1錠1000ドルの医薬品、10ドルで購入できる国も-ギリアドの価格設定

  • 低所得国でできるだけ流通させ、しかも損失を出さない戦略
  • 世界どこでも同一価格のiPhoneとは違うと説明

米国で1錠1000ドル(約11万3000円)で売られている医薬品を、定価に比べればただ同然の価格で販売するー。米医薬品開発ギリアド・サイエンシズのグレッグ・アルトン氏のこの業務は一見矛盾しているようにみえる。

  12週間の投与でC型肝炎を治療する「ソバルディ」の価格設定で、ギリアドがアルトン氏に出した指示は「低所得の国で可能な限り多数の患者が手に入れられるようにすること。しかも、損を出してはならない」。アルトン氏は「とても単純なことだ」と話す。

Gregg Alton

Source: Gilead Sciences Inc.

実際はそれほど単純ではない。1990年代にはエイズウイルス(HIV)の画期的治療薬の恩恵を受けられる患者の数が富裕国と貧困国で大きな差があるとして、問題になった。大手医薬品メーカーはそうした批判への対応として、生命を救う医薬品の価格を一部の国で引き下げており、新たな議論を呼んでいる。販売量、価格ともに記録的に高いソバルディに対する風当たりは強い。

  「ターゲットは適切に決める」とギリアドの企業・医療業務担当執行副社長のアルトン氏は述べた。

  株主からの期待と世界的な保健ニーズの板挟みにある大手製薬会社の価格戦略を、同氏は説明する。まずは各国を国民一人当たり所得でふるいにかける。豊かな国とそうではない国を分け、豊かではない国をさらに所得とC型肝炎の感染率によって振り分ける。政府との交渉はそれからだ。

  「なぜエジプトの患者は正規価格の2%しか払わずに済むのかと批判されるが、弊社はそれで当然だと認識している」とアルトン氏。アップルのiPhone(アイフォーン)を引き合いに「世界各国で同じ価格だが、人命にかかわる必需品ではない」と説明した。

  ギリアドはエジプトをはじめ、キューバ、パキスタン、フィリピンなど、ソバルディの必要性が最も高い101カ国をリストアップしている。これらの国はまた、同社としてジェネリック(後発薬)を認める国のリストにも入っている。ギリアドはインドで11社にライセンスを供与しているが、販売は先のリスト国に厳密に限定している。インドでのジェネリック価格は4.29ドルと低い。ギリアドは売上高の7%を収入として得る。

  しかし101カ国すべてでジェネリックが販売されるには長い年月がかかるため、ギリアドは政府と契約する。12週間の投薬コストは通常の場合900ドル(1錠10ドル)程度だが、アルトン氏によれば一部諸国の政府はこれを全額、もしくは部分的に負担する。ギリアドはこれまで29カ国でソバルディ販売の許可を申請、もしくは獲得しているが、この中には最も必要性の高い16カ国が含まれる。

  その例がエジプトだ。ギリアドによれば、エジプトでは人口の10%を超える約830万人がC型肝炎に感染しており、世界でも最も感染率が高い。エジプト保健省はソバルディを1セット900ドルで購入している。エジプト政府はソバルディが米食品医薬品局(FDA)に承認される前から国際会議に出席しているギリアドのチームに働きかけるなど、契約に向けて「極めて熱心」だったとアルトン氏は話す。

  国際非営利団体の国境なき医師団(MSF)はギリアドの価格設定を批判する。ソバルディ1セットの生産コストは100ドルで、ギリアドはエジプトで「莫大(ばくだい)な利益をあげている」と同団体で医薬品普及運動を担当するロヒト・マルパニ氏は述べた。

原題:His Job Is to Sell a $1,000 Pill for $10 Without Losing Money(抜粋)

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