「不思議の国」へようこそ、平和不が兜町に内外ヘッジファンド誘致

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  • 舛添都知事が「金融コンシェルジュ」サービスの導入を表明
  • 日本では金融への優遇税制やシード資金はハードルが高い

東京証券取引所が立地する日本橋兜町の大家、平和不動産は来年夏にも既存ビルで海外や新興のヘッジファンドなどにリーズナブルな賃料でオフィス提供を始める。規制や税制など課題に直面しながらも、アジアナンバー1を目指す「東京国際金融センター」構想の一環として、資産運用者の誘致を担う。

  同社は国際金融拠点として東証周辺(日本橋兜町と茅場町一丁目の10ヘクタール)の再開発を進めており、2020年に高層ビルを開業予定。企画総務部の中尾友治執行役員は、「20年まで待てないという声があり、日本に来たい人の受け皿になるような場所をオープンしたい」と話す。

  都が主導する同構想は、20年の東京五輪で世界の関心が集まる機会をとらえ、グローバルな資金フローの主要中継地点を目指す。この一環として、安倍晋三政権は15年6月、兜町の再開発地区を国家戦略特区の候補に追加。特区指定に伴い、容積率緩和で増える収入を元手に、平和不は海外や新興の資産運用者や法務・会計・税務などを提供する専門サービス業者にリーズナブルな賃料で還元する計画だ。

  同氏によると、従来、海外の運用者が耳にする日本は、ヘッジファンドには風当たりが強く後ろ指を指される「不思議の国」だったという。2ー3月にロンドン、ニューヨーク、香港、シンガポールを訪れ、金融センター構想を紹介すると「カルチャーシフトが起こっていると驚かれ、環境が整うなら東京に行ってみたい、拠点を開設したいという声が想定したよりも多かった」と話す。

  ただ、中尾氏は、誘致には障壁も多いとして、こう漏らす。「正直気が滅入るが、進めていくしかない」。

金融コンシェルジュ

  ハードを整えても、外資にとっては言語の違いが東京進出を妨げている。東京都の舛添要一知事は13日、米国訪問中の講演会で、複雑な金融法令や規制を説明したり、金融庁と外国からの参入業者の仲介などの総合窓口となる「金融コンシェルジュ」サービスの導入予定を明らかにした。

  また、海外ではミドルやバックオフィスの外部委託が可能だが、国内では監督・行政上の指導で自前体制を求められるなど、海外よりも経費がかさむ傾向にある。平和不の中尾氏は、金融庁に働きかけ、外部委託していい部分といけない部分を明確にし「東京でも立ち上げやすい構造を作る」考えだ。

運用会社育成

  カリフォルニア州職員退職年金基金などは、総資産20億ドル(約2200億円)以下の新規設立ファンドに対しても、一定条件下で当初の運用資金(シード)を預ける「新興運用者育成プログラム」を実施。新たな運用会社を育成したり、投資機会を発掘している。

  日本でも、日本銀行によるマイナス金利政策の導入で国債偏重の運用が一段と困難になり、資産運用では工夫が必要になっている。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の高橋則広理事長は、ブルームバーグとのインタビューで、運用会社育成に向けたシード資金提供について「国民からやってあげたらと言ってもらえるなら可能性はあるが、ヘッジファンド投資は次の段階だ。趣旨は分かるが、直感的には難しそうだ」と話す。

  国際的に高い日本の税率について、中尾氏は「金融に対して特別な優遇策はハードルが高い」との見方を示す。金持ち優遇と捉えられかねないことから、「全体の社会環境が金融に対する優遇税制やシード資金につながっていかない構造がある」と指摘する。同社・街づくり推進室の岩倉友明課長は、優遇による経済効果を示し「海外のファンドが来てくれることを政府に証明できて初めて税制の議論が始まる」と言う。

  日本銀行が追加緩和を見送り、28日の日経平均株価が急落する中、平和不株は前日比7円(0.5%)高の1377円で取引を終えた。