ファッションと財政再建に相関あり-女性編集長らに託す財務省

  • 25ansの十河氏ら6人が意見表明へ、財政審が4月に女性公聴会
  • パリへの取材出張、機中の友はピケティ「21 世紀の資本」

専業主婦から働く女性へ-。日本の女性像が多様化する中で、先端のファッションやメーキャップの提案を続けてきた女性誌編集者の十河ひろ美氏(52)。30年のキャリアを生かして今、世の女性たちに訴えようとしているのが国の財政問題だ。

  富裕層の女性向けの月刊誌「25ans(ヴァンサンカン)」や「Richesse(リシェス)」(ともにハースト婦人画報社)の編集長を務める十河氏は、2年前から財務省の財政制度等審議会の委員に名を連ねる。安倍晋三政権が女性の活躍推進を掲げる中、同省は新たな視点の意見が必要と、縁遠いファッションの世界で活躍する十河氏に白羽の矢を立てた。

Hiromi Sogo

Photographer: Akio Kon/ Bloomberg

  最初は「人違いかと思った」という十河氏だが、1000兆円の債務を抱える国の財政状況を知れば知るほど、「家計であれば破綻。女性も国の財政について考えることが必要だ」と実感。「まずは知ることから」と、4月22日に都内で開かれる18歳以上の女性を対象とした財政審の公聴会で参加者に直接語り掛けることになった。

男性は麻生財務相だけ

  女性公聴会は10年ぶり2回目。従来の公聴会は出席者に男性ばかりが目立ち、女性に国の台所事情を知ってもらいたいと2006年に初めて開いた。今回は政府が「一億総活躍社会」を目指す中で開催。十河氏のほか、BNPパリバ証券の中空麻奈投資調査本部長ら6人の女性委員がそれぞれの専門分野について話し、参加者から意見を聞く。男性の出席者は麻生太郎財務相1人だ。

  十河氏はブルームバーグのインタビューで「正直、財政問題は苦手だったが、財政の現状を知り、国の未来を考えるようになった」と述べた。「人口の半分は女性。小さな集合体の家庭だけではなく、国という大きな世の中がどうなっているかを考えることが必要だ」と話し、公聴会では自らの経験を参加者と共有できるのではないかと思っているという。

  少子高齢化が進み、社会保障関係費は一般歳出の5割以上を占め30兆円超に上る。国の債務残高は国内総生産(GDP)の2倍を超える。足元では来年4月からの消費再増税や軽減税率の問題が話題になっているが、「もっと根幹の部分。日本の財政が今、厳しい状況にあるということを一般国民にもっと知らせるべきだ」と語る。
                
  十河氏の視点も変わった。「ファッションは財政的に豊かな国に栄えていく」。そんな相関関係に気付いた。「ファッションはぜいたく品。国に余裕がないと需要が減っていく」。実際、フランスやイタリアなどの欧州市場では自国民の需要は弱まり、中国はじめ新興国からのインバウンド消費に支えられているという。

つけを回さない

  昨年1月、イスラム過激派による週刊誌「シャルリー・エブド」襲撃事件直後に訪れたパリでは、厳戒態勢の中、世界で数百人の顧客のためのオートクチュール(高級仕立服)のショーを取材。機中で読んだピケティの「21世紀の資本」で指摘されていたトップ1%の高所得者への富の集中を痛感した。

  十河氏は、20年前にティーン向け雑誌の編集長に就いた。当時、ファッション誌の編集長のほとんどは男性だった。結婚後は家庭に入ることが当たり前の時代に、男性にこうなってもらいたいという女性の理想像を提案していた。欧米のファッションショーの最前列に居並ぶ女性編集長を見て、「なぜ日本は男性ばかりなのか」と違和感を抱いたこともある。

  十河氏が公聴会で取り上げるテーマは「子育て支援」だ。結婚後も仕事一筋で、子どもはいない。今は子どもを産み、職場復帰をする女性スタッフが増えた。十河氏は「働く女性にとって子育ては切実な問題だ。国の支援の在り方を財政面から具体的に話したい」と語る。

  そして今、「次世代につけを回さない義務」を感じている。「子どもがいない分、未来の子どものことが気になる。今いる大人たちが手だてをせずに次の若者たちに残していくのは罪深いことではないか」。

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