鴻海傘下のシャープ、これから試される郭会長の経営再建手腕

  • 郭会長は「課題甘く見ず」、高橋社長はブランドと雇用の維持強調
  • シャープの大阪本社ビルを買い戻したい-鴻海副総裁

台湾の鴻海精密工業シャープは買収契約に調印し、シャープの100年以上にわたる独立経営に終止符が打たれることが正式に決まった。鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)会長がシャープ再建の指揮を執ることになるが、数年にわたって経営の混乱が続いたシャープの再建には、買収交渉よりも困難な道のりが待ち受けている。

  郭会長は2日に大阪府堺市で行われた記者会見で「シャープが技術のイノベーター、リーダーとして果たしてきた役割を尊敬する」と話し、次世代の液晶技術や有機ELなどに投資することで早期に収支改善を図りたいと述べた。ただ「この戦略投資の課題を甘く見ることはない」とし、再建計画の詳細については明らかにしなかった。シャープの高橋興三社長は合意が「事業拡大と財務体質の改善に寄与」すると述べた上で、シャープのブランド、雇用、企業としての一体性は維持されると語った。

  高橋社長が強調したようにシャープは買収に関し、経営の独立性や従業員の雇用維持といった条件を付けた。政府系ファンドの産業革新機構と買収をめぐって争う中で、鴻海はシャープの求めた条件に応じた。だが経営状況に改善の兆しが見えない中、鴻海が約束を守れるかは不透明だとの指摘が出ている。

  「合意の文言は、鴻海がシャープ再建のためにできることをかなり限定しており、徹底的な構造改革の機会を妨げるようにみえる」とサンフォード・C・バーンスティーンのアナリスト、アルベルト・モエル氏は電話取材に述べた。経営再建へ向け「新しい人を経営トップにし、会社の構造を変革する必要がある。そのためには、何人かには会社を去ってもらう必要があるだろう」という。

コミットメント

  シャープは3月30日の発表で、鴻海から経営の独立性や一体性の維持、雇用の維持などについて鴻海から「力強いコミットメントが得られた」とした。鴻海はシャープが第三者割当で発行する新株を総額約3888億円で取得し、全体の66%を保有する筆頭株主となる。

  出資額は、2月に発表された当初の予定から約1000億円減額となったが、携帯電話の画面に使う有機ELの技術開発や設備投資の金額は2000億円のままで維持された。一方、普通社債の償還に使うとされていた300億円は調達資金の使途から除外され、インターネットにつないだ製品や車載分野での新規開発に投入する金額は減少した。また太陽光発電などエネルギーソリューション事業の構造改革については、再編や処分を条件付きで認める文言が盛り込まれた。

  野村証券の岡崎優アナリストは30日付リポートで、シャープが「現状の事業ポートフォリオをおおむね維持した形での経営再建を目指すことが明確になった」と記載した。また「調達資金の7割近くを占める大規模な投資を敢行することで、当面はディスプレイ事業を主力とした成長を図っていく狙いと考えられる」と分析している。

万が一

  鴻海が取得する新株の払い込み期間は10月5日まで。郭会長は会見で、再び出資額を減らす可能性については強く否定した。契約には、シャープ側の原因で取引が成立しなかった場合、鴻海は3カ月間、シャープのディスプレー事業を購入する権利を持つという条件があるが、郭会長は「万が一のために文言として入っている」と述べ、買収は100%に近い確率で成功すると話した。

  鴻海の戴正呉副総裁は、ニトリに売却したシャープの大阪本社を来期に買い戻したいと語った。また買い戻しが難しい場合は、隣にビルを建設し、最高層階にはシャープの創業者である早川徳次氏の「博物館を作りたい」と語り、買収されるシャープへの配慮を見せた。戴副総裁は日本語で話した。

  「イノベーションのDNAがあるから、私はシャープが大好きだ」、「シャープが再びグローバルなブランドになれるようサポートしていく」。会見では郭会長もシャープの技術や歴史を称える言葉を重ねたが、経営危機に至った理由の分析や今後の方針についての具体的な言及はなかった。一代で世界的な巨大企業を作り上げた郭会長の手腕が、シャープ再建にどのように生かされるかは、これから問われることになる。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE