次は「LOWER LOW」、5年後に1ドル=75円不可避-GCI

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  • ドル・円長期下落トレンド反転、147円台の98年高値超え必要と岩重氏
  • 日本版ヘリコプターマネーとマイナス金利引き下げで短期反発後押し

日本銀行が「日本版ヘリコプターマネー」を実施すれば、ドル・円相場は一時的に1ドル=115円を回復する可能性があるが、長期的には戦後最安値の75円トライが避けられない-。ヘッジファンドのGCIアセット・マネジメントの岩重竜宏チーフFXストラテジストは、テクニカル分析の観点からこう指摘する。

  日銀は今月27、28日に金融政策決定会合を開く。岩重氏は15日のインタビューで、日銀が「タンス預金を引っ張り出して購買意欲を喚起するような政策」を導入すれば、ドル・円が一時的に115円台を回復する可能性はあると指摘した。また、マイナス金利政策については、どこまで進むか分からないという中で不安心理が台頭しているため、マイナス0.5%まで一気に下げて打ち止め感を出してしまった方がいいと語った。

  日本版ヘリコプターマネーとマイナス金利引き下げをセットでやれば、半年程度はドル・円が110-115円のレンジで推移することが「ギャランティー(保証)される可能性が高まる」と分析。しかし、現在118円台にある20カ月移動平均線をもう一度上抜けて「ゴールデンクロス」を実現する可能性は相当低く、「テクニカル上で見る限り、来年、1年後ということだとどこかで100円を割れてくるだろう」と語った。

  ドル・円は1月末に日銀が予想外のマイナス金利政策導入を発表したことを受けて一時121円台まで円安に振れたが、世界的な金融市場の混乱でリスク回避の動きが加速する中、わずか9営業日後には111円台を割り込んだ。その後米国の追加利上げ観測の後退を背景にドル安・円高が一段と進み、今月11日に約1年5カ月ぶりの安値となる107円63銭(ブルームバーグのデータ参照)まで下落した。

  2012年末以降のアベノミクス相場がもたらした円安で、ドル・円は20年移動平均線を上回ってゴールデンクロスを実現させたが、「ダウ理論」上、1971年のニクソンショックから始まった長期下落トレンドを反転させるには98年のドル高値147円64銭を超えなければならず、それには遠く及ばなかったと岩重氏は説明した。ダウ理論には明確なシグナルが出るまでトレンドは継続するという法則があり、高値と安値が切り上がり続ける間は上昇トレンドが継続、切り下がり続ける間は下落トレンド継続と見なされる。

2カ月早過ぎた

  2011年10月末に75円台の戦後最安値を付けたドル・円は、昨年6月に13年ぶりドル高・円安水準となる125円86銭まで上昇した。しかし、その数日後に黒田総裁が実質実効レートで「さらに円安はありそうにない」と発言したことで、頭打ち感が台頭。2カ月後の8月には中国人民元の実質切り下げをきっかけに株安や商品安が加速するなどリスク回避の動きが強まり、116円台へ急落した。

  岩重氏は、黒田総裁の発言は「明らかにもうこれ以上円安に行かさないというメッセージだったと思うが、2カ月早過ぎた」と指摘。「仮に実質実効レートの話をしないで130円方向に誘導していたら、チャイナショックが8月に起こっても120円はそうそう簡単には割れなかった。そうすると20カ月移動平均線とのデットクロスも起きず、あと1年ぐらいは120円台で推移できていた可能性がある」と語った。

  147円のかなり手前で拙速にドル高・円安の進行をキャップしてしまったことで、結果的にチャイナショックに対する耐性が失われ、その後米国の利上げ見通しも大幅に後退したため、ドル売りに拍車が掛かったと説明。財務省は円安がどんどん進むことでキャピタルフライト型の日本国債の暴落が起こることを懸念しているのかもしれないが、経常黒字国の日本では「リスク回避で円に還流してくると極端な円高になるというのが戦後一貫して歴史から学んできたこと」だとし、「8月以降に起きていることは黒田総裁にとってはまさに悪夢」と話した。

  その上で岩重氏は、ドル・円の高値が98年の高値を下回る「LOWER HIGH」となったことで、次に来るのは「LOWER LOW」だとし、「5年後などという意味では75円を割り込んでいく」と分析。さらに、米国で賃金インフレが起こりづらくなってきているため、「米国がインフレにならずに米国の通貨価値がそれほど落ちないということになると、次回75円方向に行ったときにはあっさり50円を割り込むようなドラスティックなものではなく、非常にモデレートに下がっていく可能性は出てきている」と語った。

120円はもうない

  岩重氏によると、足元のドル・円は週足チャート上のヘッド・アンド・ショルダーから引き出した下値めどで、戦後最安値から昨年6月高値の38.2%戻しともほぼ一致する106円50銭近くまで下げ、「ターゲットはほぼ達成している」状態。「例えば為替介入をしようがしまいが、106円50銭近辺まで行けば一回収まり、その後自律反発で何らかのコレクションが起こる」と想定され、テクニカル的には4-6月中に昨年6月高値から直近安値の38.2%戻しやマイナス金利導入直後の高値から直近安値の半値戻しにあたる114円台までの戻りが見込まれるとしている。

  「同じ75円に行くにしてもできるだけそれをモデレートにする、あるいは先延ばしにするということは日本の国益にかなうので、黒田総裁が考えておられることは全部やった方がいい」と指摘。その上で、「ドル・円が118円を大幅に上回っていくということはもうないと思っている。120円はもうないというのがテクニカルからいえることだ」と語った。

  岩重氏は1989年にマニュファクチュラース・ハノーバー銀行(現JPモルガン・チェース銀行)に入行して以降、四半世紀にわたり為替トレーダーや為替アナリスト業務に従事してきた。2014年から現職。

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