大手銀が国債取引縮小、売却一巡で-「保有の方が損しない」との声も

  • 流動性が落ちる中で日銀オペにリスク-メリルリンチ日本証の大崎氏
  • 銀行勢は国債の売りの主体ではない-三井住友アセットの深代氏

国内の大手銀行による日本国債取引が過去最低水準へと縮小している。市場参加者からは、国債を売却する動きが一巡し、日本銀行の長期国債買い入れオペの運営に支障が生じるリスクが高まっているとの見方が出ている。

  日本証券業協会が発表した3月の公社債投資家別売買動向によると、都市銀行の国債売買総額(短期証券を除くベース)が前年同月に比べて6割減の約2.8兆円と、2004年4月以降で最低となった。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊シニア債券ストラテジストは、「各銀行の資産構成を考えると、国債を持つか当座預金かの2択だとすれば、国債を手放して当座預金にするとマクロ加算残高を超えたところからマイナス金利になるので、国債を持っている方が損はしない。今まではプラス金利が付いていたから当座預金に移しても良かったが、そこが少し変わったのではないか」と分析した。

  国債売買高の減少にもかかわらず、都銀は3月に9510億円の買い越しと、13年4月の「量的・質的金融緩和」導入以降で最大の買い越し額となった。一方、都銀の当座預金残高は異次元緩和後で初めて1、2月に2ヵ月連続で減少した。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証の稲留氏は、「もう売り買いを頻繁にやっている感じでなくて、単純に買いだけをやっていることだと思う。売り買いを繰り返して儲けを狙う感じでもなくなってきて、そういう動きは他の資産クラスに移行しているとみている」と述べた。

日銀トレード

  国内金融機関は、国債入札で購入し、日銀国債買い入れオペで応札して売却する、いわゆる「日銀トレード」と呼ばれる売買が中心となっており、流通市場での取引も低迷している。

  メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、「都銀勢は流通市場ではほとんど取引しておらず、入札で買って日銀に売るだけの動きを繰り返していることを意味している。流動性が落ちる中で、日銀のオペにかかるリスクは、まずはテールが長くなるという形で現われると考えている」と指摘。市場のボラティリティ(変動率)が上がり過ぎた場合、逆に日銀トレードが効かなくなるリスクも想定される」と語った。

  国債のボラティリティ(60日)は4月初めに1999年以来の高水準に上昇した。3月の売買動向で、日銀と財務省などが含まれる「その他」の売買は、過去最高の約10.2兆円に上り、前月比7%増加し、前年同月比で18%増加だった。稲留氏は、日銀が証券会社から大量に国債を買い入れていることを示唆すると言う。

  日銀が発表した資金循環統計によると、昨年12月末時点の日銀国債等保有額は331兆円と過去最高を記録。保有比率は32%を占め、最大となっている。一方、銀行などは国債保有を減少させた。

  三井住友アセット・マネジメントの深代潤債券運用グループヘッドは、「銀行勢は国債の売りの主体ではない。日銀の当座預金残高積み上げに寄与する大手の売り方ではない。売りの主体は年金基金や郵貯グループなどに移っている。日銀が国債を買い占めると、売り物がなくなって売りの主体もなくなっていく」と指摘。「日銀が追加緩和をすれば、日銀オペの限界が来るのが、早くなるだろう。今年中は分からないが、日銀オペの札割れは、来年中のどこかで現実的なものになるのではないか」と語った。

  日銀の長期国債買い入れオペの結果によると、3月18日に実施された残存期間10年超25年以下の応札倍率が過去最低の1.35倍となるなど、今年に入って一段と需給が逼迫(ひっぱく)している状況が示されている。

  バークレーズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、「日銀が金融緩和策の大枠を大幅に変更すれば別の話になるが、このまま大規模な国債買い入れを続ける限り、根本的な需給の逼迫状況は変わらないと思う」と述べた。