脱デフレ疑う海外勢、年度売越額「暗黒の月曜日」迫る-日本株正念場

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昨年までの4年連続の上昇を引っ張った海外投資家が、日本株への投資姿勢を一変させている。2015年度の売越額はブラックマンデー(暗黒の月曜日)のあった1987年度以来、28年ぶりの多さで、年初来の株価下落率は主要市場の中でイタリアに次いで悪い。長期デフレからの脱却を期待した海外勢の間で疑念が芽生え、アベノミクスによる株高シナリオは正念場を迎えつつある。

  海外投資家はことしに入り3カ月連続、週間では13週連続で日本株の現物を売り越し、累計売越額は5兆127億円に達した。13週連続の売り越しは、98年以降で最長だ。この結果、15年度は7年ぶりの売り越しとなり、売越額は5兆1025億円とリーマン・ショックの08年度、バブル経済崩壊の89年度を上回り、過去最高だった87年度の6兆2122億円に迫った。

  豪AMPキャピタル・インベスターズの資産配分責任者、ネーダー・ ナイエミ氏は「日本は期待外れだ。大きな構造変化が必要だが、ほとんどがアグレッシブな金融政策。多くの人はアベノミクスを疑うようになってきた」と言う。投資家は日本の賃金上昇や設備投資、企業経営者の心理改善を期待したものの、明確な変化は見られず、「アニマルスピリットがない」と嘆く。

  4.6兆ドル(約524兆円)を運用する世界最大の資産運用会社であるブラックロックは3月、日本株の投資判断を従来の「オーバーウエート」から「ニュートラル」に引き下げた。日本銀行のマイナス金利政策の導入で市場のボラティリティが拡大し、為替の円高推移も輸出企業の業績に対しダウンサイドリスクを拡大させている、とみる。4月に入り、クレディ・スイスは判断を「ベンチマーク並み」へ下げ、シティグループは「アンダーウエート」に変更した。

  ソシエテジェネラル証券の杉原龍馬株式営業部長も、世界景気の鈍化や円高の影響で日本の景気や企業業績の先行き不透明感が広がっており、日本銀行の金融緩和政策やアベノミクスに対する期待も縮小気味と話している。ファンダメンタルズへの不安から「欧州と米国で日本のETFが売られている。売り手は年金のような投資スパンの長いところで、中長期の投資家からすると、日本株の期待値が剥落している」と指摘した。

  米国籍で日本株を投資対象とする代表的なETF、ウィズダムツリー日本ヘッジド・エクイティファンドの1投資口当たり純資産(NAV)は6日時点で40.96ドルと、昨年6月ピークの60.3ドルから32%減少。同期間のTOPIXの下落率24%よりも大きく、昨年12月以降は慢性的に資金流出の状況にある。

  日本株の年間売買代金の約7割を占める海外勢が記録的な日本株売り姿勢を見せている影響で、TOPIXの年初来パフォーマンスはマイナス17%と世界の主要株価93指数の中でイタリアに次ぐワースト2位。アベノミクス相場で上昇が始まった2012年末からの株高トレンドは、中国経済の減速や米国利上げの影響に対する懸念が強まった昨年8月以降、変調を来している。

  三井住友アセットマネジメントの石山仁チーフストラテジストは、海外投資家の売りと日本株の下落がスパイラル化している現状について「この動きが読んでいるのは日本のデフレへの逆戻り」と分析。同社の予測では、3月から生鮮食品を除くコアベースの消費者物価指数(CPI)も限りなくゼロかマイナスになるため、「消費税引き上げの悪影響が一巡し、日銀の全ての緩和策が無に帰すという世界が目の前に来ている」と話す。

  年初来の株安を助長したのは、為替市場での2月以降の急激なドル安・円高の進行だ。米国の利上げペースが緩やかになるとの観測などから円が買われやすくなっており、今月7日には1年5カ月ぶりの円高水準となる1ドル=107円台を付けた。

  4月下旬から主要な3月期決算企業の業績発表が始まり、岡三オンライン証券の伊藤嘉洋チーフストラテジストは「円高に伴う企業業績の警戒感は強まっている」と言う。日銀の企業短期経済観測調査(短観)によれば、大企業製造業の16年度の想定為替レートは1ドル=117円46銭で、大企業全産業では2%の経常減益見込み。普段なら、株価下落時には政策期待が下支えするものの、一段の円高進展で「シナリオは狂ってしまった。財政政策を打っても即効性がないということではないか」と伊藤氏は懸念を示す。

  三井住友アセットの石山氏も,雇用は改善しているが、企業業績の改善や設備投資の復調は思ったほどではなく、アベノミクスが描いていた好循環は成り立っていないとの見方だ。「新年や新年度など機関投資家のポートフォリオが変わる時期に、まず最初に日本株を売ってから見直しを始める」というのが日本株の新しいアノマリーだ、指摘。これは「日本経済やアベノミクスに対する不信の表れ」とみる。

  TOPIXは、新年度に入った4月1日に3.4%安と急落した。ことし1月は、大発会の4日から12日まで6営業日続落し、年始からの連続安記録としては過去最長を記録した。

  週明け11日の日本株は、円高による企業業績の先行き懸念が再燃し、TOPIXは一時1.9%安の1263.25と3営業日ぶりに反落する展開。立花証券の鎌田重俊企業調査部長は、需給面では「マーケット支配力の強い海外投資家の売りが先行してしまうと、信託銀行や個人が押し目を買っても株価は厳しい」と指摘。株価純資産倍率(PBR)の低下などバリュエーション面を考慮すれば、下値抵抗力が強まってくる状況にあるが、短期的に弱気心理が強まった場合、2月12日に付けたことしの安値1193.85を下回る可能性もある、との見方を示した。

(最終段落にきょうの日本株動向を追記します.)
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