JPモルガン証など9社がマイナス利回り覚悟、年末も残高7割が水没

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  • PD13社の予想中央値は年末にマイナス0.10%-長期金利
  • 世界で利回りが最低のスイス国債の年末見通しに並ぶ公算

日本国債の安定消化を担うプライマリーディーラー(国債市場特別参加者)は、今年末も国債利回りの大部分がマイナス圏にとどまり、保有債券の評価益を増やす余地は乏しいとみている。

  ブルームバーグが先週、年末の10年物国債利回りを聞いたところ、回答があった13社のうち9社がゼロ%未満と予想した。中央値はマイナス0.10%だった。同利回りは18日にマイナス0.135%と過去最低を更新した。予想通りとなれば、現在世界で利回りが最低のスイス国債の年末見通し0.10%に並ぶ可能性がある。

  黒田東彦総裁が2%の物価目標を達成するため、巨額の国債買い入れなどで金融市場に潤沢な資金供給を始めてから約3年、マイナス金利の適用開始から1カ月余りが経過した。利付国債は発行残高の7割超で利回りがゼロ%を下回っている。それでも、消費者物価上昇率は横ばい圏から抜け出せず、大半のプライマリーディーラーが追加緩和を想定している。

  JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは、「国債市場は日銀がほぼ占拠している状況だ。金利上昇の余地は見込めず、かなり押し殺された状況が続く」と予想する。「隙あらば、金利が低下しがちな1年になるのではないか」と言う。

  今回の調査では、モルガン・スタンレーMUFG証券のマイナス0.20%が年末の予測値で最も低かった。JPモルガン証とシティグループ証券、みずほ証券、東海東京証券の4社はマイナス0.15%で続いた。一方、利回りが上がるとみているプライマリーディーラーでは、UBS証券と三井住友銀行のプラス0.10%が最も高かった。

  日本の10年物利回りは25日にマイナス0.10%前後。マイナス金利政策で日本に先行するスイスはマイナス0.38%前後と世界で最も低い。ドイツはプラス0.18%程度だ。金融緩和を進める日欧とは対照的に利上げ局面にある米国は1.9%前後で推移している。

  ただ、年初来の円高で、日本の国債の収益率は実質的に海外の国債を上回る。ブルームバーグ/EFFAS指数によると、償還まで1年を超える日本の収益率は年初来4.50%。26カ国で4番目だが、円換算すると最も高い。

  モルガン・スタンレーMUFG証の杉崎弘一債券ストラテジストは、日銀が今夏の参院選までに1回か2回に分けて0.2ポイントの追加利下げと指数連動型上場投資信託(ETF)増額を中心とした資産購入増に踏み切ると予想。一方、みずほ証の丹治倫敦シニア債券ストラテジストは、追加利下げは「年に何回もできるものではない。年内はなくて、来年前半になる」と読む。

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年末の10年債利回り
予想
年末の20年債利回り
予想
モルガン・スタンレーMUFG証券-0.20%
JPモルガン証券-0.15%0.30%
シティグループ証券-0.15%
みずほ証券-0.15%0.40%
東海東京証券-0.15%0.15%
岡三証券-0.10%0.35%
三菱UFJモルガン・スタンレー証券-0.10%0.30%
バークレイズ証券-0.05%0.65%
大和証券-0.05%0.45%
ドイツ証券0.00%0.35%
メリルリンチ日本証券0.05%0.65%
UBS証券0.10%
三井住友銀行0.10%
中央値-0.10%0.35%

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日銀の力が勝る

  日銀は1月末、金融機関の当座預金の一部に0.1%のマイナス金利を適用する追加緩和を決定。イールドカーブの起点を押し下げ、巨額の国債購入とともに、金利全般に対して強い下押し圧力を加える方針だ。日銀によるマイナス金利政策の発表を受けて、日本の国債利回りは軒並み低下。2年物はマイナス0.25%、5年物はマイナス0.265%、20年物は0.29%、30年債は0.415%、40年債は0.445%と、それぞれが最低を更新した。

The BOJ headquarters

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  ドイツ証券の山下周チーフ金利ストラテジストは、超長期債の利回りは「かなり高下するが、最終的には日銀による買い入れの力が勝る。振れ幅は次第に縮小し、押しつぶされて低位安定する」と予想。マイナス金利政策の併用で「銀行勢なども超長期債を多少は持たざるを得なくなり、生保が買い控えても20年債は0.30%程度で均衡するようになっていく」とみる。

  一方、プライマリーディーラーは10年債のマイナス利回りが大幅に拡大していくとはみていない。10年債はすでに償還まで保有すると損失を被る水準にあり、利回り低下による評価益も見込みにくい状況だ。ブルームバーグのデータによると、先週末に10年債を購入してマイナス0.10%で年末を迎えた場合、投資家には0.03%前後の損失が生じる計算だ。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは、政策対応としては追加緩和ではなく財政出動や消費増税の再延期が有力だと分析。国債利回りが「どんどんマイナス幅を拡大していくとは考えにくい。10年債はイメージとしてはゼロ%が上限で、投資資金は超長期債に行かざるを得ない」とみる。

結局は成長力の底上げ

  欧州中央銀行(ECB)は14年6月に中銀預金金利をマイナス0.1%に設定した。15年12月にはマイナス0.3%、今月10日にはマイナス0.4%へと水準をさらに引き下げている。期間の短い利回りを順に並べたイールドカーブでみると、ドイツ国債は平たんから右肩上がりのほぼ順イールドカーブで、中長期ゾーンまでがマイナス圏、残存9年以上からはゼロ%を上回っている。一方、日本国債は残存2-7年がマイナス0.2%未満で、3カ月物の利回り水準をも下回る「スプーン」型の形状だ。

  メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、翌日物や3カ月物と比べた2-7年債利回りのマイナス幅が大きいのは「不自然なので、どこかで調整が入る。外国人の買いも満期保有が目的ではない」と言う。年度末要因が剥落すれば、10年債は「0.0-0.1%程度に収束していく」と読む。

  全国消費者物価指数(生鮮食品を除いたコアCPI)は原油安を背景にゼロ%前後での推移が長期化している。日銀は1月末に物価見通しを引き下げ、目標2%への到達時期を「17年度前半ごろ」に先送りした。3月上旬時点でのブルームバーグのエコノミスト調査によると、日銀の目標実現を見込む関係者は38人中1人だけだった。

  岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、今年は金融政策だけで景気やインフレ期待、実際のインフレ率が盛り上がるとは見込めないと言う。これまでの金融緩和に「一定の効果はあったが、単独で日本経済を変えるのはもともと無理だ」と指摘。「現状維持にとどめ、日本経済の成長力向上に政治の責任で取り組むしかない。抵抗は強いがメスを入れていかないと、いつまでたっても金融緩和を続けなくてはならなくなる」と語った。

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