短観:大企業製造業DI悪化、異次元緩和直後の水準-新興国減速

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  • 2016年度の大企業・全産業の設備投資計画は0.9%減
  • 想定為替レートは1ドル=117.46円と前年度から円高方向に修正

日本銀行の企業短期経済観測調査(短観、3月調査)は、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)が2期ぶりに悪化、異次元緩和開始直後の水準に低下した。世界経済の先行き不透明感に加え、円高進行で企業は慎重な見方を強めている。

  景気が「良い」と答えた割合から「悪い」と答えた割合を引いたDIは大企業・製造業がプラス6と昨年12月の前回調査から6ポイント悪化した。異次元緩和直後の2013年6月(プラス4)以来の低水準。日銀が1日発表した。非製造業はプラス22と3ポイント下がり6期ぶりの悪化。ブルームバーグ調査の予想は製造業がプラス8、非製造業がプラス24だった。先行きは製造業がプラス3、非製造業はプラス17と一段の悪化を見込んでいる。

  日銀は1月29日の金融政策決定会合でマイナス金利の導入を決定したが、今回の短観では企業の景況感が慎重さを増していることが示され、マイナス金利の好影響は確認されなかった。27、28日には決定会合を開く。国際通貨基金(IMF)は中国減速や原油安で世界経済が成長路線から外れるリスクが増しているとしており、4月に世界成長率予想をさらに引き下げる可能性が高い。

  ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦チーフエコノミストは「業況判断の現状DIがほぼ全面的に市場予測以上に悪化した。加えて、先行きDIも悪化見通しが多く、企業マインドの回復が見通せない状況となっている。政府・日銀が期待する賃上げや設備投資には強い逆風が吹いている」とリポートに記した。

16年度の設備投資

  日銀調査統計局の中山興経済統計課長は記者説明で「中国など新興国経済の減速の影響が輸出依存度の高い大企業、製造業ほど大きく出ている。インバウンド観光の伸びが鈍化していることが、これまでその恩恵を受けてきた非製造業・大企業に影響が大きく出ている」と述べた。

  中小企業の景況感も悪化しており、大企業、中小企業の製造業、非製造業のDIが足元、先行きとも悪化したのは、消費増税の実施直後の2014年6月以来。黒田東彦総裁が量的・質的金融緩和を開始して4日で4年経つが、2%の物価目標はなお遠く、大企業・製造業の景況感がその開始直後まで悪化するなど、日本経済は強い逆風に直面している。

  今回調査対象となった16年度の大企業・全産業の設備投資計画は前年度比0.9%減と、市場の事前予測(0.7%減)とほぼ同水準だった。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「例年のパターンに沿った動きであり、意外感はない」としながらも、「15年度に続いて16年度も企業収益は下方修正含みであることに鑑みると、設備投資にまつわるリスクはダウンサイドにある」としている。

A foundry in Kawaguchi, Saitama Prefecture

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  中小企業の業況判断DIは、製造業がマイナス4と4ポイント悪化。非製造業はプラス4と1ポイント悪化した。先行きはそれぞれマイナス6、マイナス3と悪化を見込んでいる。

  16年度の想定為替レートは1ドル=117円46銭、上期117円45銭、下期117円46銭。今回の短観の回答期間は2月25日-3月31日。調査対象企業は1万930社で回答率は99.4%。短観発表直後の円相場は1ドル=112円45銭程度で取引されている。

円高圧力強まれば追加緩和へ

  日銀は27、28日に金融政策決定会合を開き、経済・物価情勢の展望(展望リポート)をまとめる。マイナス金利の導入を決定した1月29日に公表した前回展望リポートでは、2016年度の生鮮食品を除くコア消費者物価(CPI)前年比の見通し(委員の中央値)を1.4%上昇から0.8%上昇に下方修正し、2%に達する時期を「16年度後半」から「17年度前半」に先送りした。

  3月25日発表されたコアCPIは2カ月連続で前年比横ばい。日銀が物価の基調を見る上で重視するエネルギーと生鮮食品を除く、いわゆる日銀版コアCPIも2カ月連続で1.1%上昇と頭打ち感が出ている。4月展望リポートで2%達成時期のさらなる先送りが行われれば、過去1年で4回目となり、このタイミングで追加緩和を予想する声も強い。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは3月24日付のリポートで、「日銀は1月末にマイナス金利の導入に踏み切り、追加緩和も辞さない構えである。今回の短観の結果自体が追加緩和のトリガーとなる可能性は低いが、国際金融市場が再び動揺し、円高圧力が高まれば、日銀は追加緩和に踏み切るだろう」としている。

(3段落以降に発表内容とコメントを追加して更新します.)
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