日銀は今「動く必要ない」、安倍政権も緩和求めてない-中原伸之氏

  • マイナス金利は少し様子見を、110円は心地良い水準-インタビュー
  • 中原氏は晋太郎氏の代から後援者、現在も私的アドバイザー

安倍晋三首相と長年にわたってパイプを持つ元日本銀行審議委員の中原伸之氏は、日銀が27、28日両日開く金融政策決定会合について、マイナス金利の効果や内外の経済情勢を見守った方が良いタイミングであり、今は「動く必要はない」と述べた。

  中原氏は26日、ブルームバーグのインタビューで、マイナス金利について「私が審議委員だった時に学者を集めて議論したことがあり、いつかは導入されると思っていたが、こんな早く導入されるとは思わなかったので、私もびっくりした」と語った。その上で「効果はないはずがないが、もう少し様子を見た方がいいと思う」と述べた。

  物価情勢については、2月の食料(酒類を除く)とエネルギーを除く消費者物価指数(CPI)が前年比0.8%上昇していることを挙げて、「これで十分だと思っている」と語った。国際的な経済環境は悪いものの、「何しろ自国でできることは限られている。できる範囲でやらないとやり過ぎになってしまう」と述べ、安倍首相にとって現時点で日銀に動いてほしい理由はない、との見方を示した。

  中原氏は東亜燃料工業(現東燃ゼネラル石油)の元社長。1998年から2002年まで日銀審議委員を務めた。その間、00年8月のゼロ金利解除に反対。量的緩和の導入を早くから主張し、01年3月に日銀が同政策を導入する端緒を開いた。安倍首相にとっては、父である故晋太郎氏の代からの後援者で、現在も私的なアドバイザーを務める。原田泰審議委員を安倍首相に引き合わせたのも中原氏だ。

06年3月の解除で安倍氏は変わった

  中原氏は安倍首相の日銀に対する思いについて、「日銀は06年3月に量的緩和を解除したが、当時官房長官だった安倍さんは時期尚早だと怒って日銀に抗議している。それから安倍さんの日銀に対する態度が変わった」と語る。

  さらに、「安倍首相が政権を取った12年12月の総選挙で金融政策が主たる争点になったが、これは日本の政治史上初めてだった。アベノミクスの3本の矢の中で、一番の論点は、第1の矢である金融政策により過度の円高を是正することだった」と指摘。「私がそのことを安倍首相に強く推奨した最大の理由は、1ドル=75円では日本の輸出産業が駄目になる、壊滅すると思ったからだ」と振り返る。

  アベノミクスの下、13年4月の黒田東彦総裁の異次元緩和で、ドル円相場は15年6月に同125円台後半の円安を付けた後、今年4月に入っていったん同107円台の円高水準に振れ、足元では同110円台で推移している。中原氏は「だいたいこの辺が落ち着きどころではないか。居心地が良い水準であり、この辺で落ち着いてくれば、企業も対処できるのではないか」と語った。

  その上で、「100円を割れたら介入しないとならないだろうが、割ることはないと思っている。あまり極端に動いたら、政府が介入すべきだ」という。

黒田総裁は力まず、怒らず、淡々と

  金融政策運営については「経済情勢に合わせて必要があれば対応すれば良い」と指摘。その役割は「経済の底割れを防ぐことと、現在の経済の水準、生活水準を維持していくこと」であり、やみくもに円安に持って行けば良いというものではない、との見方を示した。

  黒田総裁は残り任期2年を切ったが、目標の2%物価の達成はなお遠い。中原氏は「個人的な動機は差し置いて、経済の変化をよくにらみながら、力まず、怒らず、淡々とおやりになった方が良い」と言う。中原氏は昨年10月のインタビューで、14年10月の追加緩和について「裏を探れば、黒田総裁が10%への消費増税を計画通りやるべきだというシグナルだったが、うまくいかなかった」と指摘している。

  来年4月に予定されている消費増税については「延期せざるを得ない」と述べた。日本を取り巻く経済情勢は好ましくないことや熊本震災に触れ、「過去に2~3%上げた時は必ず景気が後退している」と指摘。「今後、上げるなら毎年か1年おきに1%ずつ上げた方が良い。次に上げる時はよほど慎重にしないと必ずつまずく」と語った。

米国が悲鳴を上げている

  世界経済について中原氏は、先進国を取り巻く情勢が非常に悪化しており、「良い方向には向かっていない」と指摘。世界的に価格下落圧力がかり実質賃金も下落傾向にあるため、米連邦準備制度理事会(FRB)は「これ以上、金利を上げられない。いずれ0%に戻る」とみる。

  中原氏にとって一番心配なのは米国で、「移民政策のデメリットが大きくなっており、内部分裂した状態になっている」という。大統領選でのトランプ氏浮上は、「米国が悲鳴を上げているということだ。今回の選挙は非常に重要だ」と述べた。

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