手厚い支援が「やる気そぐ」、女性支援は転換期-推進法きょう施行

  • 企業の行動計画の開示義務、女性管理職率30%に引き上げ目指す
  • 支援制度の転換に抵抗感、女性の意識が追いついていない面も

福島京子さん(41歳)は1997年、改正育児・介護休業法が制定された年に大手総合商社に入社した。難関大学を卒業し英語も堪能。面接では、将来は経営に携わりたいと述べた。しかし、約20年後の今は2人の子供を育てる専業主婦だ。

  「差別というよりは、優遇されていたと思う」と福島さんは、入社後の仕事を振り返る。男性の同僚と一緒に徹夜で仕事をしたり、海外出張も経験した。結婚をすると夫を大事にするようにと、無理な残業を強いられなくなり、子供が生まれると保育園の迎え時間に帰ることができた。しかし、2人目の子供の育児休暇から戻ると、「いつの間にか事務作業以外は任せてもらえなくなっていた」という。夫の転勤もあり、入社から10年で退職をした。

  女性の活用を政策のに掲げる安倍晋三政権。4月1日に施行された女性活躍推進法は、従業員301人以上の企業に女性管理職比率や労働時間の状況を分析し、行動計画を策定するよう求めたもので、その公表を義務付けた。政府は2020年までに管理職の女性比率を30%に引き上げる目標を掲げる。

  推進法の背景には、これまでの女性支援制度が成果を上げていない状況がある。85年の男女雇用機会均等法以来、育児や介護休業法と合わせて改正を重ね、女性の育児休暇取得率は13年に7割強となったが、民間企業の管理職に占める女性の割合は14年で9.2%と低い水準にある。

「これまで勘違い」

  「これまでの日本企業は、仕事を免除してあげることが女性の活躍につながると勘違いをしていた。このままでは女性管理職の増加には絶対につながらない」。女性活躍の推進をする21世紀職業財団の岩田喜美枝会長は、むしろ仕事を多くできる環境を整備すべきだという。

  これまで手厚かった制度を変えることに抵抗を感じる人もいる。女性の従業員比率が8割を超え、90年代から育休制度を導入するなど両立支援の先駆けでもある資生堂では昨年、従来制度を見直し、店舗で接客をする美容部員に対し夕方の時間帯や週末の勤務をしてもらうと伝えた。子育てや家事に充てたい時間だが、売り場では客が集中する時間。成果を上げれば昇進にもつながるとの狙いだった。

  この方針を日本放送協会は「資生堂ショック」として報じ、ツイッターは「女性に優しい企業の限界」などの言葉で炎上した。資生堂の本多由紀人事部長は、こうした反応は予測の範囲内だったと話す。当初は戸惑いが見られた社員も、職場ごとに狙いを説明しキャリア形成を考えてほしいと伝えたことで納得し、今は、過去の新制度導入時と比べても「最も理解が得られている」状態だという。

  本多氏は、子育て中の社員の中にはキャリアを追求したいのにいつの間にか重要な仕事を任せられなくなるというケースもあり、「配慮のしすぎがやる気をそいでしまうこともある」と指摘する。課題はこうした人材を次世代の経営が担えるように育成することだと語った。

職場復帰後の配慮

  一方で男性中心の国内企業の大半では、女性管理職を増やす方法を模索中だ。自動車メーカーのホンダは管理職の女性比率が0.7%で、国内企業平均を大幅に下回る。昨年から役員26人が職場ごとに多様化について話し合う機会を計45回設け、意見交換を行ってきた。

Mutsuko Kogo

Photographer: Yuki Hagiwara/Bloomberg

  多様化推進室の向後睦子室長によると、育休後に職場復帰した女性社員に対し、上司は仕事をさせないのが良いと思い込んでしまうこともあり、「優しい配慮が無意識のバイアス」になっていることもあると指摘する。14年から女性のキャリア形成の課題に取り組むホンダは、16年度から時短勤務の代わりに在宅勤務を可能にするなど柔軟な対応をとる。20年度に女性管理職数を14年度比で3倍、25年度に同9倍にする計画だ。

  ただ、女性側のキャリアに対する意識が追いついていない面もある。ソニー生命保険の有職女性を対象とした調査では、「管理職への打診があれば受けてみたい」という問いに対し、「全くそう思わない」と「あまりそう思わない」と回答した人は54%に上る。また3人に1人が「本当は専業主婦になりたい」と答えている。

女性を「本気」で使う

  21世紀職業財団の岩田氏は、こうした意識を「夢みたいなことを考えないでほしい」と話す。「女性だけがそこそこの働き方でいいと認めるのは、企業から見たらあり得ない」とした上で、「従来はそれが良いことと思っていたかもしれないが、それは女性を本気で使おうと思っていないから」と指摘する。

  仕事を辞め、子育てに専念することを選んだ福島さんは、今でも当時の職場の配慮がありがたかったと感じているという。女性活躍推進法については、今年の春、友人2人が子供を保育園に預けられず仕事を辞めたことに触れ、「これまでも政府は何度もかけ声をかけてきたけど、あまり変わらなかった」と述べ、懐疑的な見方を示した。

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