財政出動に前のめりの安倍政権、サミット前に響く不協和音

  • 金融政策への依存には限界、G7議論は消費増税の判断にも影響か
  • 財政による需要創出支持の声が多いと安倍首相

7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)や主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を前に、財政政策をめぐって不協和音が聞こえている。安倍晋三首相は世界経済の下支えに財政の役割を強調するが、ドイツは距離を置く。サミットの政策協調の焦点の一つになりそうだ。

  安倍首相はゴールデンウィーク中、イタリア、フランス、ドイツ、英国などを訪問し、サミットへの地ならしをした。16日の衆院予算委員会では、世界経済の現状認識は各国とも「だいたい一致している」と述べたのものの、処方箋については「さまざまな議論がある」として、特に財政政策はドイツのメルケル首相や英国のキャメロン首相との間で議論があったことを認めた。

  4日のメルケル首相との共同会見で安倍首相は、通常の景気循環を待っているだけでは不十分であり、世界経済はより早急な構造変革と緩和的な財政政策が必要だと主張したが、メルケル首相はドイツの貢献は「堅実な財政政策、持続的な成長、投資拡大だ」と述べた。

安倍晋三首相

Photographer: Facundo Arrizabalaga/Pool via Bloomberg *** Local Caption *** Shinzo Abe

  18日発表の1-3月の実質国内総生産(GDP)成長率は前期比年率1.7%増と2期ぶりのプラス成長となったが、うるう年要因が消費を押し上げた面もあり、景気回復は力強さを欠く。3年以上にわたる日本銀行の異次元緩和でも物価目標の実現が遠い中、安倍首相は来春の消費増税を予定通り実施するかどうか決断を迫られている。財政出動の重要性がサミットで一致できれば、7月の参院選を控えて政策の選択肢は広がる。

  みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストはGDP発表後のリポートで、過去4四半期をならせばゼロ成長という事実は変わらないと指摘。消費増税については、4月中旬の熊本地震発生を踏まえれば、「もとより想定されていた『大震災のような事態』を理由にした増税延期は理屈が立つ」とした上で、伊勢志摩サミットで財政協調を図ろうとするホスト国の立場からすれば「増税延期は格好のPR材料になり得る」とみる。

ドライバーズシート

  ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦チーフエコノミストは10日付のリポートで、「政府は短期的な経済刺激策への傾斜を強めている」と指摘し、「政治的にも、将来の憲法改正に向けて、7月の参院選挙で3分の2の議席を取り戻したい安倍政権としては、選挙時までに経済政策を打ち、支持率確保につなげていきたいところだ」という。

  さらに「金融政策はこれまでアベノミクスの屋台骨を支えてきたが、手段・効果両面から息切れ感が強くなってきているため、当面はバックシートに座り、ドライバーズシートには財政政策が座りそうだ」とみている。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは13日付のリポートで、安倍政権はもはや景気刺激を日銀に頼っておらず、「念頭にあるのは明らかに追加財政」と指摘。その上で、「消費増税は再度、先送りが決定される可能性が高い」と述べ、場合によっては先送りだけで済まず、「消費低迷の原因を取り除くという理由から、14年4月の消費増税の時限的な停止措置が取られる可能性がある」とみている。

  安倍首相は16日の衆院予算委員会で、「需要をつくるための財政政策も必要ではいかと、私は考えている」と明言し、「各国にはそれぞれの事情があるわけだが、そうしたクリアなメッセージを出していくことが今の経済状況では求められているのではないか」と発言。18日の岡田克也民進党代表との党首討論では、財政政策の役割についてはカナダ、米国、イタリア、フランス、欧州連合(EU)と認識を共有していると述べている。