元財務官で国際通貨基金(IMF)副専務理事を務めた篠原尚之東京大学教授は、年初から対ドルで約1割上昇した円相場について、実質実効レートではまだ円安で、行き過ぎた水準から戻す過程にあるとの見方を示した。

  篠原氏は13日のインタビューで、「円の実質実効レートを見るとまだ円安だ。少なくとも円高と言える状況には見えない」と指摘、「120円台の円安は少しきつかった感じがする。それが現実に引き戻されたプロセスにある」と語った。

  篠原氏は120円の水準は「米国の金利引き上げや途上国経済の好調など良い環境の中で出来上がっていた相場だった」と述べ、「円安で輸出企業の収益も増えたが、それが何年も続くわけではない。ある程度のところで落ち着くのは当然のことだ」との見解を示した。

  麻生太郎財務相は最近の円高を受け、「急激な為替変動は望ましくないという立場」を明確にし、「介入する用意がある」と発言するなど口先介入を強めている。一方で、米財務省は4月29日に発表した外国為替報告書に新たに設けた「監視リスト」に日本やドイツ、中国など5カ国を入れた。

  篠原氏は5カ国の監視リスト入りは経常黒字の増加が背景にあるとし、「米財務省にとって為替の細かい動きより、全体のグローバルなインバランスが大きな話だ」とみる。その上で、米国にとって足元のドル安・円高は「方向としては正しいというのが基本認識。調整が終わっているという感覚は持っていない」と述べた。

  篠原氏は米国は日本に対し通貨安による輸出依存ではなく、財政出動による内需刺激を求めており、来週末に仙台で開かれる主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議でも「議論が交わされることは間違いない」と見る。一方で、ドイツや英国が財政出動に慎重なことから「機動的な財政政策の実施」を明記した上海G20の共同声明から踏み込むのは難しいと語った。

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