以降の平均成長率が2.1%であることを考えれば、効果としては小さくない。

  成長率が押し上げられれば、連邦公開市場委員会(FOMC)は景気拡大の持続的勢いへの自信を深め、利上げの確率が高まるとライトソンICAPのチーフエコノミスト、ルー・クランドール氏(ニュージャージー州ジャージーシティー在勤)は分析する。

  米財政赤字は4年連続で縮小し、年間での赤字額は2007年以来の最小となっている。また最近では、投資家や学者、さらには中央銀行の当局者からも、財政規律を緩めるよう政府に求める声が聞かれるようになった。

  米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は3月29日の講演で、現在の低金利の状況では投資志向の財政政策という「ケースはあるだろう」と述べた。

  共和党からの指名を確実にしたトランプ氏はかつて、18兆ドルの米債務を8年間でゼロにしてみせると公約し、経済を深刻なリセッションに転落させるとしてエコノミストらから批判された。同氏は今では軌道修正し、赤字を埋めるためには紙幣を印刷すればよいだけのことだと述べている。

  財政アナリストらによれば、トランプ氏の提案は財政赤字の拡大と景気刺激のための財政投入の強化を意味する。それに加えて、大規模な減税を同氏は約束している。米税制に関するシンクタンク、タックス・ファウンデーションは同氏の減税案について、10年間で10兆ドルを超える税収減を伴って成長を著しく押し上げるものだと分析している。

  トランプ氏はさらに、国防やインフラへの支出増額も支持し、社会保障への歳出はカットしないと宣言している。

  一方のクリントン氏も政府支出の拡大を伴う一連の政策案を打ち出している。これには5年間で2750億ドルを費やすインフラプログラムや、10年間で3500億ドルのコストでまかなう大学進学支援が含まれる。

  クリントン氏がトランプ氏と異なるのは、こうした歳出拡大計画の財源を説明している点だ。その大半は富裕層を対象とした増税だが、ライトソンICAPのクランドール氏は議会の承認を取り付けるのは難しいだろうとみる。

  ゴールドマンのフィリップス氏によれば、選挙後に成立し得る合意の一つとして、インフラ事業への歳出拡大が挙げられる。トランプ、クリントン両氏ともこれには賛同しており、企業や労組関連のロビイストらも支持している。

  「財政規律に心血を注ぐことは、もはや輝きを失った」と語るのは非営利組織、バイパーティザン・ポリシー・センター(ワシントン)のシニア・バイス・プレジデント、ウィリアム・ホーグランド氏だ。議会の予算スタッフに加わった経験のある同氏は、「政策を緩める雰囲気と環境が今では整っている」と同氏は述べた。

原題:Debt King Trump, Bridge Builder Clinton Equal Bigger Deficits(抜粋)

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