女性国家公務員の管理職30%目標へ道のり長く-登用へあの手この手

  • 2020年の成果目標は大幅に下回る-達成は15年遅れの可能性も
  • マミーズトラックに入りキャリア育成困難-切り札は男性の育児参加

「社会のあらゆる分野において2020年までに指導的地位に女性が占める割合が30%程度になるよう期待する」。政府の男女共同参画推進本部が03年に決定した目標達成が、女性国家公務員の採用が少ないお膝元の霞が関で15年程度遅れることになりそうだ。

  内閣人事局が調べた中央省庁の女性幹部の登用状況によると、本省の課室長以上に占める女性の割合は3.5%(15年7月時点)。局長や審議官など指定職は3.0%(同年11月時点)とさらに低い。政府が昨年12月に閣議決定した第4次男女共同参画基本計画では20年度末の成果目標をそれぞれ7%、5%と当初目標を大幅に下回る水準にとどめた。

  同局の定塚由美子審議官は「30%目標をやめたわけではない。1つのマイルストーンとして目指していく。ただ、実際は達成が難しく、最大限努力してやっと手が届く数に設定した。数値目標も重要だが、どれだけ努力して引き上げられるかが重要だ」と説明する。

  第2次政権の発足当初から女性の活躍を促す「ウーマノミクス」を掲げる安倍晋三首相の掛け声のもと、15年度の国家公務員採用試験からの女性の採用割合が31.5%(前年度は26.7%)とようやく3割を超えた。これを受け、同局や人事院が旗振り役となり、各省庁で女性幹部の育成を急いでいる。

  総合職試験に合格したいわゆるキャリア官僚の場合、管理職の第一歩となる室長に就くのは40代前半、課長は40代半ば、指定職は50代前後というのが通例で、15年度の採用者が管理職に就くまで残り約20年かかり、達成は2030年代半ばになる計算だ。

初のインターンシップ

  テンプル大学現代アジア研究所のロバート・デュジャリック所長は「イギリスやフランスと日本の官僚制度の違いは、30代、40代でも責任ある仕事を任されていることだ」とした上で、「日本では年功序列で物事が決まり、有能な若い世代が何十年もつまらない仕事に甘んじている」と指摘する。

  政府がまず狙うのは女性の3割採用の維持だ。人事局は昨年、初めて女子学生霞が関インターンシップを実施。8月末から9月上旬にかけて約250人の女子学生を募集した。人事院は第一線で活躍する女性官僚の仕事ぶりを紹介するセミナーを開催しているほか、仕事と家庭を両立する支援制度のアピールにも余念がない。

  昨年、総務省で1週間、インターンとして勤務した一橋大学3年の藤田美穂さん(21)は「政府が率先して女性活躍の場を設けることで、民間企業に良い影響が広がる」としながらも、「無理やり女性を増やす必要もない。数字のために採用しているイメージが否めない」と指摘する。

エリート校出身

  多くのキャリア官僚を輩出する東京大学はじめ偏差値の高い国立大学や私立大学では、もともと女子学生の割合は低い。藤田さんが学ぶ経済学部では女性はわずか1割だ。そんな藤田さんにとって女性が少ない環境に違和感はなく、「出産・育児など周辺が過剰に心配しているような気がする。実感が湧かない」と言う。 

  「良くも悪くもフェア」と語る財務省関税局の関谷遥香課長補佐(32)は東大法学部出身だ。「夜遅くまでの当番勤務や重い物を運ぶ仕事も平等にやらせてもらっている。女性だから睡眠がたくさん必要だ、体力がないという気はしていない。今はフェアに扱ってもらえる方がうれしい」と話す。   

  ただ、「子どもができると状況は変わってくる」。民間企業に勤める夫とは仕事と育児の両立について今から話し合っているが、いずれの実家も都内から遠く、ベビーシッターを頼るしかないというのが結論だ。「次官や局長になりたいというよりも、やりがいがある仕事に携わるなかで管理職という立場がついてくればよい。子どもがいたらいたでその範囲内でやりたいことを追求したい」と言う。

育児休業

  国家公務員の育児休業の取得状況に関する人事局の資料によると、14年度の女性の取得率は98.7%と、厚生労働省の調査による民間事業所(5人以上)の取得率86.6%を上回っている。一方で、男性はぞれぞれ3.1%と2.3%と低いことから、政府は第4次計画で男性の取得率を20年度に13%にする数値目標を設定。父親の積極的な子育て参加が母親のキャリアアップにつながると期待をかける。

  2人の子どもをベビーシッターに預けて勤務を続けた定塚審議官は「子育てをしながら働き続ける職員のキャリア育成が一番難しい。各省庁で昇進が停滞するマミートラックに入ってしまうケースが多い」と指摘。「父親と母親が交代して子育てをすることなく、母親が仕事と両立して活躍するのは無理だ」と述べ、まずは霞が関から変わる必要性を強調した。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE