自動運転特需、飛躍狙う鳥取のセンサー会社-衝突回避で不可欠に

更新日時
  • 超音波センサーの日本セラミック、世界シェア約50%さらに拡大も
  • 創業直後TV用リモコンで急成長、自動運転にはそれを上回る期待

自動運転車用として急拡大が見込まれる超音波センサーで世界シェアの半分を握る部品メーカーが鳥取県にある。競合他社と比べてより小さな障害物を捉えることができる高精度センサーを武器に形成期の有望市場に食い込み、強固な事業基盤づくりを進めている。

  この会社は日本セラミック。鳥取市に本社を構え、センサーなどの電子部品を製造する。創業直後の1970年代にテレビ用リモコンのセンサーで急成長したが、一時的な特需とみて深入りしなかった。各社が開発を競う自動運転に使われるセンサーについては長期的に安定した需要が見込めるとみて、必要な投資をためらわない方針だ。

Shinichi Taniguchi

Source: Nippon Ceramic Co.

  日本セラミックの谷口真一社長(43)は3月30日の本社でのインタビューで、車載用焦電性超音波センサーの市場規模は過去約5年で倍以上に拡大し、本格的な自動運転の普及期に入る2020年までにさらに倍増するとみている。主力のフィリピン工場でセンサーの生産能力を「倍でもなんでも」増やす用意があると話した。投資は段階的に行い、規模は20年までに最大10億円程度を見込むという。

  超音波センサーは周辺の障害物を検知して衝突を回避する役割を担う部品で、車のバンパー周りから超音波を発信する。海外の大手サプライヤーがセンサーを内製してシステム販売しているケースを除けば、センサー単品での日本セラミックの世界シェアは9割に達するという。

テレビ用リモコンで急成長

  世界の自動車メーカーのほか、米グーグルや中国・百度など巨大IT企業も実用化に取り組む自動運転技術には欠かせない要素で、谷口社長は、今後搭載車両の比率や1台当たりの平均装着個数が増えると見込んでいる。米国では主要自動車メーカーが自動ブレーキシステムの標準装備で自主的合意に達したことなども内容次第で追い風になり得るとし、エアバッグやアンチロックブレーキシステムのような大衆車にも標準搭載される装備になるとの期待を示した。

  谷口社長は市場の急拡大が見込まれるこの分野で引き続き「ナンバーワンになりたい」と話す。競合関係にある海外電装メーカーに対しては内製からの切り替えによる採用を狙って昨年あたりからアプローチを始めるなど、さらなるシェア向上へ「できるだけのことをやっていきたい」と述べた。

Ultrasonic sensor

Source: Nippon Ceramic Co.

  水戸証券の若林恵太アナリストは、自動運転に向けて自動ブレーキなどの先進運転支援システム(ADAS)の急激な普及は「目に見えている」とし、車載用のセンサー市場は「右肩上がりにマーケットが広がっていく」と指摘。自動車産業は参入障壁が高く、日本セラミックは「現状のシェアが高いのが強み。今高いシェアを持っているとその優位性はさらに磨きがかかる」と話した。

  日本セラミックは1975年、民間企業の技術者だった故谷口義晴氏が創業。自社製の超音波センサーをリモコンに採用した三洋電機のテレビが大ヒットし、急成長した。従来方式のように室内のノイズでリモコンが誤作動することがなく、三洋以外のメーカーからも注文が殺到したが、それらを全て断り、追加投資を見送ったという。

交通標識のポールも認識

  谷口社長によると、当時は一時的なブームであり、自社方式だけが主流であり続けることは考えにくいとの判断があった。テレビ用リモコンの特需は数年で終わり、「やらなくて結果的に良かった」と話した。それとは対照的に、昨今の自動運転に向けてのセンサー需要についてはより確実な手応えを感じているとした。

  車載用の超音波センサーは、主に低速走行時に車両から比較的近い距離にある物体の検知に用いられる。車両から発信された超音波が障害物にはね返って戻ってくるまでの時間から対象との距離を算定する。

Baidu’s autonomous car

Photographer: Qilai Shen/Bloomberg

  谷口社長によると、日本セラミックのセンサーは5メートル先にある直径6センチの道路標識のポールなども認識できる。他社と比べてより「遠くて細いものを検知できる」のが強みとしている。同社が5年前ぐらいに確立させた技術で、このころから競合他社とのシェアの差が拡大してきたという。

高まる品質リスク

  従来の超音波センサーは障害物を検知しても警告音を鳴らしてドライバーに注意を促すだけだったが、今後はブレーキと連動して自動停止させるまでの役割を担う。不具合があれば事故につながる重要保安部品となり、製造メーカーとしてのリスクも大幅に高まる。

  従来はセンサーに不具合が見つかった場合、送り返された部品を解析して報告するだけで済んだが、最近は同じようなケースでも電装メーカーや自動車メーカーが顔を突き合わせて一緒に解析するようになるなど、「求められている信頼性の次元が違う。脇を締めないといけない」と谷口社長は話す。

  日本セラミックでもより高い要求水準に合わせ、不具合の原因になりやすい仕掛かり部品の工場内滞留の削減など、この数年間で作業工程の全面的な見直しを進めてきた。それだけ新規参入の障壁が高くなっているとも言えると話した。

強いところに注力

  日本セラミックは2月に発表した中期計画で、20年までに連結売上高を直近の200億円から250億円程度まで伸ばす計画を示した。年平均で4-5%の成長になる計算だが、谷口社長によると、車載用の超音波センサーではそれを上回る平均10%弱の伸びを期待している。

  中計では20年までの5年間の設備投資額を50億円としており、超音波センサーの能力増強に必要な10億円はその2割を占めることになる。14年に就任した谷口社長は、自動運転のセンサーで「もっとシェアを取りたい」と意欲を見せる一方、不採算部門の整理にも着手するなど利益率向上にも取り組んでいる。亡くなった父親が築き上げた会社の発展のため、「やらなければならないことはまだたくさんある」と話した。

  日本セラミック株は11日終値で前週末比2.2%高の1918円となり、年初来では0.2%安だった。東証株価指数(TOPIX)は年初来で17%安となっている。

(最終段落に株価情報を追加.)
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