燃費不正の三菱自、タイ市場の早期回復が鍵に-存続へのシナリオ

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  • タイを含むアセアン地域は三菱自の最大市場、日本の2倍の規模
  • 10年かけた再生を終え、ブランド復活スタートの年だった

燃費不正のあった三菱自動車には今後、購買者、軽自動車を供給していた日産自動車や部品メーカーへの補償、エコカー減税の返還などの費用が発生する見通しだ。存続には同社が注力してきたタイを含むアセアン市場の復活が一つの鍵となる。

  三菱自の世界販売台数は約105万台で、アセアン市場が21%を占め最も大きい。特にタイの生産拠点では大型スポーツタイプ多目的車(SUV)「トライトン」や「パジェロスポーツ」など収益率の高い車種を生産・販売し、主力車種「ミラージュ」はタイから日本に輸出している。連結対象のタイ子会社からは28日、427億円の配当金を受け取った。これに対して、日本市場は世界販売の1割程度で、うち比較的利益率の低い軽自動車が約6割を占める。

  相川哲郎社長は、今回の不正は「会社の存続に関わる大きな事案」と述べたが、27日の決算会見では、見通しは不透明なものの自動車事業や軽自動車事業からの撤退は考えていないと明言した。成長戦略に必要な投資はしていく方針で、アセアン市場で重要な位置を占めるインドネシア工場は計画通り来年4月の生産開始を目指しているという。

  アセアンの中で鍵を握るタイ市場では2012年に14万台を販売したが、政府の補助金政策終了を受けて13年には約4割減少。15年の販売は12年に比べほぼ半減の6万4000台にとどまった。

  アドバンスドリサーチジャパンの遠藤功治アナリストは、タイ市場が早期に回復すれば危機を乗り越えられるかもしれないが、それまでに多額の補償に対応できるか懸念があるとし、「タイ市場の回復が先か、補償金が先かという問題だ」と語った。不正の対象が拡大して100万台と想定した場合、燃料代や中古車価格下落、日産自への補償など対応費用が計2000億ー3000億円に上るとみている。

  三菱自は燃費試験で1991年から国内法の定めと異なる測定法をしていたと明らかにし、不正の対象車種や台数は現在精査中。3月末の現預金は4534億円で、自己資本比率は48%。対象台数が軽自動車4車種の62万5000台にとどまった場合の費用については、野村證券が21日付のリポートで425億ー1040億円と試算している。

ブランド復活スタートの年だった

  三菱自は2000年代前半にリコール隠し問題で3年連続の大幅赤字に陥り、04年から三菱重工業や三菱商事などグループ企業の支援を受けて再生を図ってきた。グループに引き受けてもらった優先株を処理して公募増資をしたのは10年後で、13年度は97年度の中間配当以来の復配を果たしたばかりだった。

  相川社長は27日の会見で、「財務体質の改善を終え、本業である商品や販売にお金を投じてこれから回復という途上だった」と述べた上で、今年は「まさにブランド復活のスタートの年」というタイミングで発覚した不正だったと語った。

  不正問題解明のため、三菱自は外部専門家で構成する特別調査委員会を設置した。3カ月をめどに調査結果の報告を受ける予定だ。水島製作所(岡山県倉敷市)で不正の対象となった軽自動車を生産するラインは稼働を停止している。帝国データバンクによると、三菱自グループの下請けは全国に7777社あり、総従業員数は約41万人にのぼる。

時価総額半減

  三菱自の時価総額は、不正発表直前のほぼ半分の4400億円規模となり、資産売却や提携の可能性を指摘する声もある。調査会社TIWの高田悟アナリストは、SUV「アウトランダー」の販売が好調な欧州でプラグインハイブリッド技術に興味を示す企業もあるだろうと述べた。また、同社のアセアン事業は非常に魅力的で、米フォードモーターなどが関心を示す可能性を指摘した。

  三菱自広報担当の稲田開氏は、資産売却や提携の可能性について、社内調査を最優先に取り組んでおり何も決まったものはないと電話取材に答えた。

  石井啓一国交相は28日、三菱自が国が定めた以外の方法で走行試験をしていたことについて、「自動車審査の信頼性を根本から損なうものであり断じて許すことができない」と批判した。国交省は再発防止策のためタスクフォースを設置、審査制度を見直している。

(チャートを追加.)
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