【インサイト】野村が欧州株式から撤退、早過ぎる決断ではない

野村はやっと、欧州株式事業からの撤退を決めた。早過ぎる決断では全くない。

  株式は日本で野村の中心事業だが、欧州では撤退することになる。日本の金融機関の資本コストは米国や欧州勢に比べればはるかに低いので、債券・為替・商品トレーディングが不調でもじっくり構えていることが可能だ。しかし、欧州株式についてはそうは行かない。強力なライバルがいる上に取引高が減りつつあるからだ。

  2015年の相場下落で投資家がやけどをしたこともあり、今年の滑り出しは散々だった。

  野村が今まで欧州株式から撤退しなかったのは不思議なくらいだ。米国勢が苦境にあった金融危機中に海外へと拡大した他の2銀行はもっと早くに退却している。米国勢が息を吹き返し、電子取引が株式トレーディングの大半を席巻する中で、英スタンダードチャータードは15年の序盤に完全撤退。米英への事業集中を進めるバークレイズは数カ月前に欧州株式部門を閉鎖した。

  世界的な規模を持たないことも野村の弱点だった。世界、特に米国で影響力を持たなければ株式事業で利益を上げることは難しい。野村は米リーマン・ブラザーズ・ホールディングスが破綻した際に米国に足場を築くチャンスを逸した。リーマンのアジアと欧州事業を買収したものの、米事業はバークレイズが買い取り、野村は自前での米事業構築を迫られた。

  野村は欧州の債券市場で重要なプレーヤーだが、株式と株式関連の引き受けランキングは49位に沈み、昨年の21位や5年前の13位から後退している。

  野村の海外拡大戦略はリーマン部門買収の直後からほころび始めた。リーマンから加わった社員の多くは野村の企業文化に融合させるのが難しく、上意下達の日本企業の構造になじめない者もいた。一部は保証されていたボーナスを受け取ると辞めていき、費用ばかりがかさんだ。

  野村は海外事業で2016年3月期に500億円の税引き前利益目標を掲げていたが、その達成時期は今年2月時点で先送りされていた。野村はこれまでにも海外事業でつまずいたことがある。1990年代終盤に米国の商業ローンで損失を被り撤退、07年には米サブプライム市場へのエクスポージャーで打撃を受けた。

  国内の成長は鈍化しているものの、野村は3分の1近い市場シェアを持ち、アベノミクスによって金融システムにあふれるマネーから恩恵を受けることができる。海外では、債券引き受けや日本企業への買収助言など得意分野に集中するべきだろう。野村が長年かけて学んできたことだが、海外への野心は時に高くつく。

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)

原題:Nomura’s Retreat From European Stocks Looks Opportune: Gadfly(抜粋)

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