米金融当局のインフレ押し上げ策、ようやくトレーダーも納得か

更新日時
  • 原油価格の回復でインフレ率は上向く
  • 長期的なインフレ見通しを投資家は依然楽観

インフレに関して言えば、債券トレーダーはようやく米金融当局に耳を傾け始めたようだ。

  この1年のインフレ率の低迷は短期的な現象にすぎないことを投資家に納得させようと試行錯誤してきた金融当局が、ようやく投資家の賛同を得つつある。原油相場の回復に加え、追加利上げする前に経済を勢いづかせる姿勢をイエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長が示したことから、インフレ率の見通しは2月半ば以降、危機後の低水準から急上昇した。市場のインフレ期待を測る1つの指標は先月、2011年以降で最大の上昇を記録した。

  米金融当局は12年5月以降、インフレ率を目標の2%に戻そうと取り組んできたものの、原油安や日欧のデフレ懸念、ドル高による米国の物価上昇圧力の低下に阻まれてきた。こうした懸念を背景に、債券市場の一部には、インフレ率が当局の目標に近づくのか疑念も浮上していた。

  こんな状況が変化し始めた最大の理由は商品相場の反発であるものの、当局の金融緩和策がようやく物価押し上げに功を奏し始めた兆候も背景にある。ブルームバーグの集計データによれば、消費者物価指数(CPI)で変動の激しい食品・エネルギーを除いたコア指数は2月に前年同月比2.3%上昇と、7年余りで最大の伸びになった。当局がインフレ指標として重視する米個人消費支出(PCE)価格指数はコアベースで3年ぶりの高水準の1.7%上昇に達した。

  これが向こう数年のインフレ期待にも影響し、米国債利回りと同年限のインフレ連動債(TIPS)の差に基づく「ブレークイーブン」レートでは、投資家が予想する向こう5年間のインフレ率は年平均1.46%と、2月半ばの0.95%から大幅に改善した。
  
  一方でエコノミストの一部からは、インフレを十分に刺激することと行き過ぎたインフレの境界線が微妙なため当局のやり方は火遊びという指摘も聞かれる。過去のデータには、消費者物価がいったん本格的に上昇し始めると、抑制が難しいことが示されている。

  ただ少なくとも今のところ投資家は、イエレン議長がインフレの収拾不能の事態を回避できると確信しており、投資家が長期国債の保有で要求する対価は高まっていない。米10年債の「ターム・プレミアム(期間に伴う上乗せ利回り)」は4月5日時点でマイナス0.32ポイントと、2月半ばに記録した低水準よりも上昇したとはいえ、5年平均の0.65ポイントを依然大きく下回る。昨年12月の米利上げ以降、米10年債利回りは2.3%から低下し、日本時間11日午後0時38分現在1.72%。

  ブラックロックのインフレ連動債ポートフォリオ責任者、マーティン・ヘガティー氏は「実際にインフレ率の高進に直面した場合、米金融当局には対応手段があると市場は間違いなく認識している」と述べた。

原題:Fed’s Inflation Push Finally Has Bond Traders Wanting to Believe(抜粋)

(米10年債のタームプレミアムや市場関係者のコメントを追加します。.)
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE