【今週の債券】入札警戒で長期金利に上昇圧力、荒れる展開との声も

  • 長期金利の予想レンジはマイナス0.15%~マイナス0.05%
  • 30年債には入札に向けた調整の売りが出やすい-SBI証の道家氏

今週の債券市場は長期金利が上昇すると予想されている。利回り水準が過去最低付近で推移する中、週内に2回実施される10年債と30年債の入札に対する警戒感が出ていることが背景にある。

  長期金利の指標となる新発10年物国債利回りについて、ブルームバーグが前週末に市場参加者4人から聞いた今週の予想レンジは、全体でマイナス0.15%~マイナス0.05%となった。前週はマイナス0.12%と過去最低のマイナス0.135%に接近した。新発30年債利回りも0.27%を付け、過去最低の0.265%に迫った。

  岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、今週の入札をめぐる相場展開について、「30年入札結果を確認するまで上値が重い。利回り低下が続く30年債は高値警戒感が強いとみられ、入札前後は相場がやや荒れそうだ」と予想する。

  前週末に発表された4月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月比16万人増と市場予想の20万人を下回った。早期利上げ観測の後退から円買い・ドル売りに拍車が掛かり、ドル・円相場は一時106円44銭まで下げたが、その後107円台に戻している。

  野村証券の松沢中チーフストラテジストは、「日本の大型連休中も、海外主導で相場の流れが大きく変わることはなかった。むしろ日本発のリスクオフに海外市場もやや引きずられた感がある。一方、日本政府・日銀が怖れていたドル・円レートの下落はさほど進まず、即時の政策対応を促すほどにはなっていない」と言う。

  12日には4月27、28日開催の日銀金融政策決定会合の主な意見が公表される。ブルームバーグの事前調査ではエコノミストの追加緩和予想が56%に達していたが、政策の現状維持が決まった。日銀は物価上昇率が目標の2%程度に達する時期を「2017年度中」に先延しした。

  野村証の松沢氏は、「もし日銀が6月会合で何らか策を打ち出す意向を示したいのならば、『主な意見』は一つの良い機会だ」と指摘。「さらなるリスクオフ・インフレ期待低下を防ぐには、市場の失望の主たる理由のエネルギー以外の理由で物価見通しを引き下げながら、なぜ追加緩和をしなかったかを伝えることが必要」と言う。ただ、「6月会合では出てくるとしても補完措置で追加緩和は7月会合」とみている。

10年債入札と30年債入札

  財務省が今週実施する国債入札は10年物と30年物の2本。10日の10年債入札は表面利率が0.1%に据え置かれ、342回債のリオープン発行となる見込み。発行額は前回と同額の2兆4000億円程度。一方、12日の30年債入札は、50回債のリオープン発行となり、表面利率は0.8%に据え置かれる見込み。発行額は前回と同額の8000億円程度となる。

  SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジストは、「利回りが過去最低水準近辺で迎える場合、一時的には振れがあるかもしれない」と指摘。「4月末に発表のオペ運用方針では10年超25年以下のゾーンが増額、25年超のゾーンが減額となった。これが20年と30年債との利回りスプレッドに影響すると思う。30年債には入札に向けた調整の売りが出やすい」と述べた。

  野村証の松沢氏は、「10年債入札はマイナス金利運用への制約がなく、超長期債のボラティリティが大きすぎて取り組みづらい向きにとっては消去法で選択肢になり得る。一方、30年債入札については、足元で30年債のレポが引き続き引き締まっていることから、業者などのショートカバー需要はありそうだ」と言う。

予想レンジと相場見通し

  市場参加者の今週の先物中心限月、新発10年物国債利回りの予想レンジと債券相場見通しは以下の通り。

*T
◎岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジスト
先物6月物=151円30銭-152円20銭
10年物国債利回り=マイナス0.15%~マイナス0.05%
  「日銀の追加緩和期待が根強い一方、消費増税の先送りや財政面での経済対策が注目されており、利回り低下に一服感が出ている。需給要因や国内景気の不透明感など相場を支える材料はそろっているが、投資家も上値追いには慎重だ。5月後半は6月の国債大量償還をにらんだ展開になるため、超長期ゾーンは投資家の押し目買いで底堅さを維持しそう。10年入札はマイナス利回り定着で、積極的な買いが限られるが、日銀トレード需要などから安心感がある」

◎DIAMアセットマネジメントの山崎信人上席ファンドマネジャー
先物6月物=151円40銭-152円10銭
新発10年物国債利回り=マイナス0.14%~マイナス0.07%
  「焦点は入札。5月は伊勢志摩サミットを控え、消費増税の行方や財政出動など日本の財政要因が注目されやすい。そういう中で迎える10年債、30年債の入札で投資家のニーズがどの程度あるかを確認することになりそうだ。10年債はマイナス0.1%を下回る水準は、実際に付利下げがないと正当化されづらい。どの水準で買って日銀トレードをするかの問題。30年債入札は現行水準では最終投資家の買いが見込みづらい中で、調整圧力が高まりそうだ」

◎三井住友アセットマネジメントの深代潤債券運用グループヘッド
先物6月物=151円75銭-152円25銭
新発10年物国債利回り=マイナス0.14%~マイナス0.09%
  「高値圏でもみ合いが見込まれる。4月末の日銀金融政策決定会合での緩和見送りの影響も一巡している。今後は1-3月期の実質国内総生産(GDP)発表や伊勢志摩サミットを控える中、財政拡大や金融緩和への思惑が高まり、多少振れるかもしれない。ただ、金利要因としては米国の指標や利上げ観測の方が大きいとみている。米経済指標で良い数字が出るかが、日米の金利に影響するだろう」

◎アムンディ・ジャパンの浜崎優市場経済調査部長
先物6月物=151円75銭-152円25銭
新発10年物国債利回り=マイナス0.15%~マイナス0.09%
  「長期金利は過去最低水準付近での推移が続きそう。マイナス0.135%が当面のボトムになりそうだ。外部要因だけで金利が大きく上昇するような展開にはなりにくい。伊勢志摩サミットを控える中、政策期待はあるものの、現時点では織り込めるような状況にない。具体化しても、それで日本のインフレ期待や景気が大きく押し上げられることも想定しにくい。ドル・円相場は下落後に107円台に戻しており、今後もドルが一段と下がるとはみていない」
*T

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