【インサイト】クレディSも罠に落ちた流動性の死のスパイラル

流動性の死のスパイラルで命を奪われる債券ファンドが増えており、スイス銀行2位のクレディ・スイス・グループも同じ罠(わな)に落ちた。

  クレディ・スイスでは、ディストレスト債をはじめとする取引頻度の少ない資産の持ち高を一部のトレーダーが最近数カ月で増やしていた。一部上級幹部には何の報告もなかった。ティージャン・ティアム最高経営責任者(CEO)が23日のブルームバーグとのテレビインタビューで明らかにした。

  これは幾つかの面でまずい出来事だ。クレディ・スイスの上級幹部によるリスク管理のかなりの不備を浮き彫りにしたのはもちろんだが、現在のクレジット市場に潜む罠を露呈させた点が、マーケットの観点から見て恐らくより重要だ。その結果として、事実上の破綻に追い込まれるヘッジファンドが増え、ウォール街トレーダーのリスク回避の動きが拡大し、大手銀行はさらなる人員削減に動いた。
  
  米金融取引業規制機構(FINRA)の債券価格報告システム「トレース」とブルームバーグがまとめたデータによれば、1兆4000億ドル(約159兆円)規模の米国のジャンク(投機的格付け)債市場では、全体の約40%の債券が今年1、2月に全く取引されなかった。社債の売買高は全般に増えているが、一部の債券に取引が集中する傾向が強まっている。

                 貧乏くじ

  こうした状況では、貧乏くじを引いて抜け出せなくなる危険があるため、かつてのようにマーケットメーク(値付け業務)という目的で、大手銀行がリスクの高い債券を購入することは、ますます正当化できなくなる。クレディ・スイスにそれが起きたようだ。

  ディストレスト債とレバレッジドローン、ローン担保証券 (CLO)を含む証券化商品の保有に伴い、同行は昨年10-12月(第4四半期)に4億9500万ドルの損失を被り、今年に入ってからも3月11日までに2億5800万ドルの評価損を計上した。

  悪いタイミングで現金化の難しい資産の保有から抜け出そうともがき、クレディ・スイスは窮地に陥った。資本規制の強化や業績低迷の不安に直面し、新たな経営トップの下でビジネスモデルを見直そうとしていた矢先だった。しかし、債券市場の厳しく容赦ない局面で痛みを負っているのは、同行だけではない。米銀JPモルガン・チェースとバンク・オブ・アメリカ(BofA)、ゴールドマン・サックス・グループも1-3月(第1四半期)のトレーディング収入は、期待外れの数字となりそうだ。

                 悪い知らせ

  ヘッジファンドのキングドン・クレジットでポートフォリオマネジャーを務めるマイケル・ポーリー氏は、「日々の流動性をもはや提供することがない資産クラスで日々の流動性を求める市場参加者が増えていることが、市場が直面する最大の問題だ」と分析する。

  これはちょっとぞっとする指摘だ。このようなトレーディングの障害が、今のところ新たな信用危機を引き起こしていないのは朗報だが、リスクの高い債券の取引がますます難しくなり、市場が一段と脆弱(ぜいじゃく)で将来的に発作が起きやすい状態に向かうしかないのは、悪い知らせと言うほかない。

  (このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)

原題:Credit Suisse Exposes Market’s Liquidity Death Spiral: Gadfly(抜粋)

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