日生の三井生命TOB価格、3倍に引き上げを-海外ファンド(訂正)

訂正済み
  • 実際のTOB価格1株560円に対し、TIHTは1746円を主張
  • EVに統合のシナジー効果を上乗せして算出-TIHT

日本生命保険が昨年12月に行った三井生命保険の株式公開買い付け(TOB)をめぐり、三井生命株を保有していたシンガポールの投資会社TIHTインベストメント・ホールディングスが、「株式の買い取り価格は低すぎる」として、実際の3倍強に引き上げるよう主張する書面を東京地方裁判所に提出したことが分かった。

  ブルームバーグが入手した準備書面の要旨によると、実施されたTOBの買い取り価格1株560円に対し、TIHTの主張する公正価格は1746円。三井生命のような非上場企業に関する買収価格算定の在り方が司法判断に委ねられることになる。

  総額約3345億円で三井生命株を議決権ベースで90%以上獲得(92.16%)した日生は、改正会社法に基づき、少数株主からも強制的に株式を買い取り完全子会社化した。一方、三井生命株7.64%を保有していたTIHTはこれを不満とし、3月に適正価格の決定を東京地裁に申し立てていた。仮に司法判断で560円を上回る価格が確定した場合、日生は差額をTIHTに支払うことになる。

  TIHTの親会社、TIHの陳健会長が開示した資料によると、公正価格は三井生命が公表しているエンベディッド・バリュー(EV)7450億円に経営統合によるシナジー効果(相乗効果)など40%を上乗せした1株あたり1746円を下回らないはずと主張している。EVは純資産に内部留保や資産の含み損益を加えた修正純資産と、既存契約から将来見込まれる利益を見積もった保有契約価値を合わせたもの。

  TIHTはシンガポールで上場する投資会社TIHが55%、シンガポール政府系のテマセクホールディングスが45%出資している。

  日本生命・広報部の冨尾和矢氏は、「当社としては三井生命の株主に提示した価格は適正と考えている」と述べた。三井生命の横井博・広報グループ長は、「裁判の当事者ではないためコメントは差し控える」と話した。

配当vsキャッシュフロー

  日本生命と三井生命の財務アドバイザーの評価を踏まえて採用されたTOB価格の1株当たり560円は、被買収企業の三井生命から将来受け取る配当を現在価値に割り引いた割引配当法(DDM法)のほか、上場する第一生命保険T&Dホールディングスと比較した類似会社比較法などを基に算出された。

  これに対し、TIHTは、被買収企業が生み出す収益を基に企業価値を計る割引キャッシュフロー法(DCF法)が適切と主張。EVは既存の保険契約を対象にしたDCF法であり、生保会社の株主価値評価として最も適切だとしている。三井生命自身もEVを「企業価値を評価する有力な指標」として公表しているにもかかわらず、その半額にも満たない企業価値約3345億円を前提に取得価格を算出し、日生が株式を強制取得するのは認められないとしている。

  ブルームバーグのデータによると欧州の保険会社の株価EV倍率は仏アクサ1.13倍、伊ゼネラリ保険0.87倍であり、EVと時価総額が同程度で評価されることが多い。一方、日本は15年12月末時点で第一生命0.42倍、T&D0.45倍と低く、株価がEVと釣り合っていない。

  第一生命の渡邉光一郎社長は昨年12月のインタビューで「欧州生保ではEVが時価総額の目安になっている」とする半面、日本の保険市場が縮小しているという理由から「EVベースでは日本の個人投資家、米国の投資家もなかなか評価してくれない」と話している。

 少子高齢化で国内市場の縮小が予想される中、生保業界では買収による規模拡大を進めており、第一生命保険が14年に、米プロテクティブ生命を取得。明治安田生命保険や住友生命保険も15年に入り米生保の買収を相次ぎ発表した。日生も三井生命の他、ナショナルオーストラリア銀行傘下の生保を買収した。

(11日送信の記事で「準備書面」を「準備書面の要旨」に訂正しました.)
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE