為替で日米の溝埋まらず、いずれ円高材料との懸念も-エコノミスト

  • G7は期待外れ、日米に歩み寄りの示唆見えず-東海東京・武藤氏
  • 自民勉強会が消費増税実施の先導役か-みずほ証・上野氏

仙台で開かれた主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で為替をめぐる日米の相違が浮き彫りになった。直ちに円高への圧力にならないとしても、米国の利上げ動向など今後の状況によっては、いずれ円高材料になる可能性があるとエコノミストはみている。

  麻生太郎財務相は21日、G7終了後の議長会見で、ルー米財務長官との会談について、「一方的に偏った急激な、投機的な動きがみられたが、為替市場における急激な変動は望ましくない、為替の安定が重要であるという点は申し上げた」と言明。「この数週間を見れば2日間で5円とか、10日間で8円とか9円とか振れるということは、明らかに秩序立った動きとは言えない」と述べた。

  これに対し、ルー長官はG7終了後の会見で、為替相場が無秩序な動きと判断することの「ハードルが高い」と指摘。米財務省高官も前日、匿名を条件に記者団に対し、足元の円相場の動きは秩序立っているとの認識を示した上で、無秩序の例として、歴史的な円高を記録してG7が協調介入に踏み切った2011年3月の東日本大震災後の為替変動を挙げた。

他国は無秩序とは思っていない

  野村証券の桑原真樹エコノミストは、年明け以降の為替の動きが無秩序なのかどうかというかの認識については、「やはり日米間またG7諸国の間でも合意ができてないのだろう。日本は無秩序と思っているが、米国や他のG7諸国はそう思ってないようだ」と語る。

  東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは「ルー長官の発言を見る限り、日本と米国の為替に対する見解の相違は変わっていない」と指摘。日米の認識は「平行線のままで、距離は縮まっていない。今後歩み寄るという示唆はみてとれない」として、G7は予想通り期待外れの内容だったと語った。

  日米の立場の違いが鮮明になったG7だが、麻生財務相は会見で、日米とも選挙や環太平洋連携協定(TPP)といった政治課題があることに触れ、「お互いいろいろなことを言うのは当然で、言うのが仕事だ」と指摘。「感情的な話からもつれることのないようにしておく配慮は常にしておかねばならない」と述べた。

当座はさほど円高材料にならない

  一時1ドル=105円まで円高が進んだドル円相場は、足元で同110円台まで円安方向に戻っている。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「G7では日米の為替をめぐる認識の溝が深いことがあらためて確認されたが、足元では6月の米利上げ観測を背景にドルが下支えされているため、当座はさほど円高材料にはならないだろう」とみる。

  今回のG7の議長国会見でも脇役に徹した黒田東彦総裁。6月15、16両日に金融政策決定会合を開くが、上野氏は「米利上げ観測が強まっていることを背景に円高が止まっているので、6月は現状維持ではないか」とみる。

  その上野氏も「少し長い目で見ると、米経済の減速が一段と明確になることから、利上げは6月が最後となり、むしろ近い将来、利下げ観測が広がってくるとみている」と話す。「局面がそのように変化すれば、今回浮き彫りになった日米間の認識の相違があらためて円高材料になる可能性が高い。具体的には7月以降、円高の大きな流れが再開する可能性が高い」という。

  東海東京調査センターの武藤氏も「1ドル=105円を超えての円高は、政府、財務省だけでなく日銀も黙っていないだろう」と指摘。「企業収益の16年度の見通しは結構慎重で、想定為替レートを105円でみているところが多い」とした上で、「105円を超えてくると、かなり追加緩和の可能性は高い」と予想する。

消費増税は予定通り実施か

  一方、日本が財政出動で国際協調態勢を構築しようとした狙いは玉虫色の決着となった。麻生財務相は20日夜、G7初日の討議を終えた後、記者団に対し、「財政出動できる国できない国で事情がいろいろある」と述べ、各国の立場を尊重する姿勢を示した。その上で21日の会見では、ルー米財務長官に2017年4月の消費増税は予定通り実施すると伝えたことを明らかにした。

  上野氏は「安倍政権は当初、個人消費のリーマンショック並みの悪さを理由にして消費増税を先送りしようとしていたが、1-3月期GDPの個人消費が底堅かったことや、ドイツが財政出動に消極的なことから国際的な協調態勢作りのもくろみも完全に崩れた。そのことがG7でも裏打ちされた」という。

  国内では、これまで消費増税の延期を主張してきた自民党有志議員による『アベノミクスを成功させる会』(山本幸三会長)が予定通りの実施へと主張を転換、増税分全額を給付金などの形で還付するとともに、16年度補正予算で10兆円の景気対策と5~10兆円の熊本地震対策基金を創設することを提唱した。

  上野氏は「アベノミクスを成功させる会の提言は、消費増税の予定通りの実施という流れの先導役を担っているのだろう。安倍政権は早ければサミット後、遅くても参院選後に消費増税の予定通りの実施と、所得減税を含む景気対策を打ち出すのではないか」とみている。