「運用の世界はアート」、2年前に国債売り切り代替投資-DIC年金

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  • 構成はヘッジ外債55%、国内株20%、外株25%で目標リターン3.5%
  • 12年に日米独で金利が2%割れ「株式との分散効果薄れた」と近藤氏

「みんなと同じに考えていたら巻き込まれるだけ」-。日本銀行のマイナス金利政策で多くの機関投資家が国債偏重のポートフォリオを見直す中、DIC企業年金基金は一足早く2014年に保有する国内債を全て売り払った。近藤英男運用執行理事は、「運用の世界はアート。創造と想像で未来をどうイメージしていくか」を持論とし、投資の「捉え方とタイミングが重要」と話す。

  DICはインク世界首位の総合化学会社で、運用額1000億円の同基金の加入者は約6200人。目標リターンの年率3.5%(リスクは同7.8%)に対し、14年までの12年間の平均リターンとリスクは年率5.9%だった。同基金は2年前に日本国債を中心とする国内債を売却し現在の保有はゼロ。資産構成は、安定収益を狙う円建て債の代替として為替リスクをヘッジした外国債券55%のほか、リスクを取って収益を追求する国内株式20%と外国株式25%だ。

  1月の日本銀行によるマイナス金利導入で、年限10年以内の国債利回りはマイナス圏に陥る中、ゆうちょ銀行やかんぽ生命などの金融機関は日本国債が中心の運用から、外債投資の拡大や代替投資(オルタナティブ)へのシフトを検討。第一生命保険は今年度の運用計画で、新規資金や償還資金で日本国債は買わず、インフラ関連などミドルリスク・ミドルリターン分野への投資を強化する方針を示している。

  近藤氏は、国債の売却に踏み切った背景について「12年に日本に続きドイツ、米国の金利が2%を下回った」ことを挙げ、債券相場が株式相場と同じ方向に動く傾向も出てきたことから、「分散効果がなくなってきた」と説明。国内債に代わり海外の投資適格社債やインフラ関連の債券などに為替リスクを回避して投資しているという。

日本国債のリターンは下から6位

  15年度の運用結果は08年以来のマイナスとなり、その要因について「日本国債を持っていないから」と分析する。国内債券運用の代表的指数、野村BPI総合の騰落率は5.4%だった。しかし、含み益のある国内債運用も「償還による入れ替えでマイナス金利がいつか来る」と話し、国内債を保有していないからといって「悔しいとは思わない」と言う。格付け投資情報センター(R&I)が110の企業年金を調査した結果、15年度の運用収益はマイナス1.07%だった。

リーマン直後に代替投資

  DIC年金基金ではプライベートエクイティ(PE)や不動産、ヘッジファンドなどのオルタナティブ投資の割合が、リーマンショックの発生した08年以前は全体の10%だったが、世界金融危機で資金が引き揚げられた09年度には約15%に拡大。市場価格が大幅に下落したディストレスト資産などに投資し、値上がり益を回収、12年からは金利低下を想定し利息や配当などキャッシュフローを稼ぐ資産を積み上げた。

  1ドル=120円台と約8年ぶりの円安・ドル高水準が続いた15年度は海外投資のリスクを抑えるため、新規投資を抑えて回収を優先。オルタナティブ投資は現在、37-38%になっている。今年度に入り、ドル・円相場が同110円を下回る円高傾向にあることから、「海外投資がしやすい」と言う。

  タイミングを捉えるのに役立っているのが、リスクのモニタリングだ。市場が上昇していくときは全体のリスク量が圧縮され、イベントが発生した際には圧縮されたリスクが一気に拡大する。近藤氏の経験則ではポートフォリオのリスクが標準偏差で2.5-3%に低下すると「大きな異変が起きる」と言う。リーマンショック前の07年も、中国ショック前の15年前半もポートフォリオは警戒シグナルが発しており、一足早く利益確定できたとしている。

創造

  同年金基金が早くから手掛けてきたインフラ投資などの分野も、現在の超低金利下で利回りを求める投資家が着目。投資資金の流入で利回りが低下傾向にある資産も出てきており、一段の創意工夫が必要になっている。

  最近ではファンドに投資するだけではなく、「マイナス金利の中で、いろいろなお金がオルタナティブに流れていく」として、ファンド運用の投資会社の少数株主にもなっている。また、中国経済の停滞で厳しい造船会社からオイルタンカーやケミカルタンカーを安く取得し、その運賃を収益源とする船舶投資ファンドにも投資している。

  今後は、ネットショッピングなど電子商取引の隆盛に対して百貨店業界が苦戦するように、UberやAirbnb(エアビーアンドビー)など、新しい産業の出現により衰退する事業の再生案件やディストレスト案件が出てくるという。また、「経済は低成長が続くので、国内総生産の伸びにリンクしない分野を見つけていく」と話す。これまで割高で投資が難しかった介護施設やヘルスケアなどは、価格が修正されて投資しやすい環境になってきたほか、エネルギー関係はまだ投資機会が多いとみている。

(第4、6段落を加筆しました.)
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