ドル・円下落、米利上げ観測後退と株安で112円台前半-米指標に注目

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  • 一時112円22銭と1週間ぶりの水準までドル売り・円買いが進行
  • 目先はここからドルを売っていく状況にはない-三井住友銀の呉田氏

30日の東京外国為替市場ではドル売り・円買いが優勢となった。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が利上げへの慎重姿勢を示したことがドルの重しとなった上、日本株の下落を背景にリスク回避の連想から円買い圧力がかかった。

  ドル・円相場は1ドル=112円台後半から一時112円22銭と1週間ぶりの水準までドル安・円高が進行。午後3時25分現在は112円39銭前後となっている。ユーロ・円相場は1ユーロ=127円台前半から一時126円79銭までユーロ売り・円買いが進み、同時刻現在は126円97銭前後。一方、ユーロ・ドル相場は一時1ユーロ=1.1310ドルと、前日の海外市場で付けた18日以来のドル安値を更新した。

  三井住友銀行市場営業部為替トレーディング・グループの 呉田真二グループ長は、4月は中旬にかけてドル・円が上がりやすい季節性もあることから、115円のレジスタンスを意識した展開になる可能性があるが、米利上げがさらに後ろ倒しとなる可能性や4月会合で日銀追加緩和が行われない可能性から、月末にかけて110円割れを試す相場になっていくと予想。一方、目先は米供給管理協会(ISM)製造業景況指数や米雇用統計が注目で、「予想比上振れる可能性のある米経済指標から、ここからドルを売っていく状況にはないように感じる」と語った。

  FRBのイエレン議長は29日、ニューヨークのエコノミッククラブでの講演で、世界経済の影響でリスクが高まっているため、米金融当局が利上げを「慎重に進める」ことは適切だと指摘した。議長はまた、政策金利が再びゼロになった場合に米連邦公開市場委員会(FOMC)には政策を緩和する「かなりの余地がなおある」とし、金利に関するフォワードガイダンスや「長期証券の保有規模もしくは期間」の拡大を指摘した。議長講演を受け、29日の米国市場では株高・債券高・ドル安が進んだ。  

  30日の東京株式相場は続落。日経平均株価は下げ渋る場面も見られたが、引けにかけて下げ幅を拡大し、1.3%安で取引を終えた。

  経産省が発表した2月の鉱工業生産指数(速報値)は前月比6.2%低下となり、3カ月ぶりに上昇に転じた1月から再び低下に転じた。マイナス幅は日本大震災があった2011年3月(16.5%低下)以来の大きさとなり、市場予想(5.9%低下)を上回った。

  外為どっとコム総研の神田卓也取締役調査部長は、きのうはイエレン議長のハト派発言を受けて米株が上がり、リスクオンの流れの中で、ドル売りとともに円売りもあったが、「きょうに関しては日本株が軟調なので、その円安の部分がはげ落ちている」と説明。もっとも、米国の利上げ観測が後退すればその分世界的にはリスクオンに傾きやすくなる方向だとし、ドル・円は上も重いが下値も堅く、大きな方向感が出にくいと語った。

  ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査によれば、30日発表の3月の米ADP雇用統計で民間部門雇用者数は前月比19万5000人の増加が予想されている。2月は21万4000人増だった。4月1日には3月の米雇用統計、ISM製造業景況指数が発表される。
  
  上田ハーローマーケット企画部の山室宏之氏は、イエレン議長の発言は「G20声明で引き締めに関する文言が削除され、FOMCがハト派化した流れに対して特段に違和感の無い内容であったとも捉えられる」とした上で、市場はいったん仕切り直す形で、米労働関連市場に目が移ると指摘。米労働市場が相応の底堅さを保っているのは周知の事実であり、「ADP雇用統計が下振れした場合に、G20以降堅調推移を保っている米株式市場が引き締め先送りを背景に強含むのか、あるいは失望売りが優勢となるのかに注目したい」としている。

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