電力会社の切り替えで卸取引活性化にも期待、料金も市場連動へ

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  • 一般家庭の電力会社切り替え申請は1%、大口需要家で約8%
  • 海外事例から容量確保に課題も、17年には節電市場創設へ

20兆円規模の国内電力小売り市場が1日、全面的に自由化された。2000年に始まった自由化で、残る約4割にあたる一般家庭などが自由化されたことによって、全ての顧客は自由に電力会社を選べるようになった。電力を融通する卸電力市場の活性化も期待されており、将来的には電気料金の市場連動につながる可能性もある。

  日本卸電力取引所企画業務部の田村浩二次長は、「新電力にどれだけ電力需要が流れるかで、取引所を活用するニーズが生まれる」と説明する。14年度の取引所のスポット取引は、国内総需要のわずか1.5%。北欧などではスポット取引が8割を超えるなど、自由化が先行する欧米諸国とは大きな隔たりがある。その結果、国内大手電力会社にとって卸価格の変動は、「誤差の範囲」にとどまってきたという。

  電力広域的運用推進機関によると、全国の電力需要は25年度まで年平均0.5%増えると予想されている。その結果、市場縮小や飽和状態にある都市ガスや石油、通信市場から収益機会を求めて新電力として参入。電気料金の引き下げで、電力使用量の多い優良顧客を中心に、大手電力からの顧客の切り崩しを狙っている。

  今回、自由化対象となった一般家庭のうち、電力会社の切り替えを申請しているのはまだ1%に満たない。全体の6割にあたる自由化済みの工場やオフィスビルなどの大口消費者のうち、切り替えたのは約8%。今後、欧米市場のように取引所を通じた取引の量が増えてくれば、電力各社の電気料金に影響を与える可能性もある。

  東北電力企画部部長の土方薫氏は、「電力市場が活発化して、われわれの料金メニューより市場の方が安かったらわれわれから電気を買ってくれる人がいなくなる」とし、「一度市場ができ始めると皆が引っ張られる力が働く」と指摘。新電力のF-Powerが発表したような市場連動型の電力料金メニューが人気を集めれば、他社も追随せざるを得なくなり、結果として市場の活性化につながるとの見方を示した。

自由化で料金は下がらない?

  日本エネルギー経済研究所(IEEJ)の豊田正和理事長は、先行する欧米の事例から、自由化とはスポット市場との価格の連動を意味すると説明する。一般的に自由化と言えば、電力会社間の競争によって料金低下が期待されているものの、欧米諸国では自由化後の電気料金は燃料価格に左右され、自由化で電気料金が下がったということは証明されていないという。

  政府は、スポット価格のつり上げを防ぐため、電力会社に対して発電所の運営コストで入札価格を出すことを求めている。コストが安い順に入札価格を並べ、必要量に達した地点の入札価格がスポットの約定価格となる。つまり需要の変動に応じて発電量を変えられるガス火力発電や、ピーク時に稼働させる石油火力発電の燃料費で決まるケースが多い。

  この結果、運営コストが安い再生可能エネルギーや原子力、石炭火力などを保有する電力会社ほど利益を出しやすくなる。一方で、稼働率の上げられない火力発電所では投資回収が進まず、英国やドイツでは火力発電所の閉鎖が相次ぎ、発電容量不足に陥っている。学習院大学の南部鶴彦名誉教授は、容量不足に加え、原子力発電や再生可能エネルギーをめぐる問題はいずれも「現在のシステム改革では解決不可能」だと指摘する。

  事実、政府は欧米が自由化市場で直面している容量不足の問題を未然に防ぐため、英国やフランス、ドイツの事例を研究し、容量を確保するための仕組みの検討を始めた。加えて、需要削減で容量不足を乗り切るため、17年に電力会社の要請に応じて節電した企業や家庭に報奨金を支払う「ネガワット取引」(節電市場)を開始する方針だ。自由競争によって生じた電力市場のほころびを補おうと各国で政府関与が強まっており、日本政府も先回りした対応を進めている。

(第5段落に東北電力のコメントを追加します.)
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