日本政府保証債、ゴールドマン主幹事で大幅マイナス金利発行できた訳

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  • 「マイナス金利時代の象徴的な案件」-みずほ証券
  • ベーシススワップを利用したコストパーフォマンス

預金保険機構が今月行った政府保証債の起債が市場で話題を集めている。同機構としては初のマイナス金利での発行となる上、国内の証券会社を押しのけて外資系のゴールドマン・サックス証券が主幹事に躍り出たからだ。

  預保機構は2年物1200億円と4年物1000億円の起債で、引き受け会社を低い入札利回りから優先に選ぶ入札方式で決めた。同機構にとって今年度初となる同政府保証債は、ゴールドマンが2回とも最も多く落札し、主幹事を務めることになった。

  政府保証債は信用力が高い半面、流動性が低いため、これまで外資系証券は引き受けに慎重だった。今回の起債条件となる発行表面利率はいずれも年0.1%だったが、応募者利回りは2年物(第205回債)がマイナス0.124%、4年物(第204回債)がマイナス0.084%とゼロ%を下回り、投資家の購入意欲の強さが示唆された。

  みずほ証券の香月康伸シニアプライマリーアナリストは、「政府保証債としてこれだけ深いマイナス幅での発行は初めてで、マイナス金利時代の象徴的な案件」と指摘。バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、「ゴールドマンが主幹事でもあり、恐らくだが海外投資家向けの需要が一番大きいのかなとは思う」と言い、通貨スワップ取引を使えば「マイナス利回りの発行でも、海外投資家は十分投資妙味が取れる」と説明した。

  日本国債は残存年数13年までの利回りがマイナスに沈んでおり、全体の発行残高の大部分が今購入して償還まで保有すると損失を被ることになる。国内の機関投資家にとっては、20年物や30年物といった利回りがかろうじてプラス圏で推移している超長期国債の購入や金融調節を通じて日本銀行に国債を転売する日銀トレードなどを除くと、安全に利回りを確保ができる国債運用先はほとんどない状態が続いている。

ベーシススワップ

  これに対し、ドルを元手に運用を試みる海外投資家は、日米の変動金利差(スワップスプレッド)を基に取引される通貨スワップなどを通じて円資金をドル資金との一定期間の交換を条件に割安で調達できるため、購入する日本国債がマイナス利回りでも、ドル換算した最終的な運用利回りでプラスが見込める。

  通貨スワップ市場におけるドル・円のスワップスプレッドは2年物で、昨年11月にマイナス83 ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、4年ぶりの低い水準で円をドルよりも割安に調達できる局面があった。今月20日の同スワップ取引でも水準はマイナス68bpと、預保機構が26日に発行する2年物205回債の応募者利回りマイナス0.124%を大きく下回っており、海外投資家にとっては良いコストパーフォーマンスが見込める投資案件だ。

  日銀の統計では、海外投資家の国債と国庫短期証券の保有が昨年末時点で前年同期比18%増の110兆円と過去最高を記録。占有率は初めて10%を上回った。一方、財務省の発表資料によると、3月末時点の国債と国庫短期証券の発行残高は995兆円で、政府保証債の残高42兆円は規模が小さく、流動性リスクは相対的に高い。

「まだまし」な投資

  海外投資家の需要を一因としたマイナス金利発行は、国債以外の債券へ広がっていくのか。バークレイズ証の押久保氏は、政府保証債など信用格付けの面から「国債を起点として近いところからどんどん捕まっていくというのはある」と指摘。マネックス証券の大槻奈那チーフアナリストは、国債のマイナス幅が深まる中で、今回の預保機構債のマイナス幅は「まだまし」と言い、損失を最小限に抑えたい「日本人投資家にとってもあり得る投資」だとしている。

  一方、みずほ証の香月氏は、政府保証債の引き受けは入札方式だが、「債券市場では最終投資家の需要を積み上げて利回りを決めるやり方が主流だ。市場の安定性への理解がある発行体も多く、マイナスでの発行は考えにくいし、海外勢の引き受けシェアが極端に上がることもないだろう」と言う。押久保氏も、政府保証債などは日銀買い入れ対象として高い流動性を持つ国債と比べて「売り抜けができるところは限定的」とし、国債ほどマイナス幅が深まることはないとみている。

  ゴールドマン広報担当の松本弘子氏は、預保機構債引き受けの詳細についてのコメントを控えた。