元日本銀行副総裁の岩田一政・日本経済研究センター理事長は、2017年半ばまでに長期国債の買い入れは限界を迎えるとした上で、日銀の次のステップはマイナス金利の拡大になるとの見方を示した。

  岩田氏は4日のインタビューで、物価見通しについて「全体としてインフレ期待が弱まっている」と述べた上で、黒田東彦総裁の任期である2018年4月までに2%物価目標を達成することは「今の景気局面や世界経済情勢を踏まえると、厳しさが増している」と指摘、任期中の達成は困難との見方を示した。

  4月末の金融政策決定会合については「1月にマイナス金利を導入したばかりで、その効果が浸透するのを見届ける時期ではないか」と述べ、現状維持を予想する。もっとも、内外景気の悪化により期待インフレが一段と低下すれば追加緩和すべきだと主張した。手段としては、長期国債の買い入れ拡大には「限界がある」ため、現在0.1%のマイナス金利を「将来的にはさらに引き下げることになるだろう」と述べた。

   岩田氏が追加緩和の判断として特に注目しているのは、インフレ期待がどこまで下がるかだ。物価連動債で測った指標(BEI)やインフレーション・スワップレートで測った指標などを見ると、インフレ期待は「0.2-0.3%と0%近傍をふらふらしている」と指摘。岩田氏は、インフレを加速も減速もさせない自然利子率を0.7%と試算しており、インフレ期待が仮に0%になれば、マイナス金利を1%程度まで下げないとデフレに戻るリスクが内在していると述べた。

  その場合、一気にマイナス1%まで下げるのがめどになるか、との質問に岩田氏は「そのように個人的には考えている」と述べた。岩田氏は5日、1%の下げ幅が「最終的に」一つのめどになると補足説明した。

量は限界

  日銀は生鮮食品を除くコア消費者物価指数(CPI)の前年比が17年度前半ごろ物価目標である2%程度に達するとしており、黒田総裁は早期実現のために必要であれば何でもやるという姿勢を繰り返し表明している。

  日銀は量的・質的緩和の下で大量の長期国債を買い入れているが、岩田氏は17年半ばには限界が来るとみている。日銀が昨年12月に導入した量的・質的金融緩和の補完措置を考慮しても「結論は変わらない」という。理由の一つは、金融機関には担保として保有したい国債があり、機関投資家もそれぞれ最適な資産構成があることから、「それを越えて日銀に売ることはなかなか難しくなるのではないか」という点だ。

  もう1つの理由は日銀の財務だ。日銀は長期国債をオーバーパー(償還時に戻ってくる元本を上回る価格)で買っている。日銀は今年グロスで120兆円の長期国債を買うが、岩田氏は「仮に元本100円の国債を103円で買ったとすると、トータルで3.6兆円のロスが出る」と指摘、「われわれの計算では、量的・質的緩和導入後の3年間ですでに8兆円のロスが出ている」という。

  日銀は償却原価法という会計基準を採用しており、元本を上回る部分を償還までに毎年均等に償却している。岩田氏は「日銀保有国債の平均残存期間は8年程度なので、毎年1兆円くらいの償却負担が発生している」と指摘、長期国債からの収入が14年度で1兆円しかなく、マイナス金利の下で年120兆円買い増していく中で、「国債のオペで生じる償却負担があまりに大きくなれば、赤字になる可能性が高まる」と語った。

消費税、単なる延期は信認失うリスク

  消費増税延期の布石との見方も出ている政府の国際金融経済分析会合にも講師として呼ばれた岩田氏。会合では消費増税をめぐる質問を受けなかったというが、インタビューでは「消費増税は必要」と明言。ただその時期は「最終的には政治的な判断」と述べた。

  来年4月に10%への消費増税を予定通り実施することの是非について岩田氏は、5月26、27日の伊勢志摩サミット前後には「方針を固める必要がある」と発言。前回延期を決断した時と同じ根拠が該当する場合は今回も「延ばしてもおかしくない」と話す一方、単に延期した場合には「財政のクレディビリティーが失われるリスクがある」と指摘した。

  岩田氏は、10%への消費増税を決めた3党合意は「政治的な合意」で、「背後に立ち入った分析がないから、なかなかうまくいかない」と批判した。社会保障制度や税制について「抜本的な改革の道筋をどう考えるのかということが一番求められている」と指摘し、「それをクリアしない限りは消費増税に反対する人が多いし、経済の状況を見てということになったら実現はほとんど不可能になってくる」と語った。

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