【FRBウオッチ】「米国発」グローバルバブル第3弾、崩壊始まる

  • バーナンキ氏のドル安政策で中国や新興諸国が真っ先にバブル化
  • 前議長のQEテーパリング表明が事実上の初回利上げ

米国の金融当局、その動静を注視する市場とも、現下の世界的な景気減速と金融市場のタイト化を「中国発」と認識しているが、現象面だけしか捉えていないようだ。金融混乱の源流を探れば、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)第14代議長がグローバルバブルにつながる流動性の蛇口をひねった事実が浮かび上がってくる。

  この現実を見極めないと、正確な立ち位置がつかめず、将来の予測も狂ってしまう。市場のボラティリティー(変動率)が上昇し、米金融政策当局が利上げサイクル入りを表明しながら、なお初回利上げをしただけで立ち往生しているのも、激動のグローバル経済の原因を中国など外国のせいにしているからだ。米金融政策当局の言動が一致しないのは、自らの立ち位置がつかめないばかりか、その発言や機関声明が実体を正直に伝えていないところにも原因がある。

  結論から先に示すと、今回の国際経済の不調、金融市場のタイト化は、「米国発」グローバブルバブル破裂の予兆であり、崩壊過程は既に始まっている。政策金利引き上げの好機は、とうの昔に去っている。しかも、今回のバブルは、FRBの金融政策の失敗により膨張と崩壊を繰り返してきた過去2度のグローバルバブルに次ぐ第3弾に相当する。強欲資本主義の際限のない膨張の果てに生じているもので、第3弾はその中でも最も巨大化している可能性が高い。
 
  バーナンキ議長率いる連邦公開市場委員会(FOMC)は2008年9月のリーマン・ショック後の急速な実体経済の収縮に直面して、同年12月にゼロ金利政策に踏み切ると同時に、大規模資産購入(いわゆる量的緩和=QE)の実施を決めた。それから2年。米国経済の回復ペースはのろく、物価上昇率が低下に転じたことからデフレ懸念が台頭し、10年11月にQE2が導入されている。

  バーナンキ議長はこうした異例の金融緩和策の追加により、資産価格の引き上げとドル安を狙ったのは間違いない。同議長はこれらの措置により、「株価など資産価格が上昇する一方、ドル相場が下落した」と得意満面だった。このドル安政策により、ホットマネーが中国やブラジルなど成長率の高い新興国に流れ込み、バブル醸成圧力はグローバルに広がっていった。これが現下のグローバルバブルの原点である。

  バーナンキ議長はQE2導入以降も、経済成長が想定を下回り続けたことからQE3の追加を決定する。こうした異例の緩和により放出されたニューマネーは実体経済には十分に回らず、もっぱら資産購入に向かい、バブルを一段と膨らませていく。米連邦準備制度のQEによる資産購入と歩調を合わせるようにして、S&P500種株価指数は上昇を続け、FRBの資産購入停止と共に横ばいからピークアウトへの軌跡を描いている。 

  このグローバルバブルは、主導者のバーナンキ議長が13年6月にQEの終結シナリオ(テーパリング)を発表した段階で、崩壊過程に入った。このテーパリング方針の表明は、非伝統的金融政策下における初回引き締めに当たる。さらに、テーパリング狂想曲に乗って、米国債利回りが急伸することで、市場が強力な引き締め効果を発揮した。

  しかし、米政策当局は2014年10月のテーパリング終了後も利上げをだらだらと遅らせ、初回利上げに踏み切ったのは15年の年の瀬も迫る12月16日だった。債券市場による「利上げ」終了(13年12月、10年物米国債利回りが3%でピークアウト)からちょうど2年経過していた。この間、バーナンキ議長は14年1月31日に退任、イエレン第15代FRB議長がその翌日に就任している。

  前回の景気拡大局面におけるFOMCの最終利上げは2006年6月に実行された。このタイミングは10年債利回りのピーク(月足で5.1%)と一致していた。この政策的な最終利上げと長期金利の高騰によりグローバルバブル第2弾の崩壊が始まる。その前の景気拡大局面では10年債利回りがピークを付けた4カ月後の2000年5月にグリーンスパン第13代FRB議長が最終利上げを実行、グローバルバブル第1弾を崩壊へと誘った。

  今回の景気拡大局面では、QE1とQE2による米国債の買い上げで、10年債利回りは2012年7月に過去最低の1.39%まで落下した。このボトムを起点として、米国債利回りは上昇に転じており、市場による引き締めが始まった。

  そして、2013年半ばから始まるQEのテーパリング狂想曲に乗って、10年債利回りは13年12月に3.01%に駆け上がった。これは債券市場による最終利上げに当たる。FOMCによる利上げはそれから、2年も経過しており、グローバルバブル第1、第2弾の時の政策当局による利上げに比べ大幅に遅れている。

  2014年半ばにはドル相場が急騰に転じ、為替市場による最終利上げが始まっており、市場引き締めが政策利上げより圧倒的に早かった。このドル高による金融引き締めでコモディティー価格が急落、新興国経済が大打撃を被ることになる。米国もシェール・オイル・バブルが崩壊し始め、鉱業部門に大量の設備財を供給してきた製造業にも暗雲が広がった。

  世界第2位の経済大国である中国も変調を来し、その立て直しに政府が景気刺激策に転じたことから、バブル化が急速に進み、上海総合株価指数は半年足らずで150%も急騰した。この急騰がたたって中国株は他の国々に先駆けて真っ先に急落に転じる。この急騰・急落のすさまじい迫力を見て、「中国発バブル崩壊」なる言葉が独り歩きを始めた訳だ。

  ここで、留意すべきは、前回と前々回の景気拡大局面で米金融政策当局の最終利上げがグローバルバブルを崩壊させ、いずれも景気後退につながっていったことだ。つまり、まず緩和的な金融政策の長期化でバブルを膨張させた後、利上げによるその制御に失敗、全世界に甚大な悪影響をまき散らしてきた。

  今回のバブルは、2013年のテーパリング発表による事実上の初回引き締めと、それを受けた米国債利回りの上昇、さらにドル急騰という市場引き締めにより崩壊過程に入った。15年12月のFOMCの初回利上げは最終利上げの役割を果たしている。今後、追加利上げをしてもしなくても、バブルが臨界点に達し、破裂するは時間の問題だろう。

  バブルは初期から中期崩壊過程をゆっくり進み、後半に加速して最後に大爆発を起こす。今回は特に、政策金利引き上げが遅れたため、バブルの寿命が長くなるとともに、スケールも巨大化しているリスクが大きい。

  米国では1990年代に情報技術(IT)株式バブルが膨張。米金融当局はその崩壊被害からの脱却を狙った再バブル化で住宅・金融バブルを膨らませた。第3弾となる今回のグローバルバブルは、国内に再バブル化する余地が小さくなったため、中国や新興国群をバブル化させて失地の回復を狙ったものである。

  こうした新興諸国は成長力こそ強いものの、経済基盤はまだ相対的に弱く、真っ先にバブル崩壊が始まった。基軸通貨を意のままに繰り出すことができる米国は最後までバブル崩壊圧力を押さえ込むことができるだろう。しかし、実体経済の裏付けのないバブルはいずれ消滅する。

  このように、政策金利引き上げの出遅れと、再バブル化を海外に求めたこともあり、今回のグローバルバブルはかつてない規模に膨れ上がっているはずだ。その周辺部の崩壊の衝撃が、ブーメランのように発信国に向かっているところだ。

  バブルの衝撃波は地震波に例えることができる。中国からブーメランのように折り返した衝撃波は太平洋を静かに進み、米大陸が近づくにつれ、その全容を現してくる。その時期を予測することは困難だが、リスクを想定すれば、小さな予兆も感知できる確率が高まる。

  米金融当局のように「銀行の監督強化によりバブルは制御可能」(イエレン議長)と信じている限り、バブルが臨界点に達して大爆発を起こすまでそれに気付くことはないだろう。これはグローバルバブル第2弾崩壊までの経験で学んだはずなのだが。

(FRBウオッチは記者個人の見解です)

記事についての記者への問い合わせ先:
ワシントン 山広 恒夫 tyamahiro@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:
大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
千葉 茂 schiba4@bloomberg.net 
 
 

  

  

  

  

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