「影のFF金利」300ベーシス上昇、思った以上の引き締め (訂正)

訂正済み
  • 影の金利上昇と同じタイミングでドルが上昇、米経済成長を抑制
  • 「引き締めサイクルは利上げより2年前に始まっていた」

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が率いる連邦公開市場委員会(FOMC)は、フェデラルファンド(FF)金利が示唆するよりもはるかに大幅な金融引き締めを実施した。ただ、それは影の世界で起きたことだ。

  いわゆる「影のFF金利」は2014年半ばから15年末にかけて、約300ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇。FOMCはその間、量的緩和のテーパリング(段階的縮小)に入った後、資産購入プログラムを停止して地ならしを進め、15年12月の初回利上げに至った。影の金利上昇はドル買いをあおり、米国の輸出および経済成長を抑制したと、カリフォルニア大学サンディエゴ校のジェイムズ・ハミルトン経済学教授は分析している。

  「12月の利上げで引き締めサイクルが始まったのではない」と指摘するのは、ユーロ・パシフィック・キャピタル(コネティカット州ウェストポート)のピーター・シフ社長。「影の金利をみれば、引き締めサイクルがそれより2年前に始まっていたことが分かる」と述べた。

  影の金利は、実際のFF金利をゼロ付近に引き下げた後に米金融当局が用いる量的緩和やフォーワードガイダンスなどの非伝統的政策手段について、それが経済に与える影響を測る手段の一つ。

  短期債利回りを中心とする市場金利とFF金利との関係に基づいて計算される影の金利は、2009年から14年半ばの間にマイナス圏入りし、さらにマイナス幅を広げていった。その間FOMCの政策の影響で財務省短期証券(Tビル)など短期債の金利はゼロに接近していった。

  そしてFOMCが量的緩和プログラムを停止すると、利上げ期待からこうした短期金利が上昇に転じ、影の金利も水準を切り上げた。

  シカゴ大学ブース経営大学院のジン・シンシア・ウー准教授は影の金利を「イールドカーブ全体から抽出されたものだ」と言う。「ゼロ金利制約がないと仮定した世界に存在する、仮想の短期金利だ」と電子メールで解説した。

US dollar

Photographer: Christine Balderas/Getty Images

  FOMCがこれをどの程度意識しているかは不明だが、ウー氏らが計算する影の金利はアトランタ連銀のウェブサイトに掲載されている。またセントルイス連銀のブラード総裁は2012年のスピーチで、ニュージーランド準備銀行(中央銀行)の調査エコノミスト、レオ・クリップナー氏が算出する別の仮想金利に言及している。

  影の金利がより引き締め方向の金融政策を示唆すると考えられる一方で、イエレン議長らは過去最大の4兆5000億ドル(約494兆円)に膨れ上がったFRBのバランスシートの規模を理由に、資産購入によるバランスシート膨張は止まったものの、なお経済への支援は続くと考えている。それに10年債利回りなど長期金利は、影の金利が上昇し始めた2年前に比べて低くなっている。

  しかしはっきりしているのは、影の金利が上昇し始めた2014年半ば、ドルもちょうど水準を切り上げ始めたことだ。JPモルガン・チェースの米国チーフエコノミスト、マイケル・フェローリ氏によれば、このドルの上昇は経済に目に見える影響を与え、2015年の成長率を1ポイント押し下げた。2015年の米国内総生産(GDP)は第4四半期対比で2%拡大。2014年の2.5%成長から減速した。

  「これまでのところ、FOMCが実施した利上げはまだ一度だけで、しかも25bpの幅だが、従来の巨大なバランスシート膨張およびフォーワードガイダンス政策から離れたこと自体、最大300bpに相当する非伝統的な金融引き締めだったと考えられる」と、フェローリ氏は6日付の顧客リポートで指摘した。

原題:Shadow Rate Shows Fed Has Tightened Policy More Than You Think(抜粋)