円反発、日中株安でリスク回避強まる-G20は通貨切り下げ回避を確認

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  • 1ドル=114円付近から一時112円77銭までドル安・円高が進行
  • 「事前通知」合意、日銀サプライズ緩和封じ込める可能性-みずほ証

29日の東京外国為替市場では円が反発。中国や日本の株価下落などを背景に、リスク回避に伴う円買いが強まった。先週末の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では市場安定化に向けた具体的な政策協調が打ち出されなかったほか、通貨の競争的切り下げ競争の回避が確認されたことで日本銀行は追加緩和に動きにくくなるとの見方が浮上した。

  ドル・円相場は前週末に付けたドル高値の1ドル=114円ちょうど付近で週明けのアジア市場を迎えたが、徐々にドル売り・円買いが強まり、午後には112円77銭まで円高が加速した。午後3時45分現在は112円96銭前後。前週末には国内総生産(GDP)や個人消費支出(PCE)価格指数など米経済指標の上振れを手掛かりに18日以来の水準となる114円ちょうどまでドル高・円安が進んでいた。

  三菱UFJ信託銀行資金為替部為替市場課の市河伸夫課長は、「G20に関しては、特に何かが決まったわけでもなく、影響は限定的。強いて言えば、円安に持っていく政策がOKというわけでもないというところ」と指摘。その上で、月末ということで輸出企業など需給的に円買いが強いほか、「人民元安や中国株式市場の下落がリスク回避的な円買いにつながっている」と円の上昇を説明した。

  ブルームバーグのデータによると、円は主要16通貨全てに対して前週末終値比で上昇。ユーロ・円相場は1ユーロ=124円台半ばから一時123円41銭までユーロ売り・円買いが進んだ。

  週明けの中国株式相場は反落し、上海総合指数は一時4.6%安まで下げ幅を拡大した。東京株式相場は続伸して始まった後に伸び悩み、午後には下落に転じた。一時276円高まで上げていた日経平均株価は結局、161円安の安値引けとなった。

  中国外国為替取引で中国人民元は下落。中国人民銀行(中央銀行)はこの日、元の中心レートを5日連続で引き下げ、1ドル=6.5452元に設定した。

G20

  G20会議終了後に公表された共同声明によると、G20は成長押し上げのため金融、財政、構造政策を活用することで合意。声明は「金融政策だけでバランスの取れた成長をもたらすことはできない」と指摘した。また、為替相場に関して、「われわれは競争的な切り下げを回避する。競争的な目的のために為替レートを目標にしない」ことを確認した。

  ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセルブルム議長は27日に上海で記者団に対し、「正直に言って、日本についても討議された。競争的な通貨切り下げの状況に陥るのではないかとの多少の懸念があった」と発言。「他が追随し、競争的な切り下げとなるリスクは非常に大きい」とし、通貨安が真に国内のマクロ経済的理由を動機とした金融政策の結果なら、各国はサプライズを招かぬよう、確実に連絡して相互に相談する必要があると述べた。

  みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは29日付リポートで、こうした「事前通知」は、「黒田日銀総裁がマイナス金利幅拡大などの『サプライズ緩和』によって為替相場を円安・ドル高方向に押し戻そうとする将来の選択肢に対して一定の制約を加える、重要な動き」と指摘。「少なくとも、一段の円高ドル安を日本の政策当局が阻止したいと考える場合にとれる行動の範囲が狭まったことだけは間違いないだろう」と記述した。

  三菱東京UFJ銀行の市場企画部グローバルマーケットリサーチの内田稔チーフアナリストは、G20の結果に失望はないが「具体策もなく、リスク環境が一気に改善されるというわけでもないだろう」と指摘。一方、「金融緩和依存や通貨安競争に懸念が示される中で、日本の金融政策がそれほど理解、共有されていないように感じる」とし、「海外の理解や共有が弱い中で、緩和を受けた市場の反応は限定されざるを得ない」と語った。

  今週は米国で2月の米供給管理協会(ISM)製造業及び非製造業景況指数や雇用統計など主要経済指標が発表される。一方、中国では2月の製造業購買担当者指数(PMI)が発表されるほか、3月5日に全人代が開幕する。

  上田ハーローマーケット企画部の山室宏之氏は、G20は市場の予想通り、具体的な対応策の策定には至らなかったとし、「経済成長に対する不透明感は晴れず、投資家は半身の構えを崩していない」と指摘。「今週は中国をはじめとして米雇用統計など各国で経済イベントが相次ぐため、再びリスク回避色の強いマーケットに戻っても不思議ではない」と予想した。

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