鴻海のシャープ買収、1000億円減額でも割高との見方

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  • 買収額と利益の比較は他の電機メーカーの買収事例を上回る
  • 出資額は総額約3888億円と、当初予定から減額

台湾の鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)会長は、経営再建中のシャープへの出資額を当初の予定から約1000億円減額することに成功した。ただシャープ再建への道筋は険しく、現時点でも割高だという見方もある。

  30日の発表によると、鴻海はシャープが第三者割当で発行する新株を総額約3888億円で取得し、全体の66%を保有する筆頭株主となる。2月の発表時点の出資額は4890億円だったが、将来に負債となる恐れのある潜在的リスクの評価を含む経営状況などを考慮して減額した。新株のうち普通株の発行価格は1株88円と30日の終値の135円を35%下回る。

  ブルームバーグのデータによれば、シャープの買収額は昨年12月までの1年間の同社のEBITDA(利払い・税金・減価償却・償却控除前利益)の16.3倍。過去3年間の世界の、電機メーカーの買収の中央値である12.1倍を上回る。

  サンフォード・C・バーンスティーンのアナリスト、アルベルト・モエル氏は「出資額は少なくなったが、厄介な問題がなくなったわけではない」と30日付リポートで指摘した。「シャープの現在の収益性とバランスシート、再建する上での制約などを考えると、鴻海は割高な買収を行おうとしている可能性が高い」という。

条件変更

  また、シャープへの出資以外にも鴻海の支出が膨らむ可能性もある。関係者によれば、鴻海はシャープの主要取引銀行のみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が保有する優先株のそれぞれ半数を、将来的に総額1000億円で買い取る予定。銀行保有の優先株買い取りについては、2月の発表で明らかになっていたが、30日の発表文では言及がなかった。

  業績についても改善の兆しが見えておらず、シャープは、今期(2016年3月期)の営業損益を1700億円の赤字と予想し、従来の100億円の黒字から大幅に下方修正した。液晶パネルの販売不振や価格下落に伴う在庫評価減の計上などが理由だ。

  一方、シャープの売上高に着目した場合、今回の買収は割安という見方もできる。ブルームバーグのデータによると、買収額は昨年12月までの1年間の同社の売上高の0.36倍。過去3年間の世界の電機メーカーの買収の中央値である0.81倍を下回る。

  しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は、今後も「状況に応じて条件は変わってくる」と予想する。「買うだけでは意味がなく、成長しなくてはいけない」とした上で、「シナジーが出れば投資を増やすこともある」という見方を示した。

(第4段落以降にアナリストコメントや詳細を追加しました.)
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