知ってますか「IOERアーブ」、コール市場が日銀推奨取引で活性化

  • コール市場取引残高が6兆9241億円と最低の3月末から倍増
  • マイナス金利後の世界としては大きな潮目の変化-東短リサーチ

日本銀行のマイナス金利政策導入で落ち込んでいたコール市場の取引残高に底打ち感が出てきている。コール市場金利のマイナス幅の拡大で、「IOER(Interest On Excess Reserves)アービトラージ」と呼ばれる裁定取引に妙味が出てきたためだ。

  金融機関同士が短期資金を融通し合うコール市場では、13日の取引残高が6兆9241億円と、日銀当座預金の一部へのマイナス金利適用が始まった2月16日以降で最高を記録した。3月31日には短資協会のデータでさかのぼれる1988年以降の最低となる2兆9724億円を付けたが、4月後半からは無担保コール翌日物金利の低下を受けて増加基調に転じている。

  セントラル短資の佐藤健司係長は「準備預金の積み期前半と後半で取引残高に振れはあるが、無担保コールだけで5兆円台を回復するなど、2カ月前の状況と比べてかなり良くなった。参加者が徐々に戻ってきた」と話した。

  IOERアービトラージは、金融機関が中央銀行の当座預金に預けた超過準備の利息(付利)と市場金利の差に着目した裁定取引。マイナス金利導入前は、日銀当座預金の超過準備にプラス0.1%の付利が設定されていたため、その水準よりも低い金利でコール市場から資金を調達し、当座預金に預けることで利ざやを稼ぐ裁定取引が大半の金融機関で可能だった。

  日銀が1月末にマイナス金利導入を決めた際、日銀当座預金の超過準備にプラス0.1%、ゼロ%、マイナス0.1%と、適用される金利が異なる3層構造を設けた。黒田東彦総裁は3月7日の講演で、「マイナス金利が適用される金融機関から枠が余っている金融機関にマイナス0.1%より小さめのマイナス金利で資金を放出すれば双方に利益がある。こうした裁定取引が行われる動機がある」として、短期金融市場に取引を残す工夫だと指摘した。

  マイナス0.01%付近で下げ渋っていた無担保コール翌日物金利は、4月中旬以降に水準を切り下げ、加重平均金利が一時マイナス0.081%を付けた。マイナス金利を課せられた信託銀行がこれまで無利息で資金を預かっていた投資信託に対して手数料を徴収し始めたことで、これを回避しようとする投資信託の資金がコール市場に流入したためだ。

  みずほ証券の末広徹シニアマーケットエコノミストは、「変化が生じるきっかけを作ったのはマイナス金利政策で負担が大きくなっていた信託銀行だ」と指摘。東短リサーチの飯田潔上席研究員は、「投資信託が出てきたことでマイナス金利がぐっと広がった。マイナス金利後の世界としては大きな潮目の変化が起こった」と話す。