日銀のマイナス金利裏目に-IMF会合控え手詰まり感象徴

  • 債券利回り低下の一方、円高に歯止めかからず
  • 黒田総裁、ワシントンの国際金融会合で政策擁護に腐心か

経済成長やインフレの押し上げで十分な効果を上げられず手詰まり状態に陥った世界各国・地域の金融当局は、今度は追加的刺激策の成果が乏しいことで信認を損なうリスクに直面している。

  日本銀行が1月にマイナス金利導入を決めたことで、債券利回りは低下。まさに円安を必要とする局面での円高進行にほとんど歯止めをかけることができず、日本経済を圧迫している。このため金融、財政両面のさらなる刺激策をめぐる議論を招いているが、家計や企業の間では刺激策への疑念が強まっている。

  クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは、「日本がうれしくないニュースを世界に運んでいる」と指摘し、「非常に大規模な金融緩和も全ての国で効果を発揮するということではない。さらなる緩和は批判を巻き起こす可能性がある」と述べた。

クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg *** Local Caption *** Hiromichi Shirakawa

  日本におけるこうした信認の低下は、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議や国際通貨基金(IMF)・世界銀行の春季会合など一連の国際金融会合で今週ワシントンに集まる各国・地域の当局者にとって、警鐘となる出来事だ。

逆戻りも

  世界中の当局者がそれぞれの取り組みを通じて事態を早急に好転させることができなければ、過度の低インフレや成長減速に逆戻りするリスクがあり、金融市場では再び動揺が高まって日本型の停滞が他の先進国に一段と波及しかねない。

  投資と雇用、小幅なインフレ高進の循環に移行することを目指す先進国にとって、追加策にもかかわらわず物価や成長を上向かせるに至っていない日本の現状は憂慮すべき状況だ。

  バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのグローバル経済調査共同責任者イーサン・ハリス氏(ニューヨーク在勤)は、「深刻な危機が組み合わさって長期にわたる低成長を引き起こし、一連の衝撃がそれに加わったことで楽観主義も後退した」と分析。「この状態が長期化すれば自己実現的となるため危険だ」と語った。

  欧州中央銀行(ECB)が講じた積極的な措置や、米金融当局やイングランド銀行(英中央銀行)による緩和長期化への姿勢転換を受け、1-3月(第1四半期)の市場の低迷は反転した。だがその後も、世界経済の不振は懸念材料だ。

  IMFが12日公表する最新の世界経済見通しでは、1月の前回見通しに続き、世界の成長予想が下方修正される公算が大きい。ラガルドIMF専務理事は先週、回復は「依然としてあまりにも緩慢、脆弱(ぜいじゃく)で、その持続可能性へのリスクが増している」と話した。

  米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は3月29日、世界情勢、特に1-3月期の早い時期に株安を招いた中国の成長ペースをめぐる不透明感が米経済にとってリスクだと指摘した。

  ワシントンでの国際金融会合に臨む日銀の黒田東彦総裁と麻生太郎財務相は、日本の政策が根本的な経済問題を解決することなく市場に混乱をもたらしたとされる中、政策擁護に当たって苦しい立場に置かれることになりそうだ。

G20合意が制約か

  インフレと成長の押し上げに向け、追加の刺激策を講じようにも、通貨の競争的な引き下げを回避するというG20の合意が黒田総裁の行動の余地を狭める可能性がある。さらに、日銀の政策が債券市場にマイナスとなり、購入可能な債券が間もなく底を打つとの批判の声も上がっている。

  黒田総裁はこれに対し、金利のマイナス幅拡大に加え、日本国債や指数連動型上場投資信託(ETF)、上場不動産投資信託(JーREIT)の買い入れ増額を含むあらゆる選択肢が検討の対象になるとの認識を示している。16年度補正予算案編成の観測が台頭しており、財政面からの刺激策が講じられる可能性が一段と大きいかもしれない。

  クレディ・スイスの白川氏は「黒田総裁は多数の質問を浴びることになるだろう」とコメント。「ただ、デフレに戻ってしまうかもしれないような状況で、何もせずにいられるかというとそうとは思えない。追加緩和をやらなければいけないだろうし、それを他国は良くは思わないだろう」と論じた。

  マイナス金利をめぐる日本の経験は政策当局の間に波紋を広げている。ラガルドIMF専務理事は、欧州や日本がマイナス金利を導入しなければ、世界経済は「もっと悪い状態」となっていただろうと話す。しかし、IMFチーフエコノミストを務めたオリバー・ブランシャール氏は8日、マイナス金利政策は民間銀行の経営の妨げになるとして否定的な見解を示した。

  米ニューヨーク連銀のダドリー総裁は8日、米当局が追加の刺激策を講じる必要に迫られた場合、「あらゆるさまざまな理由を考えてマイナス金利導入の決定を下すことはないだろう」とし、米景気が想定外の悪化に見舞われれば、他の緩和策を用いるだろうと述べた。

  円は今年、対ドルで11%上昇し、ブルームバーグが追跡する主要16通貨で最大の上げとなっている。日本では既に積極的な刺激策が実施されてきたが、円高はディスインフレ傾向を強め、輸出の重しになるため、頭痛の種となっている。

  米ポトマック・リバー・キャピタルのマーク・スピンデル最高投資責任者(CIO)は、技術的には、金融当局は常にインフレ率を押し上げることができるはずだとした上で、「うまくいかなかった場合、何が起きるか彼らは明らかにしていない」とコメントした。

原題:BOJ’s Backfire Hangs Over Central Bankers as IMF Meetings Start(抜粋)

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