4月の電力市場取引は4割増-自由化の影響小さく活性化に課題

  • 強制措置には「原発再稼働が先決」、「厳しい財務状況」の声
  • JEPX新たな取り組みを導入へ-英国の事例をもとに

電力小売りが完全自由化された4月の卸電力取引量は、前年同月に比べ約4割増える見通しとなった。取引量は徐々に拡大傾向にあるものの、前月との比較では横ばいの水準にとどまっており、自由化で新規参入した電力会社が市場取引に与える影響はまだ限定的だ。市場活性化策の導入をめぐり、市場参加者の間ではつばぜり合いが起こっている。

  日本卸電力取引所(JEPX)のデータによると、4月1日から28日受け渡し分までのスポット市場の1日当たりの平均取引量は、前年同期比41%増の4727万キロワット時となったが、3月の平均と比べると3.3%減少している。

  JEPXの村上堯理事長は、26日の経産省の有識者会合で「前年同期に比べ大きく伸長しているが、前月比では横ばいと言うことで特段の変化は見られていない」と述べ、自由化によって取引が増えたという兆候はないと指摘した。全面自由化の対象となった一般家庭のうち、電力会社の切り替えを申請しているのは全体の1%超に過ぎず、JEPXの市場で「積極的に取引している顔ぶれも変わらない」という。

  24日受け渡し分のスポット取引価格(全国24時間平均)は1キロワット時当たり5円54銭となり、2010年3月以来の安値を付けた。月初から4月28日までの平均は同6円86銭と、前年同期の平均から4割超下落。大阪ガスの井上雅之企画部長は7日の会見で、価格下落によって16年度の取引量は低下するとの見方を示した。15年度は販売電力量の2割程度を取引所を通じて売却していたが、16年度は同1割程度と見込む。天然ガスを燃料にした火力発電を主体とする同社にとって、現在の市場価格ではなかなか太刀打ちできないと話す。

強制措置に賛否両論

  親会社のNTTファシリティーズ東京ガス大阪ガスからの安定した電力供給を強みにしてきた新電力大手エネットは、販売電力量の約9割を親会社を中心に相対取引で確保しており、残り1割を市場から調達する。経営企画部の小林浩部長はブルームバーグの取材に対し、卸電力取引市場について「欲しい価格だったり時間帯のところに十分出てきてない」と述べ、大手電力に対してスポット市場で一定量の電力を売買するよう義務づけるべきだとの考えを示した。

  原発や石炭、水力など発電コストが安いベース電源を持たないエネットは、ピーク時間帯に電力を使用するオフィス需要を中心に顧客を開拓してきた。一方、ベース電源を持つ大手電力会社は、夜間に余った電力を市場に安く出す傾向にあり、新電力の需要とは折り合わないという。大手電力の取引活性化に向けた取り組みについても、「いっぱい出してやってますというが、それは本当に引き取られた数字とは無関係」と指摘した。

  電気事業連合会の八木誠会長は15日の会見で、「厳しい需給状況の中で自主的取引を進め、取引量も年々拡大しつつある」と話し、活性化には強制的な措置よりも「原発の再稼働を進めていくことが大きなポイント」との見解を示した。

グロス・ビディング

  国内の電力需要に占めるスポット市場の取引量は14年度で1.5%に過ぎず、15年8月以降に九州電力の川内原子力発電所などが再稼働。しかし、供給余力が改善した後も市場を通じた取引は低水準にとどまっている。九州電力は経産省の有識者会合に提出した資料で、川内原発の再稼働で「需給状況は改善されたものの、 依然として厳しい財務状況が継続」しており、採算性の高い既存の電力売買契約を解消してまで市場への供給を増やすことは困難と説明した。

  JEPXの村上理事長は26日の会合で、同市場の開設から「15年たっているが成長途上。1日5000万キロワット時いかないような取引量は満足できる水準ではない」と指摘。取引の活性化に向けては「大きな電源や販売網を持っている会社がいかに積極的に取引に取り組んでいただけるかに尽きる」とし、英国の導入されたグロス・ビディングと呼ばれる取り組みを採用する方針だと話した。

  グロス・ビディングとは小売り部門と発電部門の両方を持つ電力会社が、グループ内取引をスポット市場に移行するというもので、英国の卸電力取引市場で導入された11年10月以降、取引量が急増したという。JEPXでも手数料を割り引く特典などを付けて参加者を募り、早期の具体化を目指す。