トランプ氏守勢に立たされるか、セクハラ・なりすまし疑惑で報道攻勢

ドナルド・トランプ氏を攻撃する報道がこれまでにない勢いで増えている。1990年代初めにスポークスマンになりすましてメディアに対応していた疑惑、多数の女性に対する不適切な言動についての報道、そして納税申告書をなぜ公表しないのかといった問題などで、トランプ氏は守勢に立たされている。

  ヒラリー・クリントン氏を支持する政治資金団体スーパーPACのプライオリティーズUSAは18日から、トランプ氏を非難する内容のテレビ広告を始める。11月までに1億3600万ドル(約150億円)を反トランプの広告キャンペーンに投じる計画だ。

  「こうした報道はどれも意味がある。トランプ氏の支持者に心変わりを促しはしないまでも、これ以上の支持者増加を抑える効果はあるかもしれない」とカリフォルニア州在住の共和党コンサルタント、ロブ・シュトゥッツマン氏は語る。反トランプ運動に参加していた同氏は「報道全体から浮かび上がってくるのは、同氏が嘘つきであり、クリントン陣営が主張するように米国大統領にはふさわしくないペテン師の姿だ」と述べた。

  共和党からの出馬を目指す唯一の候補者となったトランプ氏は現在、選挙運動でメディアを賑わせるのではなく、共和党議員らの支持取り付けという水面下の作業に集中している。同氏の広報担当、ホープ・ヒックス氏に電子メールでコメントを求めたが返信はない。トランプ氏の側近らは党大会を成功に導くことと、副大統領候補の人選、資金集め、そして政権交代プロセスをどのように詰めるかが大事だとして、今回の報道攻勢を無視している。

            悪い情報が多すぎて覚えきれない

  トランプ氏が天才的に優れているのは、次から次へと問題を浮上させて、古い問題を葬り去ることだとの指摘もある。バージニア大学センター・フォー・ポリティクスの政治アナリスト、カイル・コンディク氏は「普通の人ではいちいち覚えていられないほど多くの問題がトランプ氏にはある」と語る。「だから今になってこうした情報が重要だとは思わない。大事なのはこれを武器にクリントン陣営がこの夏と秋、どのようにキャンペーンを展開するかだ」と述べた。

  コンディク氏は一方で、トランプ氏をめぐる悪い情報が今後も引き続き浮上するようなら、同氏は世論調査でクリントン氏に追いつけないかもしれないと予想する。すでに1年近くメディアを騒がせているトランプ氏。ここ最近の調査は同氏に前向きな結果が出たものの、そもそも支持率で遅れをとって始まった選挙運動だったことは明白だとコンディク氏は指摘した。

  米紙ニューヨーク・タイムズは14日付の紙面に、トランプ氏の同僚や知り合いなど十数人にインタビューした特集記事を掲載。「一方的な親密行為や、女性としての外見に関するしつこいコメント、野心的な女性を巧みに利用する戦略、動揺を招く職場での行動」の数々を集めた。

  この報道を受けてトランプ氏は16日、ツイッターで反撃に出た。「ニューヨークタイムズは本当に嘘つきだ。記事で中心的に取り上げられていたロワンヌ・ブリューワー自身が事実ではないと言っている」と投稿。ブリューワー氏はFOXニュースとのインタビューでニューヨーク・タイムズを批判していた。

  13日にはワシントン・ポスト紙が別の疑惑を取り上げた。トランプ氏が1970年、80年、90年代において自身の広報担当になりすまして、電話インタビューに応じていたというものだ。トランプ氏はこれを断固否定しているが、16日に同氏の長年の友人であるロジャー・ストーン氏は、トランプ氏が第3者になりすまして自分についてメディアに話すつもりだったと認めている。

  このほかにもトランプ氏はニューヨーク州ウェストチェスター郡の町を相手取り、自身が保有するゴルフクラブへの課税をめぐって訴訟を起こしている。裁判所への提出文書では同クラブの資産価値は140万ドルとされているが、英紙ガーディアンによれば大統領選挙運動が始まった当時の財務開示では5000万ドルと記されていた。

  クリントン氏を支持する政治資金団体スーパーPACの広報担当、ジャスティン・バラスキー氏は、なりすまし疑惑は「確かに気味が悪い」が、それよりも納税申告書の公表に応じないことの方を問題にしたいという。納税申告書の開示は過去40年において大統領候補の慣例となっているが、トランプ氏は12日、ABCテレビとのインタビューで自分の納税申告書は「他人の知ったことではない」と一蹴した。

  納税申告書の公開拒否は攻撃しがいのある標的だと民主党はみている。過去に公表すると約束していただけに、応じないのは透明性に問題があることを浮き彫りにし、誠実さへの疑問を高める。成功した実業家としてのイメージを取り崩すことができるかもしれないと狙っている。

原題:Trump’s Bad Stretch Might Get Worse as the Clinton Machine Revs Up(抜粋)

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