焦点は日銀の緩和手段、量や金利に加えヘリコプターマネーの声も

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  • 「ETFなど市況対策に近い質に焦点を当てたものに」と六車氏
  • 根強い長期国債買い入れの限界論-日銀OBの岩田氏、白井氏

急速な円高の進行を受けて、日本銀行が27、28日開く金融政策決定会合で追加緩和に踏み切るとの見方が広がり始めている。

  ドル円相場は7日の海外市場で一時、1年5カ月ぶりとなる1ドル=107円台まで円高が進行。2014年10月の追加緩和後に進んだ円安が帳消しとなった。その後いったん108円台に戻したものの、12日の東京市場では再び107円台で推移している。

  日銀がいずれかのタイミングで追加緩和に動く場合、その手段は何か。長期国債やリスク資産の買い入れ拡大、マイナス金利の引き下げに加えて、中には国民に直接お金を配るヘリコプターマネーを発動し大胆な財政出動とセットにした政策の展開を見込む向きもある。

リスク資産

  クレディ・アグリコル証券の尾形和彦チーフエコノミストは11日のリポートで、日経平均株価が先週、節目の1万6000円を割り込んだことを受け、これまで6月としてきた追加緩和予想時期を4月に前倒しした。手段については、実務上の問題などからマイナス金利を拡大するのは時期尚早とした上で、株式などリスク金融資産の買い入れを拡大するしか選択肢はないと指摘する。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストも8日付のリポートで、これまでリスクシナリオとしていた4月緩和をメーンシナリオに変更。手段としては量、質、金利の3次元のうち、「マイナス金利が不評で目先を変える必要がある」ことから、指数連動型上場投資信託(ETF)買い入れ拡大など、市況対策に近い「質」に焦点を当てたものになるのではないかとみる。

長期国債

  長期国債の買い増しについては限界に近づいているとの見方が絶えない。黒田東彦総裁はマイナス金利導入直後の2月3日の講演で、「量・質・マイナス金利の3つの次元のすべてで緩和手段を駆使することによって、金融緩和を進めていく」と述べ、長期国債の買い入れもまだ拡大できるとの見解を示した。

  しかし、元日本銀行副総裁の岩田一政・日本経済研究センター理事長は4日のインタビューで、長期国債の買い入れは17年半ばには限界が来るとみている。日銀が昨年12月に導入した量的・質的金融緩和の補完措置を考慮しても「結論は変わらない」という。

  3月で審議委員を退任した白井さゆり慶応義塾大特別招聘教授は8日、退任後初のインタビューに応じ、日銀が金利下限を設けずどんな価格でも買う姿勢をみせていることから、「ある程度の期間はできるかもしれない」としながらも、黒田総裁の残り任期である2年間にわたって「継続することが難しくなる可能性がある」と述べ、買い入れの拡大には「非常に慎重さが必要だ」と語った。

マイナス金利

  日銀はマイナス金利の拡大もいとわない、との見方もある。SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは6日付のリポートで、「日銀政策には限界論も聞かれる」ものの、日銀がマイナス金利の0.1%引き下げ、長期国債の10兆円買い増しなど3次元緩和を行えば、ドル円相場は5円程度円安になると試算。「マイナス金利は為替市場には有効である」と指摘する。

ヘリコプターマネー

  一方、オックスフォード・エコノミクスのエコノミスト、マイケル・テイラー氏は7日付のリポートで、年内にマイナス金利の0.5%への拡大と金融資産購入の80兆円から100兆円への拡大を予想しているが、「それでは十分ではなく、たとえばヘリコプターマネーといった、もっと過激な政策が必要かもしれない」としている。

  日銀の金融緩和の手段としてヘリコプターマネーが取りざたされる背景には、欧州での議論の高まりがある。欧州中央銀行(ECB)は3月10日にマイナス金利を0.4%に引き下げるなど追加緩和に踏み切ったが、ドラギ総裁の会見ではヘリコプターマネーについても質問が出た。

  みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは3月11日のリポートで、「このような質問は一笑に付されるのかと思いきや」、ドラギ総裁はそうした手段は考えていないと言いつつも、「意外に真面目な返答を行っている」と指摘。「全否定ではないという雰囲気に意外感を覚えた」という。

  唐鎌氏はその上で、「今回のECBの決定や1月末の日銀の決定を見る限り、金融政策で通貨安誘導を行い、景気を刺激する経路に限界が見え始めているようにも思われる。次の展開としてのヘリコプターマネー(財政ファイナンス)の実現が、何らかの形で実現するのではないかという点に関し、注意深くウォッチしていきたい」としている。

ミスリーディング

  ドイツ証券の松岡幹裕チーフエコノミストは3月4日のリポートで、世界では金融緩和策も尽き財政政策を発動させるべきだという議論がまた出始めていると指摘、その中でより斬新的なアイデアとして議論されているヘリコプターマネーは「とてもミスリーディング」だという。松岡氏はヘリコプターマネーを「金融政策による財政赤字のファイナンス」と定義した上で、「すでに多くの先進国で量的緩和(QE)を通じて発動されているではないか。『何を今さら!』というのが率直な意見である」としている。

(第2段落に為替相場の動向を追加します.)
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