7&iHD鈴木会長83歳で引退へ、人事案否決で-セブン育ての親

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  • 退任日や公認は未定、次男を後継に据える考えは否定
  • コーポレート・ガバナンスが進化を遂げた-ローブ氏

セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長兼最高経営責任者(CEO)が7日、退任の意向を明らかにした。同日午前に開かれた取締役会で人事案が否決され、決意した。20年以上にわたり陣頭指揮を執り、セブン-イレブンを世界最大の小売りチェーンに育て上げた経営者が一線から退く。

  「ここで引退を決意した」-。鈴木会長(83)は7日夕方、取締役会での決定がきっかけだったと都内の会見で述べた。自ら策定した子会社セブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長の退任人事案の採決が取締役会で行われ、15人の取締役のうち賛成が7票で、可決に必要な過半数に届かなかった。反対は6票、白票は2票。同会後にHDの村田紀敏社長らに辞意を伝えたという。近くあらためて取締役会を開くが、自らは「新体制に立候補するつもりはない」と述べた。退任日や後任は未定。

  鈴木氏は高度経済成長期から安定成長期に移行する時代にセブンを創業。流通の主役をスーパーマーケットからコンビニへと変えた時代の先導役として、少子高齢化、ネット社会など、次々に新たな課題に立ち向かい、かじを取り続けた。7&iHDは5期連続で最高益を更新している。

Toshifumi Suzuki at Thursday’s press conference.

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

物言う株主の懸念

  物言う株主として知られるダニエル・ローブ氏は同社人事への懸念を書簡で表明していた。同氏は鈴木氏が自らの次男を後継に据えようとする世襲の動きに警告を発し、井阪氏がHDを率いる候補者の最右翼であるべきだと主張していた。鈴木氏は7日の会見で、現在HDの最高情報責任者(CIO)を務める次男の康弘氏を後継に据える考えを否定した。

  ローブ氏は7日夜、コメントを発表。7&iHD「取締役会の皆様が、実績と株主の最善の利益に基づき選考」し、うれしいと述べた。「日本の将来にコミットしております投資家」として「コーポレート・ガバナンスが安倍首相が進める第3の矢に沿って進化を遂げた大変喜ばしく」思うとした。

  7&iHD株は7日午前の取引で一時、前日終値比8.6%安となり、2011年3月以来の日中下落率となった。人事案が否決されたと伝わってからの午後の取引は午前の引値から上昇して始まり、鈴木氏が退任の意向と報じられるとさらに上げ、同1.6%安の4489円まで戻して取引を終了した。

  JPモルガン証券の村田大郎アナリストは「業績好調のセブン-イレブンのトップを変えるのは理由、背景など、はたから見たら理解できない。よく分からない提案が否決されたことをマーケットはポジティブに捉えている」と指摘する。

  株価は8日の取引で一時同1.7%高となり反発している。午前9時25分現在、同1.4%高の4551円で取引されている。

創業者との関係

  セブンCEOも務める鈴木氏は、井阪氏のセブン最高執行責任者(COO)としての手腕に不満だったという。しかし会見に同席した村田社長は、創業者で大株主の伊藤雅俊名誉会長から井阪氏の人事案について賛同を得られなかったことを明らかにした。鈴木氏は「伊藤氏との関係はこれまでずっと良好だったが、ここにきて急きょ変わった」と述べ、理由について「世代が変わった」と話すにとどめ、詳細は語らなかった。鈴木氏はこれまで人事案を拒否されたことはなかったという。

  7&iHDは7日の取引終了後に16年2月期の決算を発表。営業利益は前の期比2.6%増の3523億円となり、市場予想の3943億円には及ばなかったものの、過去最高益を更新した。コンビニエンスストア事業の営業利益は前年同期比10%増の3041億円だった。1月時点の会社見通しは3020億円。既存店売り上げ伸び率は12年8月以来、43カ月連続でプラスを記録した。

  JPモルガンの村田アナリストは「長年のリーダー不在でどうなるのかという不透明感は残るが、世代交代、若返り、風通しがよくなるという意味で前向きにとらえる人が多いだろう」と話す。「外国人投資家から見た日本企業のコーポレートガバナンス向上のいい一例になる」と述べた。

流通の慣例破り

  鈴木氏はイトーヨーカ堂の社員として1974年、当時北米で展開していたセブン-イレブンを日本に持ち込み東京・豊洲に開店。本人の著書「売る力」によると、国内小売店のほとんどが小規模の家族経営かスーパーマーケットだった時代に、当時としては異例だった24時間経営や年中無休を始めた。また小口配送や異なる製造元による共同配送などで流通の慣例を打ち破りながら、コンビニエンスストアという業態で世界最大の小売りチェーンを築き上げた。

  「セブン-イレブンの名前は米国から持ってきたが、中身は全部日本で作った」と鈴木氏はブルームバーグのインタビューで述べていた。「よそのまねをすることは全くなかった。だから独自なものができた」という。インタビューは13年5月に行われた。

  米南部テキサス州ダラスで1927年に氷の小売店として始まった本家のセブン-イレブンは、運営する米サウスランドが90年に経営破綻し、イトーヨーカ堂が91年に子会社化した。

(ローブ氏のコメントを第5段落に加えます.)
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