欧州中央銀行(ECB)は量的緩和(QE)での月々の債券購入額を800億ユーロ(約10兆円)とこれまでの600億ユーロから増やすことや、銀行債以外の投資適格社債を購入対象に加える策を打ち出した。しかし、これがユーロ圏の投資銀行に打撃を与えることは必至だ。

  ECBの措置が景気回復に役立つかどうかはまだ分からないが、投資銀行の債券・通貨・商品(FICC)トレーディングデスクが苦労することだけは確実だ。ECBはこれまでのQEを通じて既に、ユーロ圏の国債の相当部分を保有。それを社債にまで拡大しようというのだ。

  バーンスティーン・リサーチ(ロンドン)のアナリスト、チランタン・バルア氏はユーロ圏の銀行債を除く投資適格社債市場の月次流動性を250億-350億ユーロと見積もる。仮に、ECBが購入増額分のうち100億ユーロを社債に回したとすると、ECBは流動性の約3割を吸い上げてしまうことになる。これは金融危機後一貫して収入が減っているFICCトレーディング部門をさらに圧迫する。

  理論的には、QEは合併・買収や株式の発行・売り出しなどを促すことで投資銀行業務の収入に寄与する。QEによって実際に景気がよくなれば銀行も恩恵を受ける。しかしFICCトレーディング収入への依存が依然として大きい銀行にとっては、あまり慰めにならない。HSBCホールディングスの見積もりによれば、ドイツ銀行ではこれが投資銀行全体の収入の57%を占めている。

  既にFICCトレーディング事業の縮小を決めている銀行は多いが、収入のさらなる急激な減少は全行の再編を難しくする。収入が想定以上のペースで減れば、計画しているコスト削減では追いつかなくなる。ECBの措置は欧州の成長を復活させるかもしれないが、域内の投資銀行の苦しみは増すばかりだ。

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)
原題:ECB’s Bond-Purchase Plan Promises Pain for FICC Trading: Gadfly(抜粋)

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE