黒田異次元緩和が4年目突入、逃げ水の物価目標、円安・株高も反転

  • 景況感もバズーカ直後に逆戻り、アベノミクス効果は減衰と宮前氏
  • 4月会合で追加緩和の観測も-2%達成時期先送りなら4回目

日本銀行の異次元緩和が4年目に突入する。為替、株価には導入当初とは一転、逆風が吹く。世界経済の不透明感は高まり2%の物価目標実現のめどは立っていない。1月に日本初のマイナス金利導入を決めたばかりだが、4月の金融政策決定会合を前に追加緩和観測が高まっている。

  この3年間を振り返ると、異次元緩和は明らかに円安をもたらし株価を押し上げる結果を生んだが、このところ反転傾向が鮮明になっている。

  日銀が目標としている生鮮食品を除く消費者物価の前年比上昇率は、一時1.5%まで上昇したが、足元でゼロ%に戻った。

  日銀が物価目標実現の鍵としている予想物価上昇率の低迷も鮮明だ。予想物価上昇率を示す指標の1つとして日銀が注目していた春闘も期待外れに終わった。東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは3月25日のリポートで、「ベースアップは昨年対比でほぼ半分程度に抑制されているもようだ」と指摘した。

  内閣府の2月の消費動向調査でも、1年後の物価見通しが「上昇する」との回答は4カ月連続で低下。日銀は、経済・物価情勢の展望(展望リポート)の図表で、物価が「上昇する」と答えた比率から「低下する」と答えた比率を引いたDIを示しているが、これも量的・質的金融緩和の導入直前の13年3月以来の水準に低下した。

  経済成長率に目を転じると、第2次安倍晋三政権が発足した2012年12月以降、国内総生産(GDP)は名目5%以上成長した。しかし、そのペースは他の主要国よりも緩やかだ。

  経済の実力である潜在成長率も一向に高まっていない。日銀は量的・質的緩和導入直後の展望リポートで、潜在成長率は15年度までの「見通し期間の終盤にかけて徐々に上昇していく」としたが、今年1月の展望リポートでは「このところ『0%台前半ないし半ば程度』」とむしろ低下。1-3月の実質GDP成長率は2期連続のマイナスを予想する声も多い。

  1日発表の日銀企業短期経済観測調査(短観)で、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス6と昨年12月の前回調査から6ポイント悪化するなど、企業の規模、業種にかかわらず景況感が悪化した。中国をはじめ新興国経済の減速や円高の進行により、企業は慎重な見方を強めている。短観の結果を受けて日経平均株価は4日続落し、下げ幅は一時600円を越えた。

  SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは短観発表後のリポートで、「アベノミクス開始・異次元緩和導入後の13年6月調査以降、大企業・製造業DI はプラス圏が続いているものの、水準自体はここにきて急速に落ちており、一けた台となったのはまさにその13年6月調査以来だ。アベノミクス効果が減衰していると言えよう」と指摘した。

  日銀は1月、「企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大している」として、日本で初のマイナス金利の導入を決定した。黒田東彦総裁は3月7日の講演で、マイナス金利導入により、「金融市場の一部には量的・質的金融緩和は、これ以上の拡張は無理ではないか、限界ではないかという声があったが、完全に払しょくされたと思う」と述べた。

  しかし、第一生命経済研究所の嶌峰義清首席エコノミストは3月28日のリポートで、「成長期待が喪失しかかっている上、インフレ期待も後退している状況では、日銀が期待しているような効果は得られない。賃上げも限定的で、円安などでインフレ環境を作り出すことは実質賃金の低下を招き、弊害が大きい。金融政策はデフレ脱却のために必要なことを行っているが、限界に達している」と指摘した。

  とはいえ、追加緩和期待は沈静化していない。1つには、黒田総裁が「2%の物価安定の目標の実現のために、できることは何でもやる」という姿勢を変えてないことがある。JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストはブルームバーグが3月に行った調査で、「市場が無理と言えば言うほど、大胆さを示してくるのではないか」と指摘した。

手段乏しいのに緩和圧力続く悪循環

  日銀は27、28日に金融政策決定会合を開き、新たな展望リポートをまとめる。1月展望リポートで2%達成時期を「16年度後半」から「17年度前半」に先送りしたばかりだが、世界経済の減速や為替円高の影響で2%目標のさらなる先送りを迫られるとの見方も緩和期待を強めている。4月展望リポートで2%達成時期のさらなる先送りが行われれば、過去1年で4回目となる。

  岡三証券の愛宕伸康チーフエコノミストは3月22日のリポートで、「4月展望リポートで実質GDP成長率および消費者物価の大勢見通しが下方修正となるのはほぼ確実な情勢」とした上で、4月会合での追加緩和を見込んでいる。

  宮前氏は「物価目標期限の2年程度は既に経過したが、『できるだけ早期に達成』との看板を下ろせず、強気過ぎる目標を掲げては下方修正するパターンが長らく続いている。日銀に有効な手段に乏しいのに緩和圧力が掛かり続けるという悪循環に陥っている」としている。 

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE