日銀コアCPIは早期の1%割れも-東大日次指数開発の渡辺教授

  • 東大発のベンチャー「ナウキャスト」の3月予想は1.04%
  • 日銀は4月展望リポートで物価見通し下方修正確実と岡三・愛宕氏

日本銀行が物価の基調を見る上で重視しているエネルギーと生鮮食品を除く消費者物価指数、いわゆる日銀版コアCPIは3月には前年同月比で1%ぎりぎりまで上昇率が縮小する予測を、東大発のベンチャー企業「ナウキャスト」がまとめた。同社技術顧問を務める渡辺努東大教授は同指数は早期の1%割れの可能性もあるとみている。

  ナウキャストは、渡辺教授が開発した東大日次物価指数を引き継いで発足した。同社が、日次指数とは別に総務省のCPI集計と同じ手法で算出している「S指数」を基に日銀版コアCPIを予測したところ、3月は1.04%上昇と1%近くまで伸びが縮まる結果となった。渡辺教授は「思った以上に早く1%割れが起きそうだ。マイナス金利の効果は今のところ物価には出ていない」と分析している。

  黒田東彦総裁は「物価の基調は着実に改善している」と繰り返し発言。その根拠の一つとして日銀版コアCPIが2013年3月の0.8%低下から足元で1%を上回る水準まで上昇していることを挙げている。同指数は昨年12月に1.3%上昇となったが、25日発表された2月分は2カ月続けて1.1%上昇と頭打ちとなっている。

  東大日次物価指数はスーパーマーケットのPOSデータを通じて全国の店舗の商品を対象に渡辺教授らが集計を始めたデータ。ナウキャストはこれを引き継ぎ「日経CPINow・T指数」として公表、総務省が発表するCPIを予測する「S指数」も作成している。3月のS指数は前年比1.81%上昇と2月(1.96%上昇)からプラス幅が縮小し、3カ月連続で伸びが鈍化した。

「主な意見」でも1%割れ予測の声

  日銀が24日公表した14、15両日の金融政策決定会合の「主な意見」によると、賃金について「先行きの物価や消費の基調に大きな影響を与える主要企業のベアは、昨年を相応に下回る可能性が高い」「賃上げの動きは弱く、インフレ予想を示す指標も低下している」といった意見が出たほか、「春先以降、基調的な物価が前年同月比プラス1%台前半を維持するがい然性は低下した」との指摘も出た。

  黒田総裁はマイナス金利導入後に初めて行った2月3日の講演で、ナウキャストのT指数を図表で紹介し、「昨春以降、拡大傾向が顕著であり、直近までこうした傾向に変化はみられていない」と述べた。しかし、総務省のCPIを先読みする同社の「S指数」は日銀版コアCPIのさらなる鈍化を予測している。

  日銀は3月15日の金融政策決定会合で、景気の総括判断を「新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている」として「基調」を加えて下方修正。2%物価目標の実現の鍵となる予想物価上昇率についても「やや長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる」として下方修正した。

4月展望リポートで下方修正、追加緩和か

  日銀は4月27、28の両日、金融政策決定会合を開き、経済・物価情勢の展望(展望リポート)を公表する。マイナス金利の導入を決定した1月29日に公表した展望リポートでは、2016年度のコアCPI前年比の見通し(委員の中央値)を1.4%上昇から0.8%上昇に下方修正し、2%に達する時期を「16年度後半」から「17年度前半」に先送りした。4月展望リポートで下方修正すれば過去1年で4回目の先送りとなる。

  岡三証券の愛宕伸康チーフエコノミストは23日付のリポートで「1-3月実質GDPは2期連続マイナス成長のリスクが高く、4月展望リポートで実質GDP成長率および消費者物価の大勢見通しが下方修正となるのはほぼ確実な情勢」と指摘。景気判断の下方修正は「展望リポートの見通し下方修正に向けた布石とみて間違いはないだろう。4月追加緩和というシナリオを維持する」としている。

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