【インサイト】Fリテイリ拡大戦略、スローダウンせねばならない理由

アジア最大のアパレルチェーン、ファーストリテイリングの株価が先週末に急落した。今期(2016年8月期)の純利益見通しを前回予想の1100億円から600億円に引き下げたことが響いたのだが、考えられる下方修正の理由の一つは、実は朗報かもしれない。

  同社の最新発表のキャッシュフローから判断すると、店舗開設のための投資は減少傾向。成長減速と不満に思う株主もいるかもしれないが、これは望ましい。ユニクロのブランドで知られる同社は店舗の増やし方が少々速過ぎたからだ。

  店舗開設ペースのヒントになるリースの敷金投資は上期(15年9月-16年2月)に半分に減った。実物の店舗網を広げる投資を縮小するのは、消費者行動の変化やリース関連の会計処理方法が変わる状況を考えると賢明な動きだ。

  ただし、社内から聞こえてくる内容は店舗数の伸び加速を示す。柳井正会長兼社長は中国で年100店舗をオープンする計画を掲げており、店舗数を現在の436から3000まで引き上げるという。この方針に後退はなく、上期の店舗開設ペースは記録的だったほか、同社の予想によれば下期は一段と加速する。

  店舗開設に伴う費用が減少しているのにオープニングが加速するというこのギャップを説明する一つは、敷金が値下がりしているというものだ。これは賃貸料の下落を示唆する。小売店にとってはコスト面で歓迎すべきものだが、ショッピングモールの所有者が急速に拡大し過ぎたために空き店舗を埋めるのに苦戦しているとすれば、小売業者にとって懸念材料だ。

  実際、慎重姿勢を強めている小売企業は多い。ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)の投資家向け広報(IR)責任者のニルス・ヴィンゲ氏は6日の電話会議で、中国と香港の状況は「かなり厳しい」と語っている。

  積極的な拡大戦略は裏目に出る可能性がある。オンライン購入前の商品チェックのためだけに店舗を利用する消費者が増えているからだ。中国がその良い例だ。国家統計局によると、14年のオンラインの小売売上高伸び率は49.7%。店舗も含む全体では12%。

  国内ユニクロ事業での上期のオンライン売上高は前年同期比28.4%増。既存店売上高は1.9%減少だった。

  Fリテイリは店舗を増やすのではなく、アップルに倣って主要都市での旗艦店に集中すべきだ。多数の店舗を抱えていれば、不採算店舗のリース契約を解約するための支払いは急激に膨らみ得る。実際、直近の決算で利益減少の半分以上が、特に米事業での店舗閉鎖や資産除去に起因していた。

  しかも、予定される会計基準の変更はFリテイリの店舗網の大きさを際立たせる内容だ。国際会計基準審議会(IASB)が1月公表した新しいリース会計基準のIFRS16では、2年を超えるリース契約は貸借対照表に計上されるファイナンス・リースと分類される。

  従って、店舗数が多い企業は貸借対照表上の資産および負債が著しく拡大することになる。その結果としての負債比率の上昇に、銀行や社債投資家は特に注目するだろう。新ルールは19年施行だが、それ以前の導入が企業には許されている。

  というわけで、Fリテイリが投資家に現在与え得る最善のニュースはペース減速だ。   

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)

原題:Fast Retailing’s Furious Expansion Needs to Slow: Gadfly(抜粋)

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