銀行融資の金利マイナス化に備え、下限設定のオプション取引に需要

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  • TIBORは6bpで推移、追加緩和次第でゼロ%割れの可能性
  • 金利リスクヘッジの需要が高まりオプション料が高騰

日本銀行の金融緩和強化で民間銀行の貸出金利のマイナス化懸念が高まる中、融資の不採算化を防ぐ金利オプションの需要が高まっている。三井住友トラスト・ホールディングスあおぞら銀行などは他行や企業に対し、そうしたヘッジ商品の提供を模索している。

  ブルームバーグのデータによると融資の基準金利となるTIBOR(東京銀行間取引金利)3カ月物は、日本銀行が1月にマイナス金利政策を決定以降、急落した。現在は過去最低の6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)。日銀が今後追加緩和に踏み切るとゼロを割り込み、信用力を反映した上乗せ金利を加味しても一部の貸出金利がマイナス化する可能性があるとSMBC日興証券はみている。

  融資業務の収益性低下から邦銀3メガグループの今期(2017年3月期)連結純利益は合計で前期実績比5.2%減の2兆1500億円となる見通し。収益悪化リスクを軽減する手段としては、基準金利に下限(フロア)を設定し、それを下回った部分の金利を受け取れるオプション取引がある。TIBORがゼロに近づいているため、下限はマイナス金利で設定されることが多い。

  三井住友信託銀行マーケット金融ビジネスユニットの小松建夫次長は、金利リスクを抑える「フロアオプション取引にはニーズがある。いち早くマーケットメイクをするとチャンスになる可能性がある」と指摘。現在、こうしたオプション取引の提供について、「検討の余地があると思っている」と話した。

  あおぞら銀行市場営業部長の高橋伸之氏は、「マイナスやゼロのフロアオプションも市場で観測されるようになってきた」と話し、今後の取引について「市場動向や各行の対応状況を注視している」と語った。

オプション料高騰

  貸出金利のマイナス化はローンを提供する銀行にとって切実な問題であり、そのヘッジは重要な課題だ。東京スター銀行総合資金部の松家徹治ALM企画次長は、「今後TIBORなどの指標金利が大幅なマイナスに突入するような事態が生じた場合、貸出金利そのものがマイナスとなる融資が発生する可能性がある」と述べ、金利下落時の「ヘッジ手段の一つとして、フロアオプションのニーズが拡大すると思っている」と語った。

  金利オプションは銀行以外に、企業の間でもニーズが見込める。変動金利で借り入れする企業は、将来の金利上昇リスクをヘッジするため金利スワップを使って他社に固定金利を払い、変動金利を受け取る取引をする。ところが、マイナス金利下では、受け取る変動金利が支払いに転じコスト負担が生じてしまう。こうした事態に対し、あおぞら銀の高橋氏は金利のゼロフロアオプションを活用して、リスクは防げると話す。

  あおぞら銀によると、既に一部マイナス金利となっているLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)では、最大マイナス幅1%のフロアオプションの取引もあるといい、追加緩和観測など金利先安観はなお根強い。

  金利リスクを抑えたい銀行のニーズが高い結果、オプション料が高騰。三井住友信託銀の小松氏は、買い手に偏っている金利オプション市場について、取引が活性化しないと価格がうまく形成されないと話し、「マーケットの機能がマイナスに対応するには時間がかかる」との見方を示した。

固定金利貸し出しも

  金利のマイナス化に備えた銀行の防衛手段としては、オプション取引のほかに、マイナス化リスクを伴う変動金利貸出を避け、固定金利に切り替える動きも出ている。

  貸出原資となる預金などの調達コストはどんなに下がってもマイナスにはなりにくい。そこで貸出金利を決める際、調達コストに一定の利ざやを乗せて最初から固定すれば収益を圧迫しないという訳だ。あおぞら銀の野口将人シンジケーション部長は、「従来、変動金利運用はリスクがないと言われていたが、リスクが具現化している」とし、協調融資で固定金利の割合が増えていると語った。

  日銀によると預入期間3カ月の定期預金金利は、日銀のマイナス金利導入直前から直近までの間に2.5bpから1.6bpへの低下にとどまっているのに対し、融資の基準金利である円LIBOR3カ月物は同じ期間に10.5bp下がり、23日時点でマイナス2.5bp。