【インサイト】黒田総裁にのしかかる、日本の銀行の耐えられない軽さ

日本銀行が金融機関への貸し出しにマイナス金利を適用するとの観測がある。これはデフレとの闘いというよりは銀行のリスクを除去する予防的な措置と言えそうだ。政策の成否を判断するには、銀行の株主の反応が円相場と債券市場の動向と同じくらい重要になるだろう。

  日銀はこれによって銀行の商業融資のマージンが拡大し、資金を中銀に滞留させず活用することを促すと期待している。超過準備の一部へのマイナス金利という「ムチ」がなかなか与信拡大に結びつかないため、「アメ」に期待をかける。

  黒田東彦総裁はこれまでバズーカで市場を驚かせてきたものだが、今回は市場の観測がまず先にある。

  中銀が資金を借り入れる銀行に金利を支払うというアメがなければ、超過準備へのマイナス金利は銀行の収益力を低下させ、バランスシートを脆弱(ぜいじゃく)にしかねない。黒田総裁が就任する前の2012年を振り返ってみよう。当時は国際通貨基金(IMF)を含め、多くのオブザーバーが日本の銀行の国債大量保有リスクについて警告していた。突然利回りが上昇すれば時価評価によって巨額の損失が生じ、日本の銀行システムを揺るがしかねないと論じた。

  黒田総裁が銀行から国債を買い上げリスクを引き取るようになったので、この懸念はしばらく薄れていたが、最近になって再浮上している。デュレーションでみたリスクが高まっているからだ。マイナス金利政策の結果、国債利回りは最高でも0.4%という水準にまで下がった。0.4%は40年債の利回りだ。これでは日本の銀行は、強力に抑えつけたバネの上に座っているようなものだ。抑える力がちょっとでも緩めば、システムごと吹き飛ばされてしまう。

  つまり、日本の銀行の国債保有は名目上は減っているものの、平たんなイールドカーブのおかげで、この軽いはずの荷物が耐えられない重さになっている。株主は不安を感じている。メガ銀行の株価は今年これまでに16―23%下落した。指標のTOPIXは10%余り下落。

  黒田総裁は28日の政策発表で、国債を持ち過ぎるリスクから銀行を解き放つ方法を示さなければならない。もちろん、中銀から借り入れる銀行に金利を支払っても設備投資に回る融資は必ずしも急激に増えないだろうし、高齢化社会では新規投資での高いリターンも見込めない。これは黒田総裁だけではどうすることもできない。

  従って、2%のインフレ率という金融緩和の当初の目的はいったん忘れよう。黒田総裁が今しなければならないのは、日本の金融システムが動揺するリスクの芽をつむことだ。

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)

原題:Japanese Banks’ Unbearable Lightness Weighs on Kuroda: Gadfly(抜粋)

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