金融庁:3メガ銀のストレステストの検証開始へ、銀行監督に導入

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  • 金利に加え、原油や地価、新興国GDPなど資産構成に合致か点検
  • 対応が不十分と判断すれば、詳しい説明求め改善促す

金融庁は国内3メガバンクの監督を強化する。各行が自ら実施している健全性審査(ストレステスト)を検証する仕組みを新たに導入する方針だ。固有の貸出資産構成に合致したリスク管理ができているかを厳しく点検し将来、経済環境の大きな変化が生じた場合の耐性を高める狙いだ。

  金融庁の遠藤俊英監督局長はブルームバーグの取材に、「ストレステスト活用した仕組みができないかという問題意識はある」と述べた。既に重視してきた金利のほか、原油や地価、新興国の国内総生産(GDP)などの変動リスクを正確に反映した内容になっているかを軸に7月にも具体的な検証作業に入る可能性がある。

  ストレステストとは資産構成に応じたリスクシナリオごとに損失程度を計測する危機管理手法。金融庁は銀行にシナリオ策定などを委ねてきたが、海外経済や資源価格の変動が顕著になる中、各行のテスト内容を踏み込んで検証する方針に転換する。金融当局が銀行に直接テストを行う欧米の監督に近づくことになる。

  こうした手法による監督強化は三菱UFJフィナンシャル・グループみずほフィナンシャルグループ三井住友フィナンシャルグループが対象。金融庁は銀行の対応が不十分と判断すれば、詳しい説明を求めるなどして改善を促す方針だ。検証の結果次第では今後、各行の貸し出し態度などに制約が生じる可能性もある。

リスク影響度の精緻化

  監督手法には自己資本比率、有価証券などの変動で収益性、流動性などに懸念が出た銀行などを指導する早期警戒制度がある。遠藤局長は過去の指標を基準にした警戒制度に比べ、ストレステストの検証は「危機管理の在り方としてふさわしい」との見解を示した。

  金利は日本銀行の長引く金融緩和政策で今後の反転リスクが高まり、国内の地価は金融緩和で上昇傾向にある。原油価格の急落を受け三菱商事や三井物産では連結最終損益が初の赤字に陥った。新興国経済も振幅が大きいなど、邦銀の貸出債権には外部環境の変化に伴うさまざまなリスクが内包されている。

  開示資料や広報担当者によると、日本の3メガバンクでは数年前からGDPなどのマクロ指標や金利変動を想定したテストを実施。以降、それぞれの貸出資産の構成に応じて原油価格や外国GDPなどを個別に想定シナリオに組み込むなど、リスク影響度のせいち化を進めている。金融庁は3行の比較も監督の参考にする。

求められる質の向上

  マネックス証券の大槻奈那チーフアナリストは、新たな監督手法について「例示された個別指標によっては、銀行側もその分野への投融資にこれまで以上に慎重になるようにという当局側のサインだと受け取るだろう」とし、特定分野への融資などにブレーキがかかる可能性を指摘した。ただ「当面の影響は限定的にとどまるだろう」とみている。

  ストレステストはリーマン危機を教訓に導入された。2009年から始めた米国では日本と違い連邦準備制度理事会(FRB)が独自基準で大手行を直接テスト。欧州も10年から当局によるテストを開始したが、ギリシャのデフォルトを想定しないなどの問題もあった。国際的にもテストの質向上が求められている。

  金融庁の森信親長官は4月の国際スワップ・デリバティブ協会の講演で、単純に資本の上乗せを求めるような世界的な規制の流れに疑問を呈し「当局が銀行を経営することはできないのだから規制は銀行に正しい方向付けをするような仕組みでなければ機能しない」と指摘。日本に適した監督方針を目指す方向性を示した。

(第8段にアナリストの見方を追加しました.)
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