金融庁は株式や債券に為替などを組み合わせた「2階建て」「3階建て」と言われる複雑なリスク要因を含む投資信託の設計・運用や販売が適切に行われているかどうか、監視を強化する。アベノミクスの下で政府が促す「貯蓄から投資の流れ」に水を差すことのないよう投資家保護を徹底する。

  同庁の遠藤俊英監督局長がブルームバーグの取材に答えた。経験の浅い個人投資家や高齢者などへの過度な高リスク商品の販売は、本人が納得していた場合でも「問題がある」などと指摘。監視・監督強化のため運用会社や銀行、証券会社の経営陣にヒアリングを始めており、問題点などを共有する。

  日本銀行のマイナス金利も背景に預金からリスク資産への投資が加速する可能性がある。高齢化の進行で年金生活者などの投資も増えている。こうした中、金融庁は金融商品に詳しい知識を持たない一般個人の投資拡大に備え監視強化に動く。運用、販売会社のトップとの対話を通じ顧客の身になった営業を浸透させたい考えだ。

  「2階建て」投信は株や債券での運用に為替取引などを乗せて収益拡大を狙うのが特徴で、日本株や米社債などをトルコ・リラなど高金利の新興国通貨建てで運用するものなどがある。野村証券や三菱東京UFJ銀行などの金融機関で広く取り扱っている。昨年は新興国通貨の対円での下落で多くの投資家が損失を被った。

  遠藤監督局長は、こうした商品は「長期投資の精神と両立せず、疑問がある」と指摘した。「2階建て」の多くが採用する配当の毎月分配を約束した「毎月分配型」は運用が振るわずとも配当するため元本が減るリスクもある。局長はこれに関する説明不足も懸念した。同庁の調査では、個人向けでは毎月分配型が7割程度を占める。

  「2階建て」など複雑な投信についてMUFG、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、野村証、大和証券の広報担当は顧客への適合性に配慮した販売を心掛けていると述べた。日本証券業協会広報担当の坪倉明生氏は、中長期の資産形成に資する商品提供のあり方を検討課題としていると答えた。

手数料

  金融庁では「2階建て」投信などの手数料の高さも問題視している。同庁は昨年の調査で、投信のガバナンスや商品開発に関連して「仕組みが複雑で高い手数料を得られる投信が多数提供されている」ことなどを問題点として指摘した。販売手数料だけでも4%前後となっているケースがある。

  「2階建て」の販売手数料水準について、三菱UFJ広報担当の高原一暢氏は「販売員の説明および管理負荷に比例して設定している。通常の投信と比較して特別高い水準という訳ではない」などと説明。大和証券広報担当の中川新治氏は「顧客に提供するサービスの内容に応じて、総合的な判断のもと決定している」と述べた。

  遠藤局長は「複雑な商品は説明が複雑で顧客も理解しづらい。言い過ぎかもしれないが、高い手数料を取るために売るんじゃないかと思ってしまう」と述べた。その上で「業界として長年のビジネス慣行をぜひ改めてほしい」と期待感を示した。

受託者責任

  金融庁は2012年、証券会社などが毎月分配型や通貨選択型ファンドを販売する際に投資家に十分な説明を求める規制を強化した。昨年9月にはフィデューシャリーデューティー(受託者責任)として「商品開発、販売、運用、資産管理それぞれに携わる金融機関が徹底を図る」と行政方針に明記した。

  遠藤局長はインタビューで、フィデューシャリーデューティーに関する当局の見解を7月ごろに作成するモニタリングレポートで公表する考えを示した。同局長は「われわれが規範を作り押しつけるのではなく、各金融機関が自ら規範を作り出し議論の中で認識を共有するというのがあるべき姿だと思う」と述べた。

  金融機関では独自に「フィデューシャリー宣言」を行う動きが拡大している。昨夏以降、HCアセットマネジメント、セゾン投信、東京海上アセットマネジメント、三井住友アセットマネジメント、みずほフィナンシャルグループなどが取り組み指針を公表した。顧客第1主義や利益相反行為の回避、合理的な報酬を掲げる例が多い。

  こうした流れの中で、2階建て投信について、三菱UFJの高原氏は、顧客への説明に高い能力が必要なため「証券会社からの出向者で作る専門組織での取り扱いに限定している」と述べた。三井住友Fの佐々木隆史氏は「販売に当たっては慎重に対応しており、当行の売れ筋投信には入っていない」と述べた。

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