最優秀称号のシニア銘柄投信、純資産5倍-「3世代消費」焦点も

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高齢化が進む日本経済で存在感を増すシニア層。サービスの受け手として健康、介護関連企業の重要な顧客であると同時に、潤沢な貯蓄を旅行や商品購入に充てたり、かわいい孫のために使う「3世代消費」など有望な国内消費の担い手になりつつある。シニアの生活に密着した企業に投資するファンドにも投資家の注目が集まっており、純資産総額は年初から5倍に膨らんだ。

  三井住友アセットマネジメントが設定、運用する追加型日本株ファンド「三井住友・げんきシニアライフ・オープン」は、高齢化社会が生み出す新ビジネスや新技術をシルバービジネスとして捉え、こうした分野で事業展開する企業に投資する。10日現在の純資産総額は118億円、昨年末は22億円だった。2015年度の基準価額騰落率(税引前分配金を再投資した場合)はプラス15%と、参考指数としているTOPIXのマイナス13%を大きくアウトパフォーム。過去3年ではTOPIXのプラス30%に対し、ファンドは2.2倍となった。

げんきシニアライフ・オープンとTOPIXのリターン比較(2011年5月31日基準)

  リスク・リターンの観点から中期的な運用内容が評価され、同ファンドは3月にトムソン・ロイター・マーケッツが毎年発表する「リッパー・ファンド・アワード・ジャパン2016」の最優秀日本株ファンド(評価期間3年)に選ばれ、4月にも格付投資情報センター(R&I)から投資信託・国内株式部門の最優秀ファンド賞を受賞した。

  総務省によると、日本の高齢者人口は昨年9月時点で3384万人、総人口に占める割合は27%とともに過去最高を記録した。また、65歳以上の高齢者世帯(2人以上)の貯蓄高は14年に2499万円と2年連続で増えている。

  「げんきシニアライフ・オープン」を運用する葛原健吾シニアファンドマネジャーはブルームバーグのインタビューで、「団塊の世代が退職を迎え、介護や支援を必要としないアクティブシニアがレジャーや消費にお金を使うようになり、関連企業の業績面にも最近表れてきた」と指摘。日本の高齢化や人口減少は経済成長の重しになる一面もあるが、「シニアを主要顧客とするシルバービジネスは拡大が期待できる」との見方を示す。

  同ファンドではレジャーや外食、スポーツなど健康な高齢者関連ビジネス、介護関連ビジネスの2つの観点からアプローチし、投資銘柄を選ぶ。健康な高齢者関連で積極的なリターンを狙う半面、介護関連で運用パフォーマンスのディフェンシブ性を発揮させる仕組みだ。3月末時点の組み入れ銘柄数は77社、東証1部が全体の93%を占める。また、長期リターンを得るため、予想株価収益率(PER)を1株利益成長率で割った「PEGレシオ」で1ー1.5倍以下の銘柄に投資、同レシオが大きく上昇した際は売却する。

  「成長株で構成しているが、PERが高いインターネット関連は入っていない。信頼度が一番大切で、下方修正するような銘柄を入れないのがポートフォリオを安全に保つ方法」と、葛原氏は言う。

  組み入れ上位10銘柄にはトップの大東建託をはじめ、5位にレオパレス21、8位に東建コーポレーションと建設・不動産株が入る。資金のある高齢者が子や孫への相続税対策のため、アパート経営需要の増加を見込んでのものだ。2位のトリドールは讃岐うどん店「丸亀製麺」を展開、3世代での外食機会の増加を想定している。このほか、ペット保険のアニコムホールディングスやパソコン修理・技術サービスのピーシーデポコーポレーション、後発医薬品メーカーの沢井製薬も上位に並ぶ。

  シニアとの関連性を一見イメージしにくいチョコレート関連企業で、油脂メーカーの不二製油グループ本社が3位、菓子の江崎グリコが9位に入る。「需要をけん引しているのはシニア層」というのが葛原氏の分析だ。菓子統計によれば、チョコレートの小売金額は14年に和菓子を逆転、15年もチョコレートは前年比3.7%増の5040億円と1.1%増の4750億円だった和菓子を上回った。チョコレートに含まれるカカオポリフェノールが動脈硬化や認知症予防、抗酸化などに効果があるとした研究結果の公表が増え、健康食品としての側面がクローズアップされている。

  また葛原氏は、「シニアは基本的には節約志向。一方で自分の嗜好や健康、子供や孫のためには財布のひもが緩む」とし、孫へのモノの購入や子供世帯との生活の中で生じるシニア世代の消費を示す「3世代消費」の拡大の可能性にも注目。「人口が減るから駄目というよりも、増えるシニアに注目すべき」と話した。三菱総合研究所の推定では3世代消費の年間金額規模は教育費を含め3.8兆円、昨年の訪日外国人旅行者による消費額3兆4771億円を上回る。