世界最大の年金基金で、金融市場関係者から年金界の「クジラ」と呼ばれる年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、日本株式の買い増し余地が5兆円超まで拡大しているとの見方が出ている。今年に入り株安と金利低下が一段と進んでいるためだ。

  大和証券投資戦略部の吉田亮平ストラテジストは、GPIFの資産構成に占める国内債券の割合が2月末時点で40.9%程度に上昇する一方、国内株は約21%に低下したと試算。3月末までに目標値の25%まで引き上げるには、資産価格が一定などの前提を置くと、最大5.3兆円程度の日本株買いが期待できるとみる。

  2015年度第3四半期(10-12月)のGPIFの運用成績は、収益率が3.56%、収益額が4.7兆円余りだった。年金特別会計が管理する約2.1兆円も含めた積立金全体は昨年末に約141.9兆円となった。国内債の割合は37.76%と過去最低。国内株は23.35%で外国債券の13.5%とともに過去2番目の高水準だったほか、外国株式は22.82%と最高を記録した。

  メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、GPIFが年初から売買をせず、年金特会の管理分が一定だと仮定すると、年金積立金は足元までに約6.9兆円目減りしたことになると指摘。国内債は約3.4兆円増の42.07%、国内株は約5.5兆円減の20.56%、外債は7828億円減の13.60%、外株は約4兆円減の21.07%になったと試算する。

  GPIFは14年10月末の資産構成見直しで、保有する国内債の目標値を全体の60%から35%に下げた一方、内外株式は12%から25%に、外債は11%から15%へ引き上げた。5%だった短期資産は各資産に分散して管理している。従来の国内債偏重型から、株式と債券が半分ずつで保有し、国内資産6割・外貨建て資産4割という分散型に変えた。

  世界の株式市場が弱気相場入りする中で、TOPIXは年初から2月末までの下落率が16%を超えた。円は対ドルで6%余り上昇している。ブルームバーグの日本国債指数は日本銀行によるマイナス金利政策などを追い風に約3.2%上昇した。

  メリルリンチ日本証の大崎氏は、国債利回りは短期的には水準調整が生じても不思議ではないが、日銀の金融緩和を背景に「低下圧力がかかり続ける」とみている。経常黒字の拡大などから、今年は円高圧力が強いと指摘。「株価の大幅な反発がなければ、7月の参院選に向けて公的年金による日本株投資は続く」と読む。

  償還まで10年以下の国債利回りはゼロ%未満で推移している。GPIFの三石博之審議役は1日の記者会見で、日銀のマイナス金利政策は「まさにサプライズ。運用する立場では大変厳しい状況だ」と指摘。資産構成は中期計画の途中でも必要に応じて変更が可能だとし、「直ちに必要だとは考えていないが、毎年度見直すので運用委員会でも議論して欲しい」と話した。

  大和証の吉田氏は、GPIFは「短期的には社債など、国債より利回りの高い債券へのシフトが想定されるものの、中長期的には基本ポートフォリオを見直す可能性がある」と予想。国内債の目標値をさらに下げ、日本株を含めたリスク資産の構成比を引き上げる可能性があるとの見方を示した。

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