6割近くが追加緩和予想、ETF10兆円追加との見方も-日銀サーベイ

  • 尾形氏「見送ればアベノミクス支援から手を引いた」と受け止め
  • マイナス金利が不評、金融政策の目先を変える必要と六車氏

日本銀行が来週開く金融政策決定会合で追加緩和に踏み切るとの見方が、エコノミスト調査で6割近くに達した。手段としては、金利・量・質の3次元のうち質の拡大を見込む向きが多く、指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れを10兆円追加するとの見方もある。

  エコノミスト41人を対象に15-21日実施した調査で、日銀が27、28日会合で追加緩和を行うとの予想は23人(56%)に達した。直前予想としては、量的・質的緩和が導入された2013年4月3日会合(100%=対象13人)以降、最も高くなった。これに次ぐ高水準だったのは昨年10月30日会合(44%)で、この時は追加緩和は見送られた。7月までの緩和予想は93%と前回調査(88%)を上回り圧倒的多数を占めた。

  クレディ・アグリコル証券の尾形和彦チーフエコノミストは、日経平均株価が5日、2014年10月の追加緩和時とほぼ同水準の1万6000円を割り込んだことを重視。これは「過去の追加緩和の効果が『無に帰した』ことを意味する」とした上で、そのような事態でも動かなければ、「日銀は事実上、『アベノミクス支援』から手を引いたとみなさざるを得ない」と指摘。6月緩和予想を4月に前倒しした。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストも、株安・円高圧力が続いていることに加え、日銀短観の企業の物価見通しに示されるように期待インフレ率が一段と鈍化していること、さらに、「マイナス金利が不評で金融政策の目先を変える必要がある」ことから、従来の緩和なしから4月緩和予想に転じた。


手段はETF

  みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは、円高に熊本の震災が重なり、「実体経済への悪影響を阻止すべくちゅうちょなく追加緩和という名目は一段と立ちやすくなったように見える」と指摘。当局としても、現状のように円買い方向の投機ポジションが限界まで膨張している状況の方が効果を演出しやすいという側面があるため、「『やるなら今』という判断はかなり合理的なものだろう」という。

  手段としてはETF購入を挙げる向きが多い。ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦チーフエコノミストは「既に市場では現在の年間3.3兆円から5、6兆円への増額は織込まれつつあるため、現状の2倍強の7兆円程度が目安となるのではないか」とみる。HSBCホールディングスのデバリエ・いづみ日本担当エコノミスト(香港在勤)はETFを10兆円買い増すと予想する。

  追加緩和期待が高まっているだけに、日銀が様子見を続ければ円高・株安が進むとの見方が強い。伊藤忠経済研究所の武田淳主任研究員は「追加緩和を見送った場合、再び円高が進行、株価も下落し、企業景況感や消費者マインドが悪化、デフレに後戻りする可能性が高まる」とみる。六車氏も「現状維持の場合は、『いよいよ政策オプションが尽きた』との失望感から株安・円高が進む」と予想する。

緩和しても円高止められない

  日銀が仮に追加緩和に踏み切っても円高の流れは止められない、という見方もある。明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは「今の為替相場の雰囲気では、円高の流れも変えられない可能性が高い」と指摘。為替相場の方向性に与える影響度という点で、「日銀は結局、米連邦準備制度理事会(FRB)の足元にも及ばない」という。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストも、追加緩和がなければ「円高・株安が進みやすくなる」一方で、追加緩和があっても「想定の範囲内であれば、金融政策の限界が意識され、結局、円高・株安となる可能性がある」とみる。

  野村総合研究所の井上哲也金融ITイノベーション研究部長は「追加緩和を行ったとしても、現在の市場や実体経済の問題の多くが海外発であるだけに、目に見える効果は挙げにくい」と指摘する。それでも、「日銀としては、追加緩和を見送った場合の市場や実体経済へのダメージや、円高抑制のための政策に対する悲観論の台頭を考えると、追加緩和を行うことに意味がある」という。

論理的にはないがサプライズ狙いも

  一方、バークレイズ証券の森田京平チーフエコノミストは「マイナス金利の市場や実体経済への影響はまだ判然としない。無担保コール翌日物金利がようやくマイナス0.1%に近付いた段階であり、4月会合で金利のマイナス幅を広げることの意義は十分説明できない」という。一方で、「金利以外での追加緩和となると、それも説明は難しい」ため、4月会合での追加緩和は想定しにくいという。

  みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「今回は現状維持としつつ、必要があれば臨時会合を開いてでも迅速に追加緩和に踏み切る『臨戦態勢』をアピールするのが論理的に考えた場合、最も可能性の高いシナリオだろう」という。もっとも、「サプライズ狙いの黒田総裁がそうした合理的な選択をするとは限らないが」と留保条件を付けている。

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